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令和6年度までに対応しよう!BCPの策定方法と事例!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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令和6年から介護施設でのBCP策定が完全義務化されます。まだBCPを策定していない施設管理者の中には「BCPを作りたいけど、どんな内容にすればよいのかわからない」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。BCP策定に必要な内容については事例が示されており、施設の状況に合わせて項目を埋めるだけで作れます。今回は、BCPの策定方法について事例を紹介しつつ解説します。ぜひ最後までお読みください。

BCPとは:業務継続計画の概要

BCPとは業務継続計画書のことです。厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」によると、BCPについて以下のように示されています。

 

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを業務継続計画(BCP)と呼ぶ

 

引用:令和2年度 厚生労働省老健局業務継続計画(BCP)作成支援指導者養成研修

 

介護事業所のBCPでは、自然災害と感染症という2種類の事態に対する計画を策定しなければいけません。直ちにBCPを策定することが望ましいですが、2024年3月31日までは経過措置が取られています。2024年4月1日以降は完全に義務化されるので、まだBCPを策定していない事業所は2024年4月までに必ず策定しましょう。

なぜBCPが必要か?:介護事業所にBCPが求められる理由

介護事業所は、要介護者やその家族の生活を支える仕事です。急にサービスが途絶えた場合、多くの高齢者が生活できなくなるリスクがあります。

万が一の事態が発生した際にサービスを提供し続けるためには、平時から緊急事態の行動計画を策定しておく必要があるでしょう。

過去に福祉施設を大規模災害が襲って多くの方が亡くなった事例や、新型コロナウイルスの蔓延により介護サービスを受けられない方が多く発生した事例もあります。そういった事例が多く発生していることからも、BCPの重要性が高まっているといえるでしょう。

新型コロナウイルス感染症と自然災害を想定したBCP策定のポイント

感染症BCPと自然災害のBCPを策定するときに注意すべきポイントは時間です。時間的経過というポイントから感染症BCPと自然災害BCPを比較してみましょう。

感染症BCP

感染症が拡大する局面では、利用者と職員の感染者が増加していく可能性が高いでしょう。平時の業務を全て実行できなくなる可能性が高いので、対応できる職員の人数に応じて実行できる業務を絞り込まなければいけません。その後、徐々に職員の人数が戻ってくるのに合わせて業務量を調整します。途中で感染拡大と縮小を繰り返すので、状況に応じて業務範囲を変動させる必要性もあるでしょう。

自然災害BCP

自然災害発生当初は、まず避難誘導や安否確認などの災害時業務を最優先に対応します。電気や水道などのインフラが停止している可能性もあるため、一時的に業務を全てストップせざるを得ない状況が続くでしょう。その後、環境が整ってくると同時に優先度の高い業務から回復させていきます。

入所系・通所系・訪問系サービスのBCP対策:事業形態ごとの固有事項

BCPを策定する上で、介護施設の形態ごとに注意するポイントが異なります。各施設で確認しておくべき固有事項について解説します。

入所系

入所者がいる介護施設では、自然災害発生時に利用者のライフラインが止まってしまった場合の対策が最も重要です。ライフラインが止まることで入居者が命を落とす可能性もあります。万が一の場合に備えて、BCPで誰が、いつ、何をするのか、担当者を明確に決定しておきます。また、非常時に必要な物資をリストアップし、日常的に物資を確認しておく必要があるでしょう。BCPを策定したら、全職員で共有できるように定期的に研修や訓練を行っておく必要もあります。

通所系

通所系の介護施設では、利用者の居場所によって対応方法が変わります。利用中に大規模災害が発生した場合、利用者の安全を確保しつつ緊急連絡先へ連絡し、家族や行政機関と連携していく必要があるでしょう。

災害時や感染症拡大時にサービスの休止や縮小を余儀なくされることも想定されます。サービスを休止する基準をあらかじめ定めておきましょう。また、通所サービスを長期間休業する場合、訪問サービス等へサービスの提供体系を変更する必要があります。訪問サービスを提供する方法などもあらかじめ定めておきましょう。

利用中に被災した場合、利用者の安全を確保した上で速やかに自宅へ送迎する方法も記載しておきます。

訪問系

災害発生時に職員が利用者宅でサービス提供中の場合もあります。サービス提供中に自然災害が発生した時の対応手順について、職員と情報共有をしておきましょう。また、被災後に避難先で訪問サービスを提供する場合も想定されます。平時から地域の避難方法や避難先の情報を収集しておくとよいでしょう。

大規模災害によってサービスの休止・縮小を余儀なくされる場合もあります。サービス提供を長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携し、必要に応じて他事業所の訪問サービス等へ変更しなければいけません。被災時のサービス提供体制に関してあらかじめ定めておきましょう。

 

自然災害(地震・水害等)BCP作成の流れ

自然災害のBCPを策定する際のポイントについて解説します。自然災害BCPは、平常時の対応、緊急時の対応、外部との連携、という3つのセクションで作成するとよいでしょう。各セクションについて解説します。

「平常時の対応」作成のポイント

平常時の対策は大きく分けて「事前の対策」と「被災時の対策」に分けられます。事前の対策とは、水道や電気などのライフラインが止まった時などの対策のことです。一方、被災時の対策は、日常的に備蓄する備品や設備の確認などのことを指します。

まずは、施設内の安全対策を実施するとよいでしょう。次に、事前の対策としてライフラインの確認を実施します。水道が止まった場合にどうするか、電気が止まった場合にどうするか計画を立てましょう。最後に、被災時の対策として必要な備蓄品を確保します。

「緊急時の対応」作成のポイント

緊急時の対応とは、実際に被災した場合の行動計画を指します。策定するべき項目としては、初動対応、人命安全確保、重要業務の継続計画、復旧対策について計画を策定する必要があるでしょう。

初動対応とは、被災した場合の最初の行動計画のことです。誰がどのように動くのか詳細に決めておきましょう。

人命安全確保は、被災時に最優先に実施すべき業務です。災害の規模に応じて、利用者と職員がどのように安全を確保するのか段階的に定めておきましょう。安全を確保できたら、最重要な業務に絞って業務を遂行します。

被災時の状況によっては、満足に介護教務が行えない場合もあるでしょう。業務ごとに重要度を決めて、最重要業務を実行する手順についても計画を立てます。最重要業務を遂行しつつ、再び平時の業務を実行できるように復旧も進めなければいけません。復旧業務としては破損箇所の把握や修繕業者への連絡などが挙げられます。

「外部との連携」作成のポイント

大規模災害が発生した場合、自施設だけでは解決できない問題が発生するかもしれません。緊急時に他施設と協力できる体制を整えておきましょう。

被災時に急に連絡しても連携を取れない可能性は高いため、平常時から連携先と施設と情報を共有しておく必要があります。非常時にどこまで情報を共有するのか、お互いにどのような状態になった場合に協力できるのか明記しておくとよいでしょう。

また、介護施設だけの連携ではなく、地域施設との連携も重要です。被災時に地域の他施設へ職員を派遣したり、福祉避難所の運営なども実施できるように尽力することも検討しておきましょう。

7. 感染症BCP作成の流れ

感染症BCPを策定する場合は、平時対応、感染疑い者の発生、初動対応、感染拡大防止対策の確率について計画を立てましょう。計画策定のポイントと事例を紹介します。

平時対応

平時の対応としては、以下の5つの項目について準備を進めておくことが望ましいでしょう。平時対応策の項目例は以下の通りです。

 

  • 体制構築
  • 感染防止に向けた取り組み
  • 防護服、消毒液等の備品確保
  • 研修、訓練の実施
  • BCPの検証、見直し

 

感染症発生時の連絡系統などの体制を明確にして、日常的に研修や訓練を実施しておきましょう。また、非常時に必要になる備品を確保し、定期的に確認する計画も策定しておく必要があります。

感染疑い者の発生

日常的に感染対策を行っていても、感染疑い者が発生する場合もあるでしょう。感染疑い者が発生した場合の対処方法についてBCPに明記しておきましょう。感染疑い者の発生に関する策定事例は以下のとおりです。

 

  • 毎日、朝と夕方に利用者の体温を測定する
  • 毎日職員は体温を測定し、上司へ報告する
  • 利用前に看護師が体調の聞き取りを実施し、記録に残す

 

全ての介護施設で、日常的に体調不良者がいないか確認する必要があります。日常的に体温を測定し、体調の変化を記録するようにしましょう。また、職員も同様に体調の変化を記録に残しておかなければいけません。万が一、感染疑い者が発生した場合に、早期に対応するためには日常的に体調を記録しておく必要があります。

初動対応

初動対応に関しては、「第一報」と「感染疑い者への対応」の2つの観点から計画を策定します。感染疑い者が発生した場合、誰に、いつ、どのように報告するのか明記しておきま

しょう。

 

  • 第一報は、誰が、いつ、誰に対して、どのように報告するのか
  • 現場から行政機関までのルートを表にして示す
  • 報告する時の文言をプリントアウトして掲示する

 

施設内の連絡経路だけでなく、医療機関や行政機関への報告経路も明確にしてしておく必要があります。実際に第一報をするのは職員なので、職員へ定期的に対応方法に関する情報共有を行っておきましょう。

感染疑い者へ対する対応方法も明記した上で、職員同士て共有しておく必要があります。感染疑い者から感染が拡大しないように留意しつつも、可能な限り継続してサービス提供できる計画を策定しておきましょう。

感染拡大防止体制の確立

感染拡大防止体制の確立に関しては、以下の8つの観点から策定することが望ましいでしょう。

 

  • 保健所との連携
  • 濃厚接触者への対応
  • 職員の確保
  • 防護具、消毒液等の確保
  • 情報共有
  • 居宅介護支援の調整
  • 過重労働・メンタルヘルス対応
  • 情報発信

 

どれだけ対策を行っていても、施設利用者の感染症発症を避けられない場合もあります。重要なことは、感染疑い者が発生した後に感染を拡大させないことです。感染防止対策は非常に重要なパートなので、職員内での情報共有を徹底しておきましょう。

 

BCPを策定するメリット

介護施設がBCPを策定することで以下のメリットを受けられます。

 

  • 利用者と職員の命を守れる
  • 助成金や補助金を受け取れる
  • 税制優遇を受けられる
  • ワクチンを優先接種できる

 

BCPの本来の目的である、利用者や職員の健康を守ることが最も多きなメリットですが、それ以外にも複数のメリットがあります。助成金や補助金については各自治体へ問い合わせたほうがよいでしょう。税制優遇や補助金などは、将来的にBCPが完全義務化した場合には無くなるかもしれません。詳細は各自調べてみましょう。

まとめ

今回はBCPの策定方法について、事例を交えながら解説しました。BCPとは業務継続計画のことで、自然災害や感染症拡大時にも業務を継続するための計画を指します。感染症BCPは、感染症の拡大傾向に合わせて重要な業務を絞る必要があるでしょう。一方、自然災害BCPでは、被災直後に物資が限られた環境でも重要な業務を遂行できる計画が必要です。各施設の業態に応じて工夫して計画を策定する必要があります。事例をもとに計画を策定し、日常的に職員同士で情報を共有しておきましょう。

 

参考:令和2年度 厚生労働省老健局業務継続計画(BCP)作成支援指導者養成研修

 

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人材要件と重度者要件
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2.計算の注意点
3.管理のための用語
4.指摘事例
5.良い事例・悪い事例
6.まとめ

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