日本では、高齢化が進む中で介護を必要とする方は年々増加し、その中でも要介護3以上の中重度者が占める割合が30%と高まっています。その中で2018年度の介護報酬改定で中重度者ケア体制加算が新設されました。
介護事業所には中重度者に対応したサービスへの転換を求めつつ、事業所の役割拡大と質の向上、介護人材の不足などを後押しする狙いもあります。
本記事では中重度者ケア体制加算の算定要件と単位数、また加算を取得する際の留意点について解説しますのでぜひ参考にしてください。
目次
単位数 | 45単位/日 |
算定要件 |
|
*¹中重度者ケア体制加算を算定するには、看護師の規程人数を満たしているかどうかを計算する必要があります。以下を満たさないと返還の可能性もあるので注意しましょう。
以下ではその計算式についてご紹介します。
例えば、定員が20人で提供時間が7時間、常勤の勤務時間が週で40時間の通所介護だとします。営業日が月曜日から土曜日だとすると、実際の稼働状況は以下の通りです。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 計 | |
利用者数 | 18人 | 17人 | 19人 | 20人 | 15人 | 16人 | 105人 |
必要時間数 | 11.2 時間 | 9.8 時間 | 12.6 時間 | 14 時間 | 7 時間 | 8.4 時間 | 63 時間 |
職員A | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 0 時間 | 40 時間 |
職員B | 0 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 40 時間 |
職員C | 7 時間 | 7 時間 | 7 時間 | 7 時間 | 7 時間 | 0 時間 | 35 時間 |
職員D | 8 時間 | 8 時間 | 0 時間 | 0 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 32 時間 |
計 | 23 時間 | 31 時間 | 23 時間 | 23 時間 | 31 時間 | 16 時間 | 147 時間 |
加配時間数 | 11.8 時間 | 21.2 時間 | 10.4 時間 | 9 時間 | 24 時間 | 7.6 時間 | 84 時間 |
以上より、上記の体制で実施した場合には、週全体で84時間の加配時間となり、84時間/40時間=2.1となることから、常勤換算方法で2以上確保したことになる。
中重度者ケア体制加算を算定する際には、以下の4種類の書類を提出します。また、加算を取り下げる場合も同様の書類の提出が必要です。
新年度から算定したい場合、毎年3月15日までに届け出を提出します。年度の途中から算定する際は、算定したい月の前月15日までに提出しましょう。
なお、前年度も中重度者ケア体制加算を算定しており、新年度に引き続き算定するための要件を満たしている場合は、新たな届出の提出は不要です。
「中重度者ケア体制加算に関する届出書」には、事業所名や事業所番号などの基本情報を書き入れるとともに、算定要件を満たしているかのチェック項目欄にチェックを入れます。中重度の要介護者の割合については、実績の記入が必要です。各自治体の様式に従い、記入しましょう。
サービスの提供時間を通じて1名以上配置されていれば、加算の算定対象となる。
時間帯を通じて看護職員を1名以上確保していることが必要である。
提供時間帯を通じて配置する看護職員は、他の職務との兼務は認められず、加算の要件である加配をおこなう常勤換算員数を算出する際の勤務時間数に含めることはできない。なお、加算の算定要件となる看護職員とは別に看護職員を配置している場合は、当該看護職員の勤務時間数は常勤換算員数を算出する際の勤務時間数に含めることができる。
前3ヵ月の実績により届出をおこなう場合においては可能である。
なお、届出をおこなった月以降においても、直近3ヵ月間の利用者割合については、毎月継続的に所定の割合を維持しなければならない。
中重度者ケア体制加算は、要介護3以上の比較的介護度が高い利用者を受け入れることができる事業所に対して、その実績を評価して算定される加算です。
令和6年度の介護報酬改定では、介護と医療の連携がますます着目され、要介護3以上の方は医療的ケアを必要とする方も多いでしょう。その中で重度のケアを必要とする方でも、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう受け入れ体制を整えることは、事業所の運営のみならず、地域にとっても大きな一つの社会資源となりうるでしょう。