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2024年介護報酬改定に向けた準備とは?報酬改定の動向と対策!

2023-06-08

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年に第12回の介護報酬改定が実施されます。今回の改定は、新型コロナウイルスへの対応も落ち着き、2025年問題に向けて本格的な改革を行う重要なタイミングです。

これからの介護業界は、介護保険料の増大、認知症高齢者の増加など、さまざまな課題を抱えています。これらの課題に対してどのように対処するのか、今回の改定で方向性が示されるでしょう。

今回は、現時点で議論されている2024年介護報酬改定の動向と対策について解説します。この記事を読む事で、2024年の改定に向けてチェックしておくべき情報や、今からできる対策がわかるでしょう。ぜひ最後までお読みください

2024年介護報酬改定とは

2024年は、介護報酬改訂だけでなく診療報酬も同時に改定される年です。医療・介護両面から大胆な変更が行われる可能性も高いでしょう。また、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年問題の直前の年でもあるため、特に介護保険制度の改定内容が注目されています。

今年は2024年の改定に向けた議論が本格化していくことが予測されます。今、何が議論されているのか把握して、最新情報を確認しなければ対策法がわかりません。

この記事では、社会保障審議会介護保険部会の最新情報を中心にまとめています。議論されている内容をリアルタイムで把握しつつ、今からできる対策について考えておきましょう。

2024年介護報酬改定の方向性

令和4年12月に開催された社会保障審議会介護保険部会の資料によると、次回の介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの深化・推進、介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保、といった内容が重要視されているようです。

これまで、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えて、地域包括ケアシステムの構築を全国各地で推進してきました。しかし、現状は地域差や個人差に合わせたシステム構築ができていない、といった問題も発生しています。そういった課題を解決しつつ地域包括ケアシステムをさらに深化・推進していく必要があるでしょう。

介護人材不足や介護職員の労働環境の改善も重要な課題です。介護保険制度の持続可能性を確保するためにも、介護職員の処遇改善やICTの活用など、今後さらに推進させていく必要があります。

増加し続ける介護保険料を抑制する対策も重要です。利用者の負担割合増加なども視野に検討されています。

 

2024年介護報酬改定で注目されているポイント

2024年の介護報酬改定で検討されている問題は多数ありますが、その中でも訪問介護と通所介護に関する内容で注目されているポイントを5つ解説していきます。5つのポイントとは、新サービス創設、財務諸表の見える化、住まい支援システム、利用者負担額の増加、LIFEの有効活用といった内容です。各内容について解説していきます。

新サービスの創設

令和4年12月に開催された社会保障審議会介護保険部会の資料には以下のように記載されています。

 

(在宅サービスの基盤整備)

地域の実情に合わせて、既存資源等を活用した複合的な在宅サービスの整備を進めていくことが重要である。

複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当である。

 

引用:厚生労働省 第105回社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」

 

在宅サービスを利用している高齢者のニーズが多様化しており、現状のサービスだけでは対応できないケースも増えています。訪問サービスと通所サービスを一体的に提供できるような複合型サービスの類型を設けることも検討されているようです。例えば、訪問介護と通所介護を組み合わせたサービスが想像できますが、具体的にどのようなサービスになるかは明確になっていません。

在宅サービスの基盤整備の一つとして、小規模多機能型居宅介護の更なる普及促進も挙げられていました。

財務諸表の見える化

次回の介護報酬改定では、介護サービス事業者の経営状況を公表する制度が検討中です。介護サービス事業者の財務諸表データを公開する理由としては、以下の4点が挙げられています。

 

  •  国民に対して介護が置かれている現状・実態の理解の促進
  • 効率的かつ持続可能な介護サービス提供体制の構築のための政策の検討
  •  物価上昇や災害、新興感染症等に当たり経営影響を踏まえた的確な支援策の検討
  • 実態を踏まえた介護従事者等の処遇の適正化に向けた検討
  • 介護報酬に関する基礎資料である介護事業実態調査の補完

 

引用:厚労省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

 

現段階では、介護サービス事業者が財務諸表等の情報を定期的に都道府県知事に提出し、社会福祉法人と同様に、厚生労働大臣がデータベースを整備する方向で検討されています。また、公開する方法については、個別の介護サービス事業所の情報を公表するのではなく、属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表することが検討されています。

例えば、地域別、業態別などでグルーピングされた財務諸表データの平均値を公表する、といった形式になりそうです。

具体的に公表される情報としては、以下のような内容が検討されています。

 

公表する情報として提案されているもの

  • 財務状況の公表
  • 従事者の情報の公表
  • 職種別の従事者の数
  • 従事者の経験年数等
  • 一人当たりの賃金等(追加検討)

 

引用:厚労省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

 

財務諸表データの公開は、事業所を選択する利用者や家族にとって役立つだけでなく、今後の制度改革においても役立つ可能性が高いでしょう。

住まい支援システム

今後、独居の困窮者・高齢者等の増加が見込まれており、高齢者の住まい確保に向けた支援も重要です。

令和4年度老人保健健康増進等事業において、地域共生社会づくりのための「住まい支援システム」構築に関する調査研究事業を実施しています。住まい支援システムとは、自治体の介護保険部局や住宅部局等で構成する住まい支援センターを設置し、住まいの相談支援、アセスメント、地域事業者とを繋げる事業のことです。現在、複数の関係機関、自治体でモデル事業を進めていますが、今後介護保険とも連携して住まいの問題を抱える高齢者を支援していく制度が整備されていく可能性が高いでしょう。

 

参考:厚労省 社会保障審議会 介護保険部会(第101回)「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進(参考資料)」

利用者の負担額の増加

利用者の負担額増加についても、次回改定で注目されています。令和4年12月に開催された社会保障審議会介護保険部会では、特に「現役並み所得」「一定以上の所得」という判断基準に関する検討が行われました。

判断基準を見直す理由として、介護保険料の増加が現役世代の大きな負担になっている、高齢者世代間の不公平感を解消する、といった背景があります。しかし、現在生活が困窮している高齢者の負担が大きくなる、医療費と比較して長期間支払うサービスなので利用者の負担が大きくなる、といった理由から反対する意見が出ました。

現役世代の負担が大きくなる、世代間、所得差を考慮して負担する能力のある人が負担すべき、といった見直しに前向きな意見もあるようです。そのため「一定以上の所得」の判断基準については、後期高齢者医療制度との関係、介護サービスは長期間利用されること等を踏

まえつつ、次期計画に向けて結論を出すこととなりました。

 

参考:厚労省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

 

LIFEの有効活用

現在、LIFE(科学的介護情報システム)は、利用者自身の閲覧、介護事業所間の共有、介護・医療間の共有などの活用ができていません。そのため、必要な情報の選定や、情報を閲覧・共有するための仕組みづくりについて検討中です。

自治体、利用者、医療機関などが、LIFEを活用して利用者の介護情報等を閲覧できるようになれば、以下のメリットが得られます。

 

  • 自治体が、被保険者が受けている自立支援・重度化防止の取組の状況等を把握し、地域の実情に応じた介護保険事業の運営に活用する
  • 利用者が自身の介護情報を閲覧できることで、利用者自身の自立支援・重度化防止の取組の推進に繋がる
  • 介護事業者・医療機関が、本人の同意の下、介護情報等を適切に活用することで、利用者に対して提供する介護・医療サービスの質を向上させる
  •  紙でのやりとりが減り、事務負担が軽減する

 

引用:厚労省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

 

現状、LIFEへの情報入力をしていない事業所も多いため、多くの介護サービス事業者からデータを収集できるように入力負担を軽減する取り組みも必要とされています。

2024年介護報酬改定に向けて取り組むべきこと

2024年介護報酬改定に向けて、周辺施設との連携、財務状況の整理、LIFEの導入と活用、という3点を意識して準備するとよいでしょう。次回の介護報酬改定前に介護サービス事業者が取り組むべきことについて解説します。

周辺施設との連携強化

2024年は介護報酬と診療報酬のダブル改定が行われる年です。医療業界と介護業界が足並みを揃えて課題解決を目指すタイミングでもあります。現段階で議論されている内容でも、入所施設における医療サービスの提供、LIFEを利用した医療機関との連携など、地域で医療と介護が連携する場面が多くなる可能性が高いでしょう。特に医療機関との連携は重要です。また、複合型サービスの新設にあたって、近くの施設からアドバイスをもらう必要性も出てくるかもしれません。医療、介護の垣根を超えて、近隣施設と連携しておくことをおすすめします。

 

財務状況の整理

将来的に介護サービス事業者の財務諸表データを提出する準備を進めておきましょう。財務諸表データを公開する範囲や提出する頻度などは未確定ですが、将来的に財務諸表を提出する可能性は高いでしょう。求められたらすぐ提出できるように、財務諸表を整理しておきましょう。また、仮に一般公開された場合、利用者から財務諸表に関する問い合わせが増加する可能性もあります。財務諸表を公開した後に想定される事態も想定して準備しておくとよいでしょう。

LIFEの導入と活用

次回の介護報酬改定に関して、LIFEを活用していく方針が出されています。将来的に「LIFEを活用した介護サービスの提供」を求められる可能性は高いでしょう。今のところLIFEを導入するメリットは小さいかもしれません。しかし、将来的にはLIFEの必要性が高まる傾向にあるので、早めにLIFEを導入しましょう。また、すでにLIFEを導入している施設も、LIFEを積極的に活用できる体制を整えておくことをおすすめします。

まとめ

この記事では、2024年介護報酬で注目されているポイントとして、新サービスの創設、財務諸表の見える化、住まい支援システム、利用者の負担割合増加、LIFEの有効活用の5つをご紹介しました。

地域に住む高齢者のニーズは多様化しており、病院や居宅サービスなど他機関と連携して課題解決を目指す必要性が高まっています。積極的に周辺施設と連携していきましょう。

また、介護施設における財務諸表データの公開も検討されているため、自社の財務状況を見直しておくことをおすすめします。

今後もLIFEを活用した科学的介護の提供が推進されていくため、積極的にLIFEを導入していきましょう。まだ確定していない情報も多いため、引き続き最新情報を注視して準備を進めていきましょう。

 

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001015834.pdf

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001025605.pdf

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001027165.pdf

 

介護事業所向けお役立ち情報
2024年介護報酬改定完全理解マニュアル
紹介画像


介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました!
<目次>
1)2024年介護報酬改定のについて
2)2024年介護報酬改定の改定内容
3)2024年介護報酬改定のスケジュール
4)2024年介護報酬改定に備えて事業所がすべきこと

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