昨今の日本は高齢者の割合が高い高齢化社会となっています。
高齢化社会を支える存在として訪問介護は欠かせません。
そんな訪問介護の道に進むには、どのような準備が必要なのでしょうか。
今回は訪問介護員になるために資格は必要なのか、おすすめの資格、取得することのメリットなどを解説していきます。
訪問介護とは、主に要介護の認定を受けている利用者がしっかりと日常生活を送れるようサポートするお仕事です。
ただしすべてのことをサポートするわけではありません。
利用者が自身でできることに関しては自分で行ってもらい、日常生活においてできないことを援助していきます。
訪問介護員(ホームヘルパー)の業務は、ケアマネージャーのプランに基づき各利用者のお宅に訪問して介助サービスを行います。
サービス内容は食事や入浴、排泄などの身体介護から、掃除や洗濯といった生活援助と多岐にわたります。
通院の際に必要な移送では、乗車や降車の介助サービス(通院等乗降介助)も行います。
また、利用者のメンタル面をサポートするために、話し相手になることも多いです。
ただし、ペットの世話や窓のガラス磨き正月の準備といったものや、利用者の家族のための家事などのサポートはできません。
訪問介護員は基本的に一人で利用者のお宅に訪問して介護サービスを行います。
ほぼ全ての介護サービスを一人で行うので大変な部分も多く責任も重大ですが、利用者さんと深くかかわることができるので、やりがいの大きい仕事です。
また、訪問介護員は決められたケアプラン以外の介護サービスはできません。
しかし、利用者と親しくなるとプランやサービス以外のことを頼まれるケースもあるでしょう。
そんなときに、相手に不快感を与えないように拒否できるスキルも求められます。
このように訪問介護員は、利用者の生活を支えるためにさまざまな介護業務を担いますが、知識や技術だけでなくコミニュケーションのスキルも重要です。
訪問介護の仕事内容についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
訪問介護ってどんな仕事なの?具体的な業務内容や1日のスケジュールを紹介!
訪問介護のお仕事をするには、厚生労働省による介護研修に参加し認定を受ける必要があります。
その理由として、基本的に訪問介護の仕事は一人で利用者のお宅に訪問して業務を行うことが挙げられます。
緊急時やいざという時にも適切に判断、対応する能力が求められるため、資格を取得して高いレベルの専門知識を得ることが必要なのです。
ただし、訪問介護ではなく施設などで働くヘルパーに関しては、特定の資格がなくても従事できます。
訪問介護の仕事をするには、法令で定められている介護資格を取得しなければなりません。
ここでは、訪問介護員になるための3つの資格をご紹介します。
介護職員初任者研修は、介護業務を行うための基本的な知識や技術を持っていることを保証する資格です。
訪問介護員のみならず、介護職につくための入門的な資格として位置づけられています。
また、最近は家族の介護のために受講する方が増えています。
資格を取得することで、身体介護と生活援助の介助サービスを行うことができます。
介護施設やデイサービスなどで、パートや正社員として働くことが可能です。
また、介護業界に進むためのスタート的な資格でもあるので、取得の推奨がされています。
介護職員初任者研修の資格を得るには、各都道府県または知事が指定した企業や教育機関で受講する必要があります。
受講条件は特にありませんが、厚生労働省では「訪問介護事業に従事しようとするもの若しくは在宅・施設を問わず介護の業務に従事しようとする者とする。」となっています。
受講内容は全10科目のカリキュラムを合計130時間受けたのち、試験に合格することで資格を得られます。
カリキュラムの受講するルートとして、「通学」と「通信と通学」の2通りがあります。
通信の場合は学習時間が40.5時間までと定められているため、通信のみでの資格取得は難しいです。
そのため、通信と通学を組み合わせてカリキュラムを受講する流れになります。
130時間のカリキュラムを終えた後は1時間程度の筆記試験を受けます。
合格ラインは70点以上で、基礎的な介護知識が出題されることもあり合格率は比較的高いとされています。
介護職員初任者研修の取得費用は機関によりさまざまで、約4万〜12万円と幅が広いです。
また、資格取得のための助成制度を行っている期間もあるので、費用を抑えつつ取得も可能でしょう。
助成制度は受講先の機関であったり自治体や職業訓練施設などで行っています。
制度を受けられる条件はそれぞれ異なるので、予めチェックしておきましょう。
資格取得の期間は短くて2週間、長いと4ヶ月ほど必要。
そのため、ご自身の経済状況と時間に見合った機関で資格取得を目指すことになります。
介護職員初任者研修についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護職員初任者研修とは?無料で受ける方法や働きながら取得する方法について徹底解説!
介護福祉実務者研修は、高度で専門的な介護知識や技術の資格認定を得られます。
介護職員初任者研修の上位資格で、高いレベルの介護知識や技術を身につけることが可能です。
また、介護福祉士の資格を受けるための実務経験ルートとしても必要な資格です。
介護福祉実務者研修を取得することで、より質の高い身体介護と生活援助の介護サービスが行なえます。
更に介護に関する知識や技術が高いとみなされるので、介護職への就職や転職では有利に働きます。
給与も介護職員初任者研修よりアップしやすいです。
介護資格の最難関である介護福祉士の資格取得に必須なので、キャリアアップの土台にもなってくれます。
また、これまで医師や看護師以外には認められていなかった痰吸引と経管栄養の基礎知識を学べるので、介護の幅を広げる資格でもあります。
介護福祉実務者研修は全国の機関で実施されており、通信と通学を組み合わせて受講するケースも多いです。
介護福祉実務者研修の資格を得るには、合計450時間のカリキュラムを受講したのち試験に合格する必要があります。
カリキュラムは全20科目ありますが、修了後の試験は特に義務化していません。
しかし、機関によって試験を実施していたり課題提出を求められることもあります。
資格の取得条件は特になく誰でも受講できますが、介護職員初任者研修の保有者は130時間分のカリキュラムを免除されます。
介護福祉実務者研修の資格を得るための費用は機関によって異なり、取得している資格によって変化します。
一般的に3万円以上かかるとされているので、各機関の料金を比較チェックしておきましょう。
資格を取得する期間は6ヶ月程度とされています。
ただし、介護職員初任者研修の資格を取得している場合、最短2ヶ月程度で取得が可能です。
介護福祉士実務者研修についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護福祉士実務者研修とは?取得方法や難易度、期間について徹底解説!
介護福祉士は、介護の知識や技術に関して高い専門性があることを保証してくれる資格。
一般的な介助サービスをしながら、利用者に寄り添った適切な介護を提供する役割を担っています。
介護系資格の中では唯一の国家資格で、介護系キャリアパスの到達点でもあります。
ただし、国家資格ということもあり難易度は高く、平均合格率は50〜60%ほどと言われています。
近年は徐々に合格率が上がっており70%前後が平均と言われていますが、最難関の資格なので長期的に準備をしてしっかりと対策をしていくことが重要です。
介護福祉士の資格には、実務経験と長時間のカリキュラムの受講が定められていることもあり、資格保有者は介護業界を担う重要な人材として位置づけられています。
介護福祉士の資格を取得することで、訪問介護員をはじめ特別養護老人ホームといった施設での介護業務が可能となります。
身体障害者施設での業務も行えるので、介護全般の就職や転職に有利です。
また、専門的な介護知識や技術の高いスペシャリストとみなされるので、現場ではリーダーシップを求められることも多いです。
介護福祉士は他の資格同様に身体介護や生活援助の介助サービスを提供できますが、それとは別にヘルパーやスタッフの指示や指導を行うこともあります。
介護福祉士による指示や指導によって質の高い介助サービスが期待できるので、施設の評価アップにもつながるでしょう。
更に介護福祉士は管理職や責任者としての業務を任されるケースもあります。
お仕事の幅が広がるので、モチベーションの向上にもなるでしょう。
介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士へのキャリアアップにもつながるので、介護業界で上を目指す方にとっても介護福祉士の資格はメリットになります。
その他、介護福祉士は給与などの待遇面においても優遇されるので、安定した雇用と収入にも繋がるでしょう。
介護福祉士の資格を得るには4つのルートがあります。
ルートによっては試験免除があり、筆記試験の他に実技試験が必要な場合もあります。
筆記試験は13科目の中から出題され、合格ラインは125点満点中75点程度とされます。
また、それぞれのルートは法改正によって変更になる可能性もあるので、受験年度の注意事項はしっかりチェックしておきましょう。
「養成施設ルート」
介護福祉の養成施設を卒業することで資格を得られます。
介護福祉の養成施設とは、四年制大学や短大、専門学校といった厚生労働大臣指定の学校のことで、高校卒業を入学資格としています。
また、福祉系大学や社会福祉養成施設、保育士養成施設を卒業したのち、1年以上の介護福祉士養成施設を卒業して試験を受ける方法もあります。
「実務経験ルート」
介護の実務を3年以上経験したのち、介護福祉士実務者研修の資格を取得することで介護福祉士の受験ができます。厳密に言うと従業期間1,095日以上、かつ従事日時540日以上が必要です。
有給休暇や出張、研修などで介護業務に従事しなかった日数は含まれず、相談などの業務によっては介護業務経験として該当しない場合もあるので注意しましょう。
実務経験において雇用形態の指定はないので、パートやアルバイトも含まれます。
「福祉系高校ルート」
福祉系の高校で指定のカリキュラムを修了したのち受験資格を得られます。
この方法は入学年度によってカリキュラムの内容が異なり、筆記試験のみであったり実技試験が必要な場合もあります。
また、介護技術講習の受講や9ヶ月以上の実務経験を求められるケースもあります。
「経済連携協定(EPA)ルート」
日本国籍の保有者には関係ありませんが、主にフィリピン人やベトナム人など、日本で研修を受けつつ終了する海外からの介護従事者に対しての資格取得方法です。
介護福祉士候補者として来日し、3年以上の実務経験を経たのちに受験資格を得られます。
また紹介したルート以外にも通信講座や通学講座を設けている期間があります。
実務経験が別に必要になってきますが、少しでも効率よく勉強するためにも取り入れてみると良いのではないでしょうか。
介護福祉士の受講手数料は、令和5年1月29日に開催される第35回においては8,380円です。
試験は年に1回開催され、筆記試験と実技試験ともに1日で終了します。
取得にかかる期間は保持している資格や、取得のルートによってさまざまです。
実務経験が必要な場合もあるので、介護福祉士の取得には3年ほど期間が必要な場合が多いです。
介護福祉士についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護福祉士ってどんな仕事?なる方法は?試験はどのくらい難しい?
ヘルパー2級・1級、介護職員基礎研修は、2013年の介護保険法施行規則改正によって廃止されています。
これによりヘルパー2級は介護職員初任者研修、ヘルパー1級は介護福祉士実務者研修へと名称を変更。
受講のためのカリキュラムや時間数なども変更されています。
これらの資格が廃止になった背景には、高齢化社会による介護職の必要性が高まってきたことが挙げられます。
一般的に人材不足として知られる介護業界ですが、経験有無を問わずむやみに人員を増やすだけでは介助サービスの質の低下に繋がります。
そこで国は、より優秀な人材を育成するために介護資格をわかりやすくし、キャリアパスを明確化したのです。
以前は介護系のキャリアアップを図るには多くの資格や研修をこなす必要があり、上位資格の資格要件が複雑でした。
規則改正によって介護系の資格が一本化され、キャリアアップがしやすくなりました。
前述の通りヘルパー1級と2級は該当の名称へと変更しているだけなので、すでに保有している方は同等の資格を取得しているとみなされます。
そのため、介護職員初任者研修にあたるヘルパー2級の資格があれば、介護福祉士実務者研修を取得する際130時間分のカリキュラムが免除されます。
資格の名称が変わったからと言って、取得し直す必要もないです。
ただし、同等の資格を取得しているとみなしているだけなので、履歴書にはヘルパー1級/ヘルパー2級と正式名称で記載をしましょう。
また、生活援助従事者研修は2018年にできた資格で、利用者の生活援助を行う業務に役立ちます。
反面、生活援助従事者研修は食事や入浴、排泄の介護である身体介護ができないため、訪問介護員になるための資格としては不十分です。
訪問介護の道に進むのであれば、介護職員初任者研修と介護福祉士実務者研修、介護福祉士の3つの資格取得を目指しましょう。
訪問介護員になるための資格は、以前と比べると明確化されており、スムーズなキャリアアップを図れるようになりました。
一般的な施設での介護とは違って利用者に寄り添った介護ができ、あらゆるサービスを一人でこなす分、介護スキルの上昇にもつながるので、ぜひ訪問介護の道を目指してみてはいかかでしょうか。