本記事では、介護現場でのハラスメントについてご紹介していきます。
「プロサポ!」は特定事業所加算の運用代行を行うサービスです。
申請書作成及び体制要件の充足を目的とし、申請後に円滑な運用が出来るように支援いたします。
<主な支援内容>
・研修計画の作成&研修システムの提供
・議事録、出席簿の作成
・指示報告システムの提供
・健康診断の受診規定作成
・緊急時案内マニュアルの作成
目次
今後の日本社会のさらなる高齢化に対応するため、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築に向け、最重要な基盤の一つである介護人材を安定的に確保し、介護職員が安心して働くことのできる職場環境・労働環境を整えることが必要不可欠です。
しかし、近年、介護現場では、利用者や家族等による介護職員への身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどが少なからず発生していることが様々な調査で明らかとなっています。
これは、介護サービスは直接的な対人サービスが多く、利用者宅への単身の訪問や利用者の身体への接触も多いこと、職員の女性の割合が高いこと、生活の質や健康に直接関係するサービスであり安易に中止できないこと等と関連があると考えられます。
対高齢者のみでなく、ご利用者様となり得る障害者のご利用者様、職場内の同僚、上司、部下等従業員を取り巻くすべてが対象になることも忘れてはいけません。
平成30 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業において、介護事業者向けの「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」が作成されました。
また、令和元年には度同事業において、地方公共団体や関係団体が介護事業者の管理者等向けに実施する研修の手引き及び介護事業者の管理者等が、職員向けに実施する研修の手引き・動画が作成され、翌令和2年度には同事業において、有識者で構成される検討委員会での議論を踏まえ、前年度までに作成されたマニュアルや手引きの解説への理解を深めるため、介護現場でのハラスメント等の発生までの経緯やその後の対応、事例から学べる対策等を整理した事例集が作成されています。
平成31年 2月に実施された三菱総合研究所による実態調査によると、施設・事業所に勤務する職員のうち、利用者や家族等から、身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどのハラスメントを受けた経験のある職員は、サービス種別により違いはあるものの、利用者からでは4~7割、家族等からでは1~3割になっています。
調査前1年間(平成 30 年)で見ると、利用者からのハラスメントを受けたことのある職員は、割合が高いサービスで6割程度、低いサービスで2割程度となっており、いずれのサービス種別においても、ハラスメントを受けている実態がうかがえます。
利用者からのハラスメントの内容をみると、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、居宅介護支援等では、「精神的暴力」が最も多く、特定施設入居者生活介護や介護老人福祉施設、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護では、「身体的暴力」が最も多くなっています。
訪問系サービスは、「精神的暴力」の割合が高い傾向がみられ、入所・入居施設は、「身体的暴力」及び「精神的暴力」のいずれも高い傾向となっていることが特徴です。
また、ハラスメントを受けたことにより、けがや病気になった職員は1~2割、仕事を辞めたいと思ったことのある職員は、2~4割となっています。
介護職で組織する労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が令和8月20日に公表した調査レポートでは、月給制で現場を支える介護職に働く上での不安があるかを尋ねたところ、76.0%が「ある」と回答しています。
その最大の理由では、「自分の体力・体調(24.4%)」や「賃金・貯蓄(22.8%)」などが多く、「上司や利用者・家族のハラスメント」は2.3%と少なかった。
一方で、こうした不安から離職を考えたことがある人の割合をみると、「上司や利用者・家族のハラスメント」が93.2%で最多となり、以下、「利用者・家族との人間関係がうまくいかない」が76.9%、「事業所内の人間関係がうまくいかない」が76.7%と続いています。
提示されているマニュアルの中では、以下のように定義づけられています。
1)身体的暴力
身体的な力を使って危害を及ぼす行為。(職員が回避したため危害を免れたケースを含む)
例:○コップをなげつける○蹴られる○手を払いのけられる○たたかれる○手をひっかく、つねる○首を絞める○唾を吐く○服を引きちぎられる等
2)精神的暴力
個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為。
例:○大声を発する○サービスの状況をのぞき見する○怒鳴る○気に入っているホームヘルパー以外に批判的な言動をする○威圧的な態度で文句を言い続ける○刃物を胸元からちらつかせる○「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する○利用者の夫が「自分の食事も一緒に作れ」と強要する○家族が利用者の発言をうのみにし、理不尽な要求をする○訪問時不在のことが多く書置きを残すと「予定通りサービスがなされていない」として、謝罪して正座するよう強く求める○「たくさん保険料を支払っている」と大掃除を強要、断ると文句を言う○利用料金の支払を求めたところ、手渡しせずに、お金を床に並べてそれを拾って受け取るように求められた。○利用料金を数か月滞納。「請求しなかった事業所にも責任がある」と支払いを拒否する○特定の訪問介護員にいやがらせをする等
3)セクシュアルハラスメント
意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為。
例:○必要もなく手や腕をさわる○抱きしめる○女性のヌード写真を見せる○入浴介助中、あからさまに性的な話をする○卑猥な言動を繰り返す○サービス提供に無関係に下半身を丸出しにして見せる○活動中のホームヘルパーのジャージに手を入れる等
このような背景で、令和 3 年 3 月には株式会社三菱総合研究所が事例集を発行しました。
日々の業務の中、『これがハラスメント』なのかという違和感を持つことが大切であり、違和感に対して正しい知識を持って解決していくことが大切です。
介護職の働く環境の向上のためには、生産性の向上や研修の充実だけでなく、『職員を守る』という観点もとても大切です。
正しい知識を広く持ち、何事も安易に考えることなく職員を守る姿勢が、離職の防止や採用に繋がっていきます。