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地域包括支援センターとは?利用対象者や役割、相談事例も紹介!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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「地域包括支援センターが何か分からない」「地域包括支援センターの活用方法がわからない」

そんな悩みを持っている方も多いのではないのでしょうか。

本記事では地域包括支援センターとは何か、仕事内容は何か、メリットやデメリットなどを事例とともにご紹介していきたいと思います。

地域包括支援センターとは?

地域包括支援センターとは、高齢者の生活に対し、介護・医療・保健・福祉などの側面から支える「総合相談窓口」です。

地域包括支援センターは法律では以下のように定義されています。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を 配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包 括的に支援することを目的とする施設。

引用:介護保険法

また、厚生労働省では地域包括支援センターが行う業務を以下のように宣言しています。

高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進する。

引用:厚生労働省

このように法律や政府では、高齢者の安全で自立した生活を目的として、地域全体でサポートしていくためのシステムの構築と支援をする位置付けの施設であることがわかります。

具体的には、高齢者の生活に関する相談対応、問題解決に当たって必要なサービスへの紹介など、利用者の生活に寄り添った解決策を提案しています。

地域包括支援センターは、各市町村が設置主体となり、センターを直接運営している直営型と自治体から委託を受けた社会福祉法人や医療法人、民間企業が運営する委託型があります。

現在の割合は市町村直営型が20.5%、委託型が79.5%と委託型が大半です。

地域包括支援センターは全国で5,351か所あり、人口2〜3万人の生活圏域に1つ配置されています。

参考:厚生労働省

地域包括支援センターが行っている仕事内容

地域包括支援センターが行っている業務は大きく分けて4つあります。

ここでは、行っている4つの業務について詳しく解説していきます。

①介護予防を目的とした活動支援

要支援と認定された人や、これから支援が必要になる可能性のある高齢者を対象とし、健康状態の維持と自立した生活の継続を目的とした支援を行っています。

簡単に言うと、高齢者の健康状態が要介護状態まで悪化することのないように、介護予防サービスを紹介しています。

介護予防サービスとは、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能向上」「閉じこもり予防」「認知機能低下予防」「うつ予防」などといった、高齢者の生活に必要な力の維持を目的としたサービスです。

このように、介護に関する相談や対策案を提示してくれます。

在宅介護に直面するご家族にとって、地域包括支援センターのサポートが果たす役割は非常に大きいです。

介護でお困りの方や、健康状態に不安をお持ちの方はぜひ、地域包括支援センターに相談してみましょう。

②総合相談

地域包括支援センターでは、高齢者に関わる相談ができる無料窓口を設けています。

健康・医療・法律・地域サービスなど、高齢者や地域に関する専門家の知識と、センターのネットワークを駆使し、相談者の問題を解決へと導いてくれます。

高齢者ご自身やご家族の力だけでは解決の難しい問題も、その道のプロの助けがあればあっさり解決するケースも多々あります。

相談は無料ですので、抱え込む前に相談してみましょう。

どのような方でも地域包括支援センターのスタッフが丁寧に対応し、寄り添ってくれます。

③権利擁護

地域包括支援センターでは、高齢者の有する権利を擁護し、悪用防止する活動を行なっています。

高齢者の方には、安全で安心して生活が送れるように法律で様々な権利が保障されています。

その権利を守り、詐欺や虐待から高齢者の安全を守ることもセンターの仕事です。

具体的には以下のようなものがあります。

・成年後見制度の手続きの支援と促進

・高齢者に対する虐待の防止と対策、または早期発見

・高齢者に対する消費者被害への対応と防止

高齢者を巻き込むトラブルや、受ける被害は権利を有効利用することで、防止・解決することができるケースもあります。

地域包括支援センターには、高齢者に関する権利や法律に関する専門家がいます。

ご自身やご家族が被害に遭った場合や、危険性がある場合は気軽にセンターに相談してみましょう。

④個別相談やアドバイスなど

高齢者の方が充実した暮らしを送れるように、高齢者ご本人やその家族に対して、生活のアドバイスや個別相談を行っています。

生活の不便を取り除くために各種サービスや団体へ連絡したり、人間関係構築や生活の充実のために地域コミュニティへの紹介などを行っています。

具体例を挙げると、

・孤独感のない充実した暮らしを行うために、ボランティア活動や習い事教室の紹介

・介護初心者に対する介護教室や技術指導の斡旋

・高齢者と話し合い、介護予防ケアプランのご提案

このように、高齢者やその生活を支える人の生活に寄り添った相談対応をしてもらえます。

ご自身の生活に不満をお持ちの方や、在宅介護に対して不安をお持ちの方は地域包括支援センターに相談してみてください。

地域包括支援センターのメリット・デメリット

地域包括支援センターにはたくさんのメリットがありますが、一部デメリットも存在します。

メリットとデメリットについてそれぞれまとめました。

地域包括支援センターの特性を理解した上で利用してみてください。

地域包括支援センターのメリット

地域包括支援センターにはメリットがたくさんありますが、高齢者の生活に関する専門分野の範囲がとても広いのがメリットと言えます。

介護予防のような医療的な相談から、高齢者の権利擁護のような福祉や法律的な相談など、様々な専門知識を必要とする問題をプロが解決してくれます。

生活における小さな不安や相談も、その道のプロが丁寧に対応してくれるのもメリットです。

また、生活地域に対して1つ以上は地域包括支援センターがあります。

従業員は地域の実情や特性を十分に理解しているため、高齢者の生活を地域全体でサポートしてもらえることも安心できるポイントです

地域包括支援センターのデメリット

地域包括支援センターのデメリットは、高齢者の問題に関する直接的な支援は行なってもらえない点です。

地域包括支援センターは、高齢者に向けた適切なサービスの紹介や提供を支援を行う役割を担っています。

そのため、直接センターの職員が直接介護のお手伝いをしたり、治療を行なったりすることはありません。

あくまで、必要なサービスや事務所をつなげる橋渡しをする施設であることを押さえておきましょう。

地域包括支援センターの利用条件

地域包括支援センターは以下の条件に合う方なら誰でも利用可能です。

・65歳以上の高齢者

・高齢者のご家族

・介護や支援に関する活動を行っている人

また、地域包括支援センターでの相談は無料です。

どんな些細なことでも話を聞いてもらえるため気軽に相談してみましょう。

ただし、センターから紹介されたサービスを利用する際に費用が発生する場合があります。

相談や紹介をご希望の際は、お住まいの地域の地域包括支援センターに問い合わせましょう。

利用者とご家族の住んでいる地域が異なる場合は、ご支援が必要な方がお住まい地域の、地域包括支援センターを利用しましょう。

地域包括支援センターの利用方法

①実際にセンターに行ってみる

地域包括支援センターは、生活地域に1つは必ず存在するため比較的近くにあります。

直接行って話を聞くのが一番早いでしょう。

センターによっては、予約が必要な場合もあります。

直接訪問して、対応してもらえないケースもありますので、各自治体に一度問い合わせてみると良いでしょう。

②自宅訪問

地域包括支援センターに行くのが難しい場合、自宅訪問をお願いすることも可能です。

センターのスタッフが直接ご自宅まで訪問してくれるため、安心してご利用いただくことができます。

お身体や、交通手段の状況を踏まえて困難な場合は、自宅訪問のお問い合わせをしてみましょう。

③各必要サービスの紹介

地域包括支援センターが紹介しているサービスに、直接参加してみる方法もあります。

その地域にあったサービスを数多く紹介しています。

介護サービスにとどまらず、習い事教室などのコミュニティへの紹介もあり、より充実した生活のお助けになることでしょう。

地域包括支援センターの利用事例

実際に、地域包括支援センターを利用した方の事例を4つ紹介します。

事例1:介護予防サービスに関する相談

Aさんは、歩くことが趣味で、日常的に近所をお散歩していました。

ある日、いつものコースを歩いていたAさんは、途中で足の疲労を感じ、その日は疲れて途中で引き返すことになりました。

日が経つごとに歩く距離が短くなっていくAさんは、自身の運動機関の衰え不安を感じ、地域包括支援センターに相談しました。

Aさんは相談員の勧めを受け、介護予防サービスの元で運動機能向上のための運動に取り掛かり、体力の衰えを防止することになりました。

事例2:ご近所の高齢者に関する相談

Bさんの家の隣には、ご夫婦(ご主人81歳、奥様80歳)が住んでいました。

ご夫婦は仲が良く、よくお出かけに出掛けている姿をみていました。

数ヶ月前に、奥様が軽い脳梗塞を起こして入院したが、重症化することもなく無事退院したと聞きました。

その後も外出することは無くなったが、ご主人が奥様の介護を行うことになりました。

そのうち、お隣から怒鳴りつける声が頻繁に聞くようになり、心配したBさんは地域包括支援センターに相談しました。

相談員がお隣に訪問して確認したところ、奥様の認知症状が現れ、ご主人は疲労して強く当たってしまうことが増えたそうです。

相談員は息子さんにも説得して、介護サービスを導入することになりました。

事例3:充実した生活を送るための相談

Cさんはご主人に先立たれてしまい、独居で生活していました。

息子さんが心配して、自身が家族と暮らす一軒家にCさんを呼び寄せて共同生活をすることになります。

しかし、Cさんは新しい地域に馴染めず、息子さん家族も多忙なため、より孤独を感じて鬱気味になってしまいます。

そこでCさんは地域包括支援センターに相談をしました。

その結果、Cさんは相談員の勧めで、文化教室に通うことになりました。

かつての趣味だった華道や茶道にも勤しみ、そこでの友達もできたため、新しい地域でも楽しく暮らすことができたそうです。

事例4:健康に関する相談

Dさんは夫の介護について地域包括支援センターで以前から相談を受けていました。

ある日、夫の介護中に手の痺れを感じて病院に行ったが、異常なしと診断されました。

しばらくしても症状がなくならないことに不安を感じたCさんは、地域包括支援センターの相談員に相談することに。

相談員は、Cさんにセカンドオピニオンをすすめ、他の病院を提案することにしました。

セカンドオピニオンの結果、Cさんは「初期の多系統萎縮症」と診断されました。

早期発見できたため、内服治療や、介護予防サービスの利用をしながら自宅で生活することができました。

このように、様々な問題を抱える方が地域包括支援センターに相談を行い、問題解決のサポートを受けています。

この事例のように、ご自身の生活に不安をお持ちの方や、問題を抱えている方は、一度近くの地域包括支援センターに相談してみてください。

どの職種の人が地域包括支援センターにいる?

地域包括支援センターには①社会福祉士、②保健師、③主任ケアマネジャーの3人を基本として、高齢者の生活に関する知識を持つスタッフが配置されています。

それぞれの職員の特徴と担当していることをまとめました。

①社会福祉士

社会福祉士は、福祉の相談支援に関する高度な専門知識と技術を持っている専門家です。

主に、相談対応・支援・権利擁護を担当していて、利用者の相談に対して、福祉的・法律的視点から解決に導いてくれます。

地域包括支援センターが高齢者の権利に関する相談や、金銭被害の対応に対して的確な措置が行えるのは、社会福祉士のおかげです。

②保健師

保健師とは、地域に住む住民の保健指導や健康管理に関する専門家です。

地域包括支援センターでは、介護予防マネジメントを担当しています。

高齢者が適切な介護サービスを受けられるようにケアプランを提案したり、それ以上介護が必要ないように予防措置を具体的に提案しています。

保健師は、医学・健康・生活の専門知識を有しています。

保健師の知識と力があって、センターは安心して相談対応や支援を行うことができます。

③主任ケアマネージャー

主任ケアマネージャーは、介護支援の専門知識を有する専門家です。

利用者の生活を地域全体でサポートできるように、地域団体や福祉サービス、医療介護保険などのネットワークを向上させ、適切なシステムを作る専門家です。

また、地域の介護を行なっているケアマネージャーに対する指導も行なっています。

センターが介護に関しての不安や相談に的確に対応できるのは主任ケアマネージャーのおかげです。

地域包括支援センターが設立された背景

地域包括支援センターは、2005年の介護保険制度改定をきっかけに生まれました。

その後も日本の高齢社会は日々進行しており、2025年には団塊の世代が皆75歳以上になり、高齢者の数は3,677万人に到達すると見込まれています。

また、日本の認知症高齢者の数は2012年で462万人、2025年には約700万人と、65歳以上の高齢者の5分の1に達することが見込まれています。

こういった国の状況から、認知症患者と高齢者が住みやすい社会を実現するために、厚生労働省は2025年を見据えた『新オレンジプラン』を提案しました。

参考:厚生労働省

新オレンジプランでは以下のことが目的とされています。

認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す。

つまり、高齢者の自立支援ができる社会を目的としています。

この目的を達成するためには、高齢者と各種サービスや制度をつなぎ、システムを構築する中核組織が必要です。

そこで、各地域に「地域包括支援センター」が設置されるようになりました。

これからますます深刻化する高齢化社会において、地域包括支援センターのもつ役割はより重要視されるでしょう。

まとめ

今回は、地域包括支援センターについてまとめました。

地域包括支援センターは、高齢者の健康的で自立した生活を支援する施設です。

些細な質問から、ご自身では解決困難な問題まで幅広い対応を行なっている施設です。

社会保険士、保健師、主任ケアマネージャーといった専門知識を有する職員が、利用者の問題解決に導いてくれます。

65歳以上の高齢者やその生活を支援する方なら、誰でも無料で相談・対応してもらえるので、まずはお気軽にお問い合わせしてみてください。