日本では65歳以上の高齢者のうち、3分の1が認知症を患っていると言われています。認知症の方を介護するご家族は、精神的な疲れ、身体的な疲れ、感情的なストレスも重なって大きな負担となります。
そこで、介護負担の軽減のためにも認知症対応型通所介護サービスの利用が役に立ちます。今回の記事では、認知症対応型通所介護の概要やサービス内容について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。
認知症対応型通所介護とは、認知症の高齢者に対して、必要な日常生活上の世話や機能訓練などを提供する通所型の介護サービスです。小規模な通所施設において認知症の方へのケアを提供するため、より利用者に合った専門的なケアやサービスがおこなわれます。
施設で介護サービスを提供することで、自宅にこもりきりになる高齢者の社会的孤立感の解消や心身の機能維持、在宅での介護にあたる家族の身体的および精神的負担の軽減を図ることを目的としています。
認知症対応型通所介護は、医師によって認知症と診断された方で、要介護1以上の認定を受けており、認知症対応型通所介護の事業所と同じ市区町村に居住している方が対象です。
ただし、近隣自治体と連携して他地区の利用を認めている場合もあるなど、市区町村によって対象者は多少異なります。また、特別な食事形態の提供や医学的処置の対応の可否についても各事業所によって異なります。
認知症対応型通所介護は、「単独型」「併設型」「共用型」の3つに分けることができます。それぞれの特徴についてご紹介します。
単独型では、認知症対応型の通所介護施設が単独で運営されています。民家などを改装して使用されていることもあります。このような事業所では、専門のスタッフが認知症の利用者に対して個別にケアを提供します。
併設型では、一般的な通所介護施設と同じ場所に認知症対応型の施設が併設されています。病院や特別養護老人ホームなどの施設に併設されていることもあります。これによって、認知症の利用者も一般の通所介護の利用者も同じ施設内でサービスを受けることができます。しかし、特別なケアが必要な場合は認知症対応型のエリアで対応します。
共用型では、認知症患者と一般の通所介護利用者が同じ場所でサービスを受けられます。グループホームなどの食堂や居間を借りておこなわれることが多いです。施設全体が認知症対応の設計となっており、全ての利用者が同じプログラムや活動に参加することができます。
その他にも以下の表のような特徴があります。
単独型 | 併設型 | 共用型 | |
利用定員 | 1ユニット12人以下 |
| |
設備 | 食堂、機能訓練室、静養室、相談室及び事務室の他、消火設備や非常災害に際しての必要な設備を備えている。 |
認知症対応型通所介護は、介護保険法によって少人数の利用定員が定められています。また、施設で働くすべてのスタッフが認知症について深く理解しています。そのため、手厚く専門的な介護サービスを少人数で受けることができます。認知症対応型通所介護において、どのようなサービスを受けることができるか紹介します。
食事の介助や、入浴、排泄の介護など、日常生活に必要な活動を補助します。また、医療スタッフが定期的に健康チェックをおこない、健康状態を管理します。
利用者に合わせて個別のレクリエーションがおこなわれます。趣味やレクリエーション活動を通じて、社会参加の機会を提供します。楽しみながら心身機能の維持・向上させることによって、認知症の進行を遅らせる効果も期待されます。
利用者に合わせて機能回復や維持を目的としたリハビリテーションをおこないます。理学療法や作業療法、言語療法などが含まれます。一般的な身体機能のリハビリに加えて、調理や配膳、棚の修理など日常生活で必要な動作のリハビリをおこなう場合もあります。
認知症対応型通所介護では、専門的で手厚いケアをおこなえるように、厚生労働省によって職員配置が定められています。以下の表にまとめましたので、ご覧ください。
配置基準 | 資格要件 | |
生活相談員 | 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1人以上 | 社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士など |
看護職員・介護職員 | 単位ごとに専従で1人以上+サービス提供時間に応じて1人以上(看護職員は必須ではない) | 看護師、准看護師(介護職員は資格要件なし) |
介機能訓練指導員 | 1人以上 | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師又は鍼灸師など |
機能訓練員 | 1人以上 | 特になし |
管理者 | 厚生労働大臣が定める研修を修了している者で常勤1人 | 特になし |
参考:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護」
認知症対応型通所介護は他の通所サービスとの違いはどのような点にあるでしょうか。それぞれとの違いについて見ていきましょう。
一般のデイサービスと認知症対応型通所介護が大きく異なるのは、利用者定員と職員の人数配置です。認知症対応型通所介護では、利用者の定員は12人、介護職員1人につき利用者は3人までという決まりがあります。これに対して、一般的なデイサービスでは、レクリエーションや共同作業を大人数でおこなうため利用者も多くなります。
認知症の方は、大人数の環境にいることが苦痛で興奮状態になったり、ひきこもり状態になったりしてしまう場合もありますが、認知症対応型通所介護では少人数な環境で穏やかに過ごすことができます。
療養通所介護と認知症対応型通所介護サービスは、利用できる対象者に大きな違いがあります。
療養通所介護は、難病や末期がんなどで重度の介護を必要とする人を対象にした通所介護サービスです。常に看護師による観察が必要な重度の認知症の方も対象になります。しかし、認知症について専門的な知識を持っている人がいないため、常に看護師が一緒に居なければなりません。
これに対して、認知症対応型通所介護は、医師から認知症と診断されている方で要介護、要支援認定を受けている方が対象になります。人員配置も手厚く、認知症への専門的なケアをおこないながら、利用者1人ひとりに寄り添うことができます。
地域密着型介護と認知症対応型通所介護の違いは利用者の定員数にあります。地域密着型通所介護では、日中の利用定員は18人以下と定められているのに対し、認知症対応型通所介護での利用定員は12人以下とより少人数になっています。そのため、より認知症利用者に合わせたケアをおこなうことができます。
認知症対応型通所介護の利用者負担額は、所得によって1〜3割です。要介護認定の度合や、サービス利用時間、事業所の種類によって利用料金は変動しますので、事前に確認しておきましょう。また、食費やおむつ代などは別途支払わなければならない場合も多いです。
事業所の種類ごとに、1割負担の場合における1日あたりの利用者負担額を表にまとめましたのでご覧ください。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
3~4時間未満 | 543円 | 597円 | 653円 | 708円 | 762円 |
4~5時間未満 | 569円 | 626円 | 684円 | 741円 | 799円 |
5~6時間未満 | 858円 | 950円 | 1,040円 | 1,132円 | 1,225円 |
6~7時間未満 | 880円 | 974円 | 1,066円 | 1,161円 | 1,256円 |
7~8時間未満 | 994円 | 1,102円 | 1,210円 | 1,319円 | 1,427円 |
8~9時間未満 | 1,026円 | 1,137円 | 1,248円 | 1,362円 | 1,472円 |
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
3~4時間未満 | 491円 | 541円 | 589円 | 639円 | 688円 |
4~5時間未満 | 515円 | 566円 | 618円 | 669円 | 720円 |
5~6時間未満 | 771円 | 854円 | 936円 | 1,016円 | 1,099円 |
6~7時間未満 | 790円 | 876円 | 960円 | 1,042円 | 1,127円 |
7~8時間未満 | 894円 | 989円 | 1,086円 | 1,183円 | 1,278円 |
8~9時間未満 | 922円 | 1,020円 | 1,120円 | 1,221円 | 1,321円 |
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
3~4時間未満 | 267円 | 277円 | 286円 | 295円 | 305円 |
4~5時間未満 | 279円 | 290円 | 299円 | 309円 | 319円 |
5~6時間未満 | 445円 | 460円 | 477円 | 493円 | 510円 |
6~7時間未満 | 457円 | 472円 | 489円 | 506円 | 522円 |
7~8時間未満 | 523円 | 542円 | 560円 | 578円 | 598円 |
8~9時間未満 | 540円 | 559円 | 578円 | 597円 | 618円 |
今回は認知症対応型通所介護について紹介しました。認知症対応型通所介護は、認知症の特性を理解した職員により専門的で手厚いケアを受けたり、通所施設での活動を通して社会参加の機会が与えられたりする中で、利用者が安全に穏やかに過ごすことができます。
また、利用者家族のサポートや相談も充実しており、介護負担を軽減できることも魅力の1つです。認知症対応型通所介護の利用をぜひご検討ください。