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通院等乗降介助について算定要件から利用上の注意点まで徹底解説!

2024-11-07

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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訪問介護サービスのひとつである通院等乗降介助について、算定要件から利用上の注意点まで詳しく解説します。通院等乗降介助は、利用者の外出をサポートするための重要なサービスですが、サービスを提供するには正しく制度を理解し、運用することが必要です。

本記事では、通院等乗降介助の特徴や注意点、よくある質問についてわかりやすく解説します。

通院等乗降介助とは?

通院等乗降介助とは、介護保険に位置付けられた訪問介護サービスの一種です。要介護認定を受けた利用者は身体的な機能低下や疾患、認知機能のトラブルにより、外出が制限されています。医療機関への受診・治療の機会を確保することは非常に困難です。

通院等乗降介助は外出に課題を抱える利用者をサポートする介護保険サービスです。利用者が通院や外出する際に、乗車・降車の介助およびこれに伴う一連の介助をおこないます。具体的なサービス内容には、以下のようなものがあります。

  • 自宅から車両までの移動介助:玄関から車両までの歩行や車いすの介助。
  • 乗車・降車の介助:車両への乗り込みや降りる際のサポート。
  • 目的地までの移動介助:病院の受付や待合室までの誘導。

通院等乗降介助には、介護保険対象外の移送サービスがセットになっており、訪問介護員が車両を運転します。訪問介護としての移動の介助と、タクシーとしての移動を組み合わせて医療機関への移動を実現します。通院等乗降介助は利用者が安心して外出できるように支援し、医療へのアクセスを確保するために重要な役割を担うサービスです。また、通院等乗降介助は名称に「等」とついている通り、通院だけでなく、入院や退院時にも適用することができます。

通院等乗降介助と身体介護や生活援助との違いは?

介護保険制度上、訪問介護サービスは、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3種類に分かれます。これら3つは、それぞれ提供するサービス内容が異なります。

  • 身体介護:食事、入浴、排泄、着替えなど、利用者の身体に直接触れておこなう介助
  • 生活援助:掃除、洗濯、調理、買物などの家事を含めた生活上の支援
  • 通院等乗降介助:乗車・降車の介助、外出に伴う移動のサポート

身体介護はADL(日常生活動作)の低下を補い、生活援助はIADL(手段的日常生活動作)を補います。そして通院等乗降介助は外出目的に限定されますが移動を支援するサービスとして考えることができます。身体介護や生活介護が自宅内で提供される介護サービスなのに対し、通院等乗降介助は外出時の支援に特化したサービスです。

通院等乗降介助の単位数と算定要件は?

通院等乗降介助の算定要件について解説します。

単位数

通院等乗降介助の単位数は、97単位/回です。

身体介護や生活援助の場合はサービス提供時間によって単位数が異なります。しかし、通院等乗降介助は、サービス提供1回あたりの算定となります。移動時間・距離などに関わらず、単位数は97単位/回です。

この回数の数え方は、片道で1回とカウントします。往復でサービス提供した場合は2回とカウントします。また、自宅を出発して、2ヵ所の目的地を移動して自宅に戻った場合は3回とカウントします。

算定要件

通院等乗降介助を介護保険で算定するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 利用者が要介護認定を受けていること
    要介護1〜5の認定を受けた利用者が対象です。要支援認定の方は利用することができません。
  2. ケアプラン・訪問介護サービス計画書に位置付けられていること
    ケアマネジャーが作成するケアプランに通院等乗降介助が位置付けられていることが必要です。また、サービス提供責任者はケアプランに基づいて訪問介護サービス計画書を作成する必要があります。民間の介護タクシーのように無条件に利用できるわけではありません。
  3. サービスの必要性が明確であること
    利用者が1人で外出することが困難であること、家族などによる支援が困難であることも要件となります。
  4. 運転と介助が一体的に提供されること
    訪問介護員が運転と乗降介助を一体的に提供する必要があります。訪問介護サービスなので、介助をおこなわず、運転だけをおこなう場合は算定対象外です。
  5. 記録が整備されていること
    サービス提供内容や時間など必要事項を記録し、保存します。

通院等乗降介助は介護保険制度上のサービスです。ただし、輸送サービスに関しては介護保険法だけでなく、道路運送法のルールも適用されます。道路運送法上のルールも理解し、法令順守に努めることが必要です。安全運転や車両の整備なども適切にルールを守りましょう。

通院等乗降介助における注意点は?

通院等乗降介助の注意点を解説します。以下の2点に注意しましょう。

医療機関から医療機関への移送はできる?

条件付きですが、医療機関から医療機関への移送ができます。始点もしくは終点のいずれかが自宅であれば医療機関から別の医療機関への移送が可能です。もともと通院等乗降介助では医療機関間の移送が出来ませんでした。しかし、複数の医療機関に通院する利用者も多く、利用者にかかる経済的・身体的負担が大きいことが指摘されてきました。

令和3年度の介護報酬改定でルールが改正され、始点もしくは終点が自宅であれば医療機関間の移送でも算定が可能となりました。自宅を出発して、A病院に通院。その後、A病院を出発してB病院に通院。B病院から自宅に戻るという利用も可能です。

目的地が複数の場合は通院等乗降介助が算定できる?

目的地が複数の場合でも、始点もしくは終点のいずれかが自宅であれば、算定の対象となります。通院等乗降介助は、もともとひとつの目的地への移送を前提としたサービスでしたが、こちらも令和3年の報酬改定を機にルールが緩和されました。

自宅を出発して複数の医療機関を通院する場合以外にも、自宅から医療機関への通院の後、デイサービスやショートステイ事業所への移送も算定対象となります。

通院等乗降介助のQ&Aは?

通院等乗降介助に関するよくある質問を5点まとめました。

通院等乗降介助は要支援者も利用できるのか?

通院等乗降介助の対象者は要介護認定者のみです。要支援者は対象外です。

通院等乗降介助として利用することはできませんが、総合事業訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)として利用できる場合があります。公共交通機関を利用した外出介助などを、身体介護中心のサービスとして位置付け、算定することは可能です。

往路は家族等が対応し、復路は「通院等乗降介助」を利用できるか?

可能です。通院等乗降介助は片道ごとに算定できるサービスです。その逆に、往路で通院等乗降介助を利用し、復路を家族などが対応する場合も算定可能です。いずれの場合も、始点もしくは終点が自宅であることが前提です。

通院等乗降介助の前後に身体介護をおこなった場合は、別に算定できるのか?

基本的には算定できません。外出に関連する身体介護は通院等乗降介助の一環としてまとめられます。外出のための移動だけでなく、その準備としての更衣や排泄なども、通院等乗降介助の一部となるため、身体介護を別に算定することはできません。

ただし、要介護4または要介護5の利用者に対して、20分〜30分以上の身体介護をおこなった場合は、例外として身体介護も算定することができます。例えば、寝たきりの利用者に対して、更衣や排泄介助などを20分以上おこなった後、移乗・移動の介助をおこなった場合などが該当します。重度の利用者の場合は介護の手間が大きいために、例外として認められています。

介護タクシーにおける受診中の待ち時間も算定してよいのか?

算定することはできません。通院等乗降介助は受診中の待ち時間も含まれたサービスであり、時間による加算はありません。待機時間や受診の待ち時間を別途身体介護として算定することもできません。

通院等乗降介助における2人介助の取り扱いは?

通院等乗降介助は原則として1人介助です。ただし、例外的に2人介助が必要な場合もあります。利用者の体重が重く重度の介助が必要な場合や、エレベーターのない建物の2階以上の階からの移動など、1人介助では困難な場合は2人介助が認められます。

この場合、2人の訪問介護員などのサービス提供時間に応じた「身体介護中心型」の100分の200に相当する単位数の算定が可能です。算定する場合は、2人介助の必要性を訪問介護計画書に明記しましょう。通院等乗降介助のよくある質問をまとめて解説しました。

まとめ

通院等乗降介助について解説しました。利用者の外出や通院を支えるための重要なサービスである通院等乗降介助。令和3年の介護報酬改定により、利用の可能性が大きく広がりました。

ただ、運用ルールが厳格なため、十分な制度理解がないと誤った算定をしてしまう可能性があります。制度の確実な理解が必要です。利用者を移送する時の安全運転と同様に、慎重かつ確実な事業運営を心がけましょう。

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