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介護施設での機能回復訓練とは?指導員とともにできる訓練と目的について

2024-11-15

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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機能回復訓練は、年齢や病気によって低下した身体機能を回復し、日常生活の自立を支えるために重要な訓練です。この機能回復訓練は、通所介護や介護施設などで、専門の機能訓練指導員が個々の状態に合わせて訓練をおこなうだけでなく、レクリエーションを通じた訓練もあり、楽しみながら機能を維持・改善できます。

今回は、そんな機能回復訓練の内容や目的だけでなく、実際に機能回復訓練をおこなう際のスケジュールまで紹介します。ぜひ、最後までお読みください。

機能回復訓練は自立度を高めるための訓練をおこなう

機能回復訓練とは、加齢や病気などによって低下した身体機能の回復や、残存機能の維持・向上の訓練をおこない、スムーズに日常生活を送れることを目的におこなう訓練のことです。

機能回復訓練の内容

ここでは実際に機能回復訓練の内容を紹介します。機能回復訓練は主に、機能訓練指導員がおこなう場合と、機能訓練指導員以外がおこなう場合にわかれます。

機能訓練指導員は歩行練習などの機能回復訓練をおこなう

機能訓練指導員は、介護保険法で定められた職種で、各事業所や介護施設において、利用者の身体機能に合わせた機能訓練をおこなう役割があり、以下のような要件が決められています。

機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者とされたが、この「訓練を行う能力を有する者」とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する者とする。

引用:厚生労働省「定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」

機能訓練指導員は、各利用者に対して、歩行練習・筋力トレーニング・バランストレーニング・日常生活動作訓練などをおこないます。

機能訓練指導員以外でもレクリエーションなどを通して機能回復訓練はできる

機能訓練指導員以外でも、機能回復訓練は可能です。機能訓練指導員であれば専門的な知識を持っているため、各利用者個人への訓練が可能です。しかし、機能訓練指導員以外でも以下のように、レクリエーションを通じて機能訓練がおこなえると定義されています。

利用者の日常生活やレクリエーション、行事を通じて行う機能訓練については、当該事業所の生活相談員又は介護職員が兼務して行っても差し支えない。

引用:厚生労働省「定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」

つまり、機能回復訓練は専門職だけでなく、手工芸やレクリエーションなどを通しておこなうなど、専門職以外でも、さまざまな方向から利用者への訓練が可能です。

機能回復訓練をうけるには要介護認定が必要

機能回復訓練は、介護保険によるサービスになるため、要介護認定で要支援1以上と認定される必要があります。なお、機能訓練指導員の規定のある介護サービスは以下の通りです。

  • 通所介護(デイサービス。地域密着型含む)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ。介護予防含む)
  • 認知症対応型通所介護(認知症デイサービス。介護予防含む)
  • 特定施設入居者生活介護(介護予防及び地域密着型含む)
  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム。地域密着型含む)

これらの介護サービスを利用した際は、事業所によって機能訓練指導員による機能回復訓練をうけられます。

機能回復訓練の目的は利用者によって異なる

機能回復訓練の目的は、以下のように利用者によって、それぞれ異なります。

身体機能の向上が目的

家の中を歩けるようになる、お風呂に1人で入るなどのように、少しでも自立した生活を送るための身体機能の向上を目的に訓練をおこないます。具体的には、歩行訓練や筋力増強訓練、関節可動域訓練から、浴槽のまたぎ動作など実践的な動作訓練をおこなう場合もあります。

社会参加への促進

家の中で動けるように訓練すると同時に、社会参加への促進もおこない、屋外での行動範囲を広げるように働きかけることも重要です。

社会参加の頻度が少なく、高齢者が閉じこもりの傾向になった結果、廃用症候群の状態になってしまいます。廃用症候群は、身体を動かさない時間が長くなることで起こる障がいの総称で、体力や意欲の低下につながり、場合によっては寝たきりになることもあります。

このような状態にならないためにも、家の中だけでなく、屋外などの社会参加も意識して生活することが重要です。

うつの防止

高齢者になると、うつ傾向な利用者も多くなります。なお、うつになる大きな理由は以下のように考えられています。

  • 重大なライフイベント:重要な他者の喪失や死別、急性の身体疾患
  • 慢性的なストレス:健康の減退、認知機能の低下、行動力の低下、社会的孤立

これらの内容から、65歳以上の高齢者の10%程度には何らかのうつ病性障がいが認められているともいわれています。つまり、利用者の閉じこもりや社会的孤立を減らして、うつの防止をおこなうことも機能回復訓練として重要な内容です。

栄養状態の改善

動作訓練などで身体を動かす機会が多くなれば、食事量が増えて栄養状態の改善につながります。厚生労働省が発表した「令和4年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、65歳以上の高齢者で低栄養傾向の割合は、男性で12.9%、女性で22.0%と発表していることから、高齢者の栄養状態の重要性が理解できるはずです。

機能回復訓練は、楽しく食べて食事量を増やすだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラル、カルシウム、食物繊維などの栄養素をバランスよく摂取できるように指導も合わせておこなうことで、栄養状態の改善を目指します。

口腔機能の向上

栄養状態だけでなく、口腔機能を向上させることも重要で、近年では口腔機能と健康が大きく関係していることがわかっています。

口腔機能が低下すると、食欲も低下して栄養不足やバランスが悪くなり、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症や重症化のリスクが高くなるだけでなく、寝たきりや認知機能低下のリスクが増加するともいわれています。そのため、機能回復訓練は、筋力などだけの身体機能だけでなく口腔機能にも注目することが重要です。

認知症の予防

認知症になると、日常生活や社会参加などに大きな影響を与えるため、普段からバランスの良い食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりすることが重要です。特に、有酸素運動や筋力トレーニングをおこなうことは、認知症の予防に効果的といわれています。

機能回復訓練の効果は定期的に評価すると継続しやすい

機能回復訓練をただ単に繰り返しおこなうだけでは、目的や目標が見つからず、継続することは困難です。そのため、3ヵ月に1回程度の頻度で定期的に評価することで、訓練を継続しやすくなります。評価する項目は、事業所によって異なりますが、以下のような内容があります。

項目種目
上半身の筋力握力
下半身の筋力膝を伸ばす筋力の強さを測定
柔軟性長座位体前屈
バランス片足立ち時間の測定
移動能力5m・10m最大歩行

その他にも、 体重や体脂肪率・筋肉率などの1ヵ月ごとの経過を記録する場合もあります。

機能回復訓練とリハビリテーションの違いは医師の指示の有無

機能回復訓練とリハビリの大きな違いは、医師の指示に基づいて訓練をおこなうかどうかになり、介護保険におけるリハビリテーションは以下だけになります。

  • 訪問リハビリテーション
  • 通所リハビリテーション
  • 介護老人保健施設でのリハビリテーション
  • 介護医療院でのリハビリテーション

つまり、通所介護などで、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が実施しても介護保険法においてはリハビリテーションにはならないため、医師の指示は不要です。

実際に機能回復訓練をおこなう際のスケジュール

ここでは、実際に機能回復訓練をおこなう通所介護と介護老人福祉施設のスケジュールを紹介します。まずは、通所介護のスケジュールから紹介します。

時間サービス内容
8:30~送迎開始
9:30~
  • 順番に入浴
  • 個別の機能回復訓練
12:00~
  • 嚥下体操
  • 昼食開始
  • 食後の口腔ケア
13:00~
  • 個別の機能回復訓練(屋外歩行など)
14:00~レクリエーション
15:00~おやつタイム
16:00~全身体操
16:15~帰宅の送迎開始

続いて、介護老人福祉施設のスケジュールを紹介します。

時間サービス内容
7:00~起床・着替え
8:00~
  • 朝食
  • 服薬
  • 口腔ケア
9:00~
  • 入浴(週2回程度)
  • 入浴がない日は自由
12:00~
  • 昼食
  • 服薬
  • 口腔ケア
13:00~レクリエーション
15:00~
  • 機能回復訓練
  • おやつタイム
18:00~
  • 夕食
  • 服薬
  • 口腔ケア
21:00~就寝

今回紹介したスケジュールは1つの例になるため、詳細なスケジュールは各事業所によって異なるため、実際に介護サービスを利用する際は、事前に各事業所へ確認しましょう。

機能回復訓練を積極的に利用して、日常生活動作の維持・向上に努めよう

機能回復訓練は、要介護認定を受けた利用者に対して、加齢や病気で低下した身体機能を回復・維持し、自立した生活を支える重要な訓練です。実際の訓練内容は、専門の機能訓練指導員による筋力トレーニングや歩行訓練などだけでなく、レクリエーションを通じた訓練をおこなう場合もあります。

機能回復訓練は、身体機能の向上だけでなく、社会参加促進やうつ予防、栄養改善にも効果的で、通所介護や介護老人福祉施設などでおこなわれています。機能回復訓練を継続的に受けることで、日常生活動作の維持・向上を図ることができるので、今回の内容をきっかけに必要性を感じた場合は、一度サービスを利用してみましょう。

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