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2021年の介護報酬改定を分かりやすく解説!2024年の介護報酬改定にどう繋がる?

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2021年介護報酬改定の5つの柱

2021年の介護報酬改定に関する内容を振り返っていきましょう。厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」によると、2021年介護報酬改定に関して、冒頭で以下のように示されています。

 

新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図る。

 

引用:厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

 

「感染症や災害への対応力強化」や「地域包括ケアシステムの推進」など、5つの柱を中心に改定されており、全体的に0.7%のプラス改定でした。新型コロナウイルスが拡大している最中に実施された介護報酬改定なので、感染症に関する内容が含まれている特徴があります。例えば、感染症の影響により実績が低下している事業所に対して3%の特別加算を算定できる、といった内容もありました。新型コロナウイルスへの対応と将来予測される問題への対応、両方の内容が含まれた改定といえるでしょう。

2021年介護報酬改定「感染症や災害への対応力強化」

2021年の介護報酬改定では、各事業所で感染症や災害への対応力を強化する方針が示されました。2021年の介護報酬改定で新たに示された内容がBCP(事業継続計画)の策定です。前回の改定でBCP策定のガイドラインを示し、3年の経過措置を設けました。これにより、2024年までに全ての施設でBCPを策定することが求められています。

もう一点の対策として含まれていた内容が「感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする特例措置」です。具体的には「延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間基本報酬に対して3%の追加加算を行う」といった内容です。3%加算は特例措置として実施されたものなので、継続的に行われるものではありません。

2021年介護報酬改定「地域包括ケアシステムの推進」

2021年の介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの取り組みを推進させる内容も多く含まれていました。主に通所介護と訪問介護へ関係する部分だけ抜粋して紹介します。

認知症への対応力向上に向けた取組の推進

介護サービスにおける認知症対応力を向上させるため、訪問系サービスについて認知症専門ケア加算を新たに創設しました。また、介護に関わる全ての職員において認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づけています。ただし、医療・福祉関係の資格を保有している職員は対象外です。

看取りへの対応の充実

看取り期の利用者に訪問介護を提供する場合、2時間未満のサービス提供であったとしても所要時間が合算されず、それぞれの所定単位数で算定できるように変更されています。

医療と介護の連携の推進

訪問介護の通院等乗降介助について、利用者の負担軽減や利便性向上の観点から「居宅が始点又は終点となる場合の目的地間の移送」について算定可能となりました。これにより、在宅生活を送る高齢者が病院等へ移動する際のサービスも提供しやすくなりました。また、訪問入浴介護について新規利用者への初回サービス提供時に200単位の初回加算を算定できるように変更されています。

地域の特性に応じたサービスの確保

離島や中山間地域の要介護者に対する介護サービス提供を促進するため、夜間対応型訪問介護、認知症対応型デイサービス、多機能系サービスについても中山間地域等に係る加算の対象となるように変更されています。

2021年介護報酬改定「自立支援・重度化防止の取組の推進」

2021年介護報酬改定の中では「自立支援・重度化防止の取り組み」に関する内容が多く含まれています。質の評価やデータを活用しながら「科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供」を目標としています。訪問介護と通所介護に関連する内容をピックアップして紹介します。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化

通所介護や特養等で算定できる生活機能向上連携加算に関する変更がありました。ICTの活用等により外部のリハ専門職等が事業所を訪問せずに利用者の状態を把握・助言する場合にも算定できる「生活機能向上連携加算(Ⅰ)」が新設され、多くの施設で算定しやすくなりました。医療と介護の垣根を超えて、リハ専門職同士が連携しやすくなることを目的としています。

通所介護で算定できる個別機能訓練加算に関しても変更がありました。個別機能訓練加算Ⅰを算定するには専従1名以上の機能訓練指導員配置が必須となり、LIFEからのフィードバックを受けていることで個別機能訓練加算Ⅱを算定できるように変更されています。より科学的な根拠に基づいた機能訓練が求められているといえるでしょう。

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進

2021年の介護報酬改定の中でも注目度の高かった内容が「科学的介護の推進」でした。CHASEとVISITが「LIFE(科学的介護情報システム)」へ統合され、入所系・通所系の介護事業所で算定できる科学的介護推進体制加算が新設されました。

2021年介護報酬改定「介護人材の確保・介護現場の革新」

将来的に深刻な介護人材が懸念されている中、2021年介護報酬改定では介護人材の確保と介護現場の革新に対応する内容が変更されました。訪問介護と通所介護に関係する内容を一部抜粋して紹介します。

介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取り組みの推進

特定処遇改善加算を活用しやすい仕組みにするため、「経験・技能のある介護職員」の賃金改善額を「その他の介護職員の2倍以上とすること」ではなく「より高くすること」と変更し、特定処遇改善加算を算定しやすくしました。
サービス提供体制強化加算でも変更がありました。サービスの質の向上や職員のキャリアアップを推進するため、より勤続年数の長い介護福祉士の割合が高い事業者を評価する新たな区分が設けられています。訪問介護に関しては、特定事業所加算(Ⅴ)が新設されました。

2021年介護報酬改定「制度の安定性・持続可能性の確保」

将来的に介護保険制度を持続させていくためにも、制度の持続可能性を確保する必要があります。必要なサービスは確保しつつ、重点化を図る目的で複数の変更が行われています。訪問介護と通所介護に関係する部分だけ紹介します。

評価の適正化・重点化

同一建物減算適用時の区分支給限度基準額について、減算の適用前の単位数を用いるように変更されました。これにより同一建物減算を受ける人と受けない人の間での公平性が保たれます。夜間対応型訪問介護については、月に1度も訪問サービスを受けていない利用者が存在する実態を踏まえて定額オペレーションサービス部分の評価の適正化が行われました。

報酬体系の簡素化

処遇改善加算について、処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定が進んでいることを踏まえて処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止されました。

療養通所介護については日単位報酬体系から、月単位包括報酬に変更されています。

2021年介護報酬改定のまとめ

2021年の介護報酬改定の内容をまとめると以下のようなトピックにまとめられます。

 

  • 新型コロナウイルスの対応と対策
  • 介護と医療の連携を強化し、地域包括ケアシステムを推進する
  • LIFE(科学的介護情報システム)を活用し、自立支援・重度化防止を強化していく
  • テクノロジーの活用によって介護現場の労働環境を改善し、介護人材を確保する

 

新型コロナウイルスに関しては、2021年時点での対策と同時にBCPの策定などが求められ、再び感染が拡大した際の対策を立てることも重要視されています。

地域包括ケアシステムの推進に関しては「医療と介護の連携」が重要なキーワードになっています。今後も連携を強化するように求められていくでしょう。

2021年介護報酬改定からLIFEが導入されていますが、将来的にLIFEを中心に医療・介護施設間での情報連携を行うことを想定しているようです。今後、多くの施設でLIFEを導入する必要性が高まるでしょう。

介護人材不足に関する対策は緊急性の高い内容です。今後も継続的に取り組まれていくでしょう。

2024年介護報酬の傾向

次回の介護報酬改定は2024年です。2021年介護報酬改定の内容を踏まえつつ、2024年介護報酬改定で検討されている内容をいくつかご紹介します。今回触れる内容は、厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会の資料「介護保険制度の見直しに関する意見」をもとにご紹介します。

 

参考:厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

新サービス創設

多様化する地域高齢者のニーズに対応するため、訪問サービスと通所サービスを一体的に提供できる複合型サービスを創設することが検討されています。例として「訪問介護×通所介護」という施設形態も挙げられていますが、詳細な内容はまだ明確に示されていません。

財務諸表の見える化

2024年の介護報酬改定で介護サービス事業者の経営状況を公表する制度が検討されています。現段階では、各都道府県へ情報を提供し、都道府県ごとにまとめた情報を公表する方向で検討されているようです。

LIFEの有効活用

現在、LIFEを使った利用者自身の情報閲覧、介護事業所間の情報共有、介護・医療間での情報共有といった活用ができていません。将来的には各所で情報が共有できる仕組みを構築していくことが検討されています。まだLIFEを導入していない事業所も多く、LIFE関連の加算がどのように変更されるのか注目です。

2021年改定から2024年改定にどう繋がるのか

2024年介護報酬改定は、2021年介護報酬改定改定で打ち出した5つの柱をさらに強化する改定となりそうです。

新型コロナウイルスの感染状況は現在落ち着いているので、緊急性の高い感染症対策は終了するでしょう。一方、今後は感染症と自然災害に対するBCPの策定が求められています。現在は猶予期間ですが、介護事業所におけるBCP策定は必須です。まだ策定していない事業所はBCP策定を急ぎましょう。

2024年介護報酬改定では、2021年介護報酬と同様に医療と介護の連携が強化されるでしょう。今後も介護現場での医療ニーズが高まることが予測されます。高まる医療ニーズへ対応するため、介護事業所と医療機関での連携が重要なキーワードとなるでしょう

2021年介護報酬改定でスタートした「LIFE」の活用がさらに推進されます。LIFEの活用方法についても検討されているので、今後もLIFE関連の加算に注目です。

2024年介護報酬改定は、2021年介護報酬改定で打ち出された「5つの柱」と大きな方向性は変わらない可能性が高いでしょう。2021年の方針を継承しつつ、さらに一歩踏み込んだ内容が検討されています。

まとめ

今回は2021年介護報酬改定の内容を解説しつつ、2024年介護報酬改定に繋がることをピックアップしてご紹介しました。2021年介護報酬改定では、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能性の確保という5つの柱を中心に実施されました。2024年介護報酬改定に向けて行われている話し合いの中でも、2021年と同様の内容について触れられているため大きな方向性は変わらないでしょう。2024年は2021年介護報酬改定の内容をさらに推進する内容になりそうです。

 

介護事業所向けお役立ち情報
2024年介護報酬改定完全理解マニュアル
紹介画像


介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました!
<目次>
1)2024年介護報酬改定のについて
2)2024年介護報酬改定の改定内容
3)2024年介護報酬改定のスケジュール
4)2024年介護報酬改定に備えて事業所がすべきこと

 

参考文献:厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」

参考文献:厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

お役立ち資料:最新の介護報酬改定内容を確認したい方へ

介護事業所向けに2021年の介護報酬改定に関する情報をまとめました。
現在介護報酬はどのようなルールが定められているかや、前回の改定を受けて何をすべきか確認できる資料です。
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