この記事では、2024年に向けた介護報酬改定の議論についてご紹介をしてまいります。
介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました!
<目次>
1)2024年介護報酬改定のについて
2)2024年介護報酬改定の改定内容
3)2024年介護報酬改定のスケジュール
4)2024年介護報酬改定に備えて事業所がすべきこと
目次
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2024年は医療保険・障害者総合支援法も改定を迎えるため、医療・福祉にとって大きな転換の年になると言えます。前回、財政制度等審議会(2022年5月25日)『歴史の転換点における財政運営』を基に、2024年の介護報酬について記事を書きました。
そこから、様々な議論があり状況が変化しています。次項より、現在財務省の方で議論されている2024年に向けた内容について解説していきます。本記事は、社会保障審議会介護保険部会(第106回)(令和5年2月27日)を基に執筆しております。
2025年は、団塊の世代が全員75歳以上を迎える年になります。また、高齢者人口がピークを迎える2040年を見通すと、85歳以上人口が急増し、医療・介護双方のニーズを有する高齢者など様々なニーズのある要介護高齢者が増加する一方、生産年齢人口が急減することが見込まれています。さらに、都市部と地方で高齢化の進みが大きく異なるなど、これまで以上に地域の実情に応じて、介護保険事業(支援)計画を定めることが重要となります。
2040年まで介護サービスの利用者が拡大していくと言われているものの、地域ごとの人口動態や介護ニーズの見込み等を細かく見ていくと、2020年からほとんど増加していない地域がある一方で、2倍以上に増加した地域があり、地域によって差がある事が分かっています。その為、地域ごとに施設サービス、居住系サービス、地域密着型サービスをバランス良く組み合わせて整備することが重要となります。
例えば、サービス需要が増加し続ける地域であれば、特養など施設の整備に加え、高齢者向けの住まいも含めた基盤整備、在宅生活を支える地域密着型サービス(小規模多機能・GH・既存資源を活用した複合型サービス等)の充実など、地域の資源を効率的に活用しつつ、整備することが重要となります。
また、サービス需要のピークアウトが見込まれる地域では、在宅生活を支える地域密着型サービスの整備、将来的な機能転換や多機能化を見据えた施設の整備など、地域の実情に応じた対応の検討が重要となります。
年齢とともに、訪問診療の受療率は増加し、特に85歳以上で顕著となります。訪問診療の利用者数は今後も増加し、2025年以降に後期高齢者の割合が9割以上となることが見込まれます。このことから、関係機関が連携し、在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、市区町村が中心となって、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を推進して行く方針です。
具体的には、複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの新設などが検討されています。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護など、機能が類似・重複しているサービスについては、将来的な統合・整理についても検討の必要性を求められています。
介護予防・日常生活支援総合事業(いわゆる、総合事業)について、議論がなされています。平成26年法改正から一定期間が経過しており、総合事業の実施状況等について検証を行いながら、地域における受け皿整備や活性化を図っていくことの見直しが求められています。
従前相当サービスやそれ以外のサービスの事業内容・効果について実態把握・整理を行う必要があります。担い手の確保や前回制度見直しの内容の適切な推進も含め、総合事業を充実化していくための包括的な方策の検討を早急に開始するとともに、自治体と連携しながら、集中的に取り組んでいくように求められています。一方で、総合事業費の上限額については、自治体の状況等を踏まえ、見直しを進める事が適当であるとされており、上限額が超過した際の対応なども厳しくなる見込みです。
つまり、介護保険制度の枠内だけでは無くインフォーマルサービス(民間企業のサービスやボランティアなど)の活用をしていく事で、介護人材不足の緩和や介護給付費の抑制などの狙いがあると予想できます。
医療・介護間での連携を円滑に進めていくためには、情報基盤の整備が重要とされています。医療機関や薬局などが持っている診療情報や薬剤情報と、自治体や介護事業所が持っているケアプランや介護情報などを情報共有できる様なプラットフォームを構築していく事を目指しています。その為には、ICT化の促進やLIFE情報の提供などが重要になる為、それらに関わる加算の創設・見直しが増えてくる事が予想されます。
2040年に向けて、保険者(市町村)は地域ごとの実情を踏まえながら、施策や事業について優先順位を付けながら取り組むことを求められています。そのため、保険者の振り返りや点検、自己評価ができるように、支援ツール等の提供を国はしていく考えです。
実際に、評価される指標は以下の様な項目です。
・PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化
・ケアマネジメントの質の向上
・多職種連携による地域ケア会議の活性化
・介護予防の推進
・介護給付適正化事業の推進
・要介護状態の維持・改善の度合い
評価結果については、得点のみで保険者等における取組の全てを評価すべきでないことにも留意しつつ、個別の評価項目ごとの得点獲得状況について公表することが適当とされており、こういった取り組みの推進ができる事で、保険者(市町村)には財政的インセンティブが定められております。
2040年までニーズが拡大していく介護サービスにおいて、最も重要な課題は介護人材の確保だといっても過言ではないでしょう。その中でも3つの項目について見ていきます。
規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高い結果となっており、介護分野では主として収入面が公定価格によって規定されるという特徴がありますので、費用面の効率化が最も重要です。
このことから、備品の一括購入、請求事務や労務管理など管理部門の共通化、効率的な人員配置といった費用構造の改善、さらにはその実現に資する経営の大規模化・協働化が推奨されています。
また、小規模な法人が他との連携を欠いたまま運営を行うということは、新型コロナウイルスのような新興感染症発生時や災害時において、業務継続も施設内療養の実現もおぼつかなくなってしまう。このため、根本的に介護事業の経営の大規模化・協働化が抜本的に推進されるべきであるとしています。
ここでは、介護分野文書に係る負担軽減に関する専門委員会において、規制改革実施計画(令和4年6月7日閣議決定)「介護分野におけるローカルルール等による手続き負担の軽減」の内容も踏まえ、検討が進められています。以下は一部抜粋した内容です。
・指定申請・報酬請求・実地指導関連の文書は、国が定める標準様式例の使用を原則とし、令和6年度に施行していく
・電子申請・届出システムについては、システムの使用を基本原則化し、令和7年度までに全ての地方公共団体で利用開始するために、介護保険法施行規則にシステムについて明記する等の所要の法令上の措置を行うべきである
・地域による独自ルール(ローカルルール)については、独自ルールの有無、内容を整理し公表を行うべき
医療・障害の情報公表制度では、経営状況の見える化が義務化されており、この目的は経営の大規模化・協働化を推奨していく動きの後押しをしていくためだと議論されています。
以下は、報告を求める経営情報として検討されている項目の一例です。
※報告を求める経営情報の例(検討中)
(費用)
○材料費(介護用品費、医薬品費、施設療養材料費、給食用材料費等)
○給与費(介護職員等の常勤職員給与、非常勤職員給与、退職給与引当金繰入、法定福利費)
○経費(消耗品費、保健衛生費、車両費、光熱水費、修繕費(修繕維持費)等)
○委託費(委託費(給食)等)
○研修費(研修雑費、研究材料費等)
○減価償却費
○徴収不能額
○支払利息
○引当金繰入額
○職種別の給料及び賞与(並びにその人数)等※職種別給与は任意事項(収益)
○介護収益(施設介護料収益、居宅介護料収益、居宅介護支援介護料収益等)
○事業外収益
○本部費
また、介護サービス事業者が財務諸表等の経営に係る情報を定期的に都道府県知事に届け出ることとし、介護サービス情報公表制度などで公表していく方針です。さらに、一人当たりの賃金等についても公表の対象への追加を検討されており、今後の人材確保などの面からも、大きなポイントになってきます。
本記事は、社会保障審議会介護保険部会(第106回)を基に執筆しております。
介護報酬改定については、引き続き詳細をご紹介してまいりますので、準備を怠らないようにしましょう。