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個別機能訓練加算の機能訓練メニューとは?計画書の作成ポイントも合わせてご紹介!

2025-01-17

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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個別機能訓練加算は高齢者の自立支援と生活機能の向上をめざすための加算です。加算を取得するためには、利用者の心身の状態や生活環境に合わせた「個別機能訓練計画書」を作成し、計画に基づいて訓練を実施する必要があります。

しかし実際には、「どのような訓練メニューを用意すればいいのか」「計画書にどんな項目を盛り込めばよいのか」など、頭を悩ませる事業所も少なくありません。

そこで本記事では、個別機能訓練加算に必要となる具体的な機能訓練メニューの例や、個別機能訓練計画書を作成する際のポイントを詳しく解説します。

ぜひ、施設のサービス向上や職員間の共有の参考にしてください。

個別機能訓練加算の機能訓練メニューとは

個別機能訓練加算は、利用者が自立した生活を送るために、身体能力や日常生活動作(ADL)の維持・向上、既往症や疾病の悪化予防を図ることを目的としています。具体的には、下記の3つの観点からプログラムを組むことが多いです。

  1. 身体機能に直接的に働きかけるプログラム
  2. 疾患・疾病の維持と予防をおこなうプログラム
  3. 日常生活を想定した具体的な訓練プログラム

以下では、この3つのプログラムの考え方や具体的な内容をそれぞれ紹介します。

身体機能に直接的に働きかけるプログラムとは

身体機能に直接的に働きかけるプログラムは、筋力や柔軟性、バランス能力、持久力など、加齢や疾患によって低下している身体機能を回復・維持させることを狙いとしています。

利用者の体力、運動習慣、生活背景に合わせて安全に無理のない訓練内容を選ぶことが重要です。たとえば、以下のようなメニューが考えられます。

  1. 筋力トレーニング
    セラバンドやダンベルを用いた上肢・下肢の筋力強化
    スクワットや立ち上がり練習による下肢筋力の向上
    背筋や腹筋を鍛えるコアトレーニング

  2. 柔軟性向上のためのストレッチ
    関節可動域を広げるストレッチ(股関節・肩関節など)
    固くなりやすい筋肉(太もも裏、ふくらはぎなど)の重点的ケア

  3. バランス能力向上トレーニング
    片足立ちや段差昇降練習などによる平衡感覚の強化
    バランスボードやクッションなど不安定な足場での姿勢維持練習

  4. 持久力・歩行能力アップトレーニング
    トレッドミルやエアロバイクなどを活用した有酸素運動
    実際の生活環境に近い場所や屋外での歩行練習
    歩行補助器具(手すりや歩行器など)を活用した安全な歩行訓練

身体回復の訓練は、利用者の身体能力を客観的に評価したうえでプログラムを組み、定期的に見直していくことが大切です。

特に、高齢者の場合は転倒リスクを伴うため、医療職や柔道整復師、理学療法士などが指導・確認しながらおこなうようにしましょう。

また、利用者本人の希望や目標も丁寧にヒアリングし、目標設定と訓練内容がマッチしているか確認し続けることで、モチベーションの維持や訓練効果が期待できます。

疾患・疾病の維持と予防をおこなうプログラムとは

高齢者は、脳梗塞や心不全、呼吸器疾患、糖尿病などの慢性疾患を抱えている場合も多く、症状の悪化を防ぐことも重要です。そのため、慢性疾患の治療方針や利用者の体調に合わせて、医療・看護スタッフとの連携を図りながら、疾患・疾病の維持と予防にフォーカスしたプログラムを組むことが求められます。具体的には、以下のような項目が挙げられます。

  1. 心肺機能の維持・向上
    呼吸法や深呼吸などを取り入れ、酸素摂取効率を高める呼吸訓練
    状態に合わせた有酸素運動(軽いウォーキングやエアロバイクなど)
    バイタルサイン(脈拍・血圧・呼吸数など)の把握と安全管理

  2. 血糖値コントロール
    生活リズムや栄養管理のサポート(管理栄養士や看護師との情報共有)
    適度な運動を取り入れてインスリン抵抗性を下げる
    血糖値の定期的な測定や服薬管理

  3. 認知機能の維持・予防
    脳トレや回想法など、認知機能に働きかけるメニュー
    会話を通じてコミュニケーション能力を維持する工夫
    レクリエーションを活用した社会交流の促進

  4. 疼痛緩和・再発予防
    関節炎や腰痛など、痛みを抱えている利用者へのリハビリテーション
    温熱療法や適度な筋力トレーニングで再発防止を図る
    医師や理学療法士と連携し、痛みの程度に合わせて調整

上記のように、身体機能の向上だけでなく、利用者が抱える疾患の特性や病状をしっかり考慮し、適切な予防策を講じることが大切です。

また、利用者の体調変化を見逃さず、定期的にフィードバックをおこなうことも欠かせません。

日常生活を想定した具体的な訓練プログラムとは

生活を送る上で欠かせない動作(食事、整容、更衣、排尿、排便、入浴)といった基本的な行動は、日常生活動作(ADL)と呼ばれています。これらは誰もが当たり前のようにおこなっている動作ですが、健康上の理由や身体の状態によって困難に感じる方も少なくありません。

日常生活動作に支障をきたしている方に対し、動作の訓練をおこなうプログラムを組みます。具体的には、以下のような項目が挙げられます。

  1. 食事動作訓練
    スプーンや箸の使用、食べ物を口に運ぶ動作など、食事を自分でおこなえるようにする訓練
  2. 整容動作訓練
    顔を洗う、歯を磨く、髪を整えるなど、身だしなみを整える動作を自立しておこなうための訓練
  3. 更衣動作訓練
    服を着たり脱いだりする動作を支援し、自分で衣服の着脱ができるようにする訓練
  4. 排便動作訓練
    トイレへの移動や使用、姿勢の維持など、排便に関連する動作を支援する訓練
  5. 入浴動作訓練
    浴槽への出入り、体を洗う動作など、安全かつ自立して入浴できるようにする訓練
  6. 排尿動作訓練
    トイレでの姿勢保持や動作を支援し、自分で排尿がおこなえるようにする訓練
  7. 移乗動作訓練
    ベッドや車いすなどへの移動をスムーズにおこなうための訓練
  8. 家事動作訓練
    調理、掃除、洗濯などの家事をおこなえるようにし、日常生活の自立を目指す訓練

個別機能訓練計画書の書き方

個別機能訓練加算を取得するには、厚生労働省が示す基準に基づいて、「個別機能訓練計画書」を作成する必要があります。

計画書には、利用者ごとの状況に合わせた具体的な目標やプログラム内容を記載し、実行した結果を管理・評価する流れを明確化することが求められます。

以下では、計画書を作成するにあたって必須とされる項目を中心に紹介します。

計画書で必須とされている項目

長期目標

長期目標は、おおよそ3〜6ヵ月、あるいは1年先を見据えた達成目標を設定する項目です。利用者本人や家族が描く生活上の希望や、医療・介護の専門スタッフが評価した身体状況を踏まえ、「最終的にどのような状態をめざすのか」をわかりやすく示します。

例:「安全に自宅で1人で入浴できるようになる」
例:「家族や友人と外食を楽しめるように、歩行距離を増やす」

長期目標が明確になることで、スタッフ間で共有すべき支援の方向性が一致し、利用者のモチベーションも高めやすくなります。

短期目標

長期目標を達成するための段階的なステップとして、1ヵ月程度の目安となる「短期目標」を設定します。短期目標は、より具体的かつ達成可能な範囲で設定し、効果測定がしやすい指標を盛り込むことが大切です。

例:「1ヵ月後までに、歩行器を使って10分間休まずに歩けるようにする」
例:「転倒せずに室内を自由に移動できるようになる」

短期目標の達成度合いを都度評価し、必要の場合、プログラムの修正やスタッフ間の連携を再調整します。

プログラム内容

長期・短期目標に基づき、どのような訓練を実施するかを記載します。前述の「身体機能に直接働きかけるプログラム」や「疾患・疾病の維持と予防をおこなうプログラム」を利用者のニーズに合わせて組み合わせ、手順や注意点を明確化します。

例:「ダンベル(1kg)を用いた上肢筋力トレーニングを週2回実施」
例:「呼吸法を取り入れた有酸素運動を10分間、週1回おこなう」

具体的な方法と回数、タイミングを記載することで、担当者全員が迷わず統一的な指導を実施しやすくなります。

実施時間

実施時間はどの程度の時間、プログラムを実施するかを記載します。運動負荷や利用者の体力レベルによって時間は異なるため、必要に応じて医療スタッフの助言を仰ぎながら設定します。

例:「1回15分×週2回、歩行練習をおこなう」
例:「ストレッチは各10秒キープを3セット、計10分程度で実施」

高齢者や体力が落ちている方には、短い時間から始めるなど、身体的負担や安全面に配慮した時間設定が必要です。

担当者名

個別機能訓練は、理学療法士・作業療法士・柔道整復師・看護師などの医療職が中心となる場合、介護職が日常的にサポートする場面もあります。担当者を明確にすることで、責任の所在や支援の連携がとりやすくなります。

例:「リハビリ担当:○○理学療法士、サポート:介護職△△」

留意点

利用者の身体状況や疾患、服薬状況、認知症の有無など、訓練をおこなう上で注意すべきポイントを記載します。利用者の持病やアレルギー、精神状態なども含め、関連する情報を共有しておくことで事故やトラブルを防止する効果があります。

例:「高血圧のため、運動前後の血圧測定を実施し、値によっては休止または軽減する」
例:「認知症があるため、混乱を招かないよう声かけと手順説明をこまめにおこなう」

頻度

週に何回、もしくは月に何回実施するかを明確にします。利用者の身体状況や曜日の利用パターンに合わせて設定するとともに、スタッフ間で混乱が起きないようにスケジュールを共有することがポイントです。

例:「週2回(火・金)に実施」
例:「月4回までを上限とする」

個別機能訓練計画書作成のポイント

個別機能訓練計画書は、単なる「書類作り」で終わらせるのではなく、実際のサービス改善と利用者満足度の向上につなげるツールとして活用しましょう。以下では、作成時に意識しておきたいポイントを紹介します。

チーム内での共有とフィードバック

計画書は、リハビリ担当の理学療法士や作業療法士だけが作って終わりではなく、介護職、看護師、管理栄養士、ケアマネジャー、生活相談員などが連携しながら活用することが大切です。利用者を24時間支援するためには、複数の専門職がそれぞれの視点で情報を共有し、状況に応じて訓練内容を変更する必要があります。

  • 共通カルテや情報共有ツールを活用し、進捗状況や利用者の変化をリアルタイムで記録する
  • 定期的な会議を開催し、利用者の達成状況や課題をディスカッションし、修正案を考える

こうした情報共有とフィードバックの体制を整えることで、質の高い介護を提供できるようになります。

定期的な見直し

利用者の身体機能や生活環境は変化していきます。また、高齢者特有の体調の変動やイベント(入院や急性期疾患の発症など)により、計画どおりに進まないケースも出てきます。

そのため、定期的に個別機能訓練計画書を見直し、目標やプログラム内容を再設定することが欠かせません。

  • 評価期間の設定:1〜3ヵ月を目安に評価し、必要に応じて目標やプログラムを修正
  • 現場の意見を聞く:利用者本人や家族、介護職員の意見を取り入れることで、より現実的な計画に落とし込む

柔軟に計画を修正しながら進めることで、利用者の身体能力向上や生活の質の向上が期待できるでしょう。

まとめ

個別機能訓練加算を活用することで、利用者にとっては「自分がやりたいことが少しでもできるようになる」と生きがいづくりにつながります。事業所としても、質の高い介護サービスを提供することが可能です。

ぜひ本記事を参考に、利用者の心身状態や個性を尊重した個別機能訓練メニューを取り入れ、計画書の作成・運用を円滑に進めてみてください。利用者と事業所、両方にとってメリットを生み出す取り組みこそが、高齢社会における介護サービスの要となります。

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