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介護業界におけるM&A事情について

2021-11-13

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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本記事では、介護業界の昨今におけるM&Aについてご紹介していきます。

介護業界におけるM&Aについて

近年の動向

国内の M&A 件数が増加をたどっています。この要因には高齢化による事業承継の増加があげられ、これは介護業界においても同様です。

介護ビジネス分野の M&A も徐々に増加してきており、介護業界の M&A は、人手不足や後継者不足の問題の解消という売り手側のニーズと、既存事業の強化や成長産業への新規参入という買い手側のニーズが合致することで増えているとみられています。

M&A によって事業所の経営が安定すれば介護の質の向上も期待できるため、利用者にとっても望ましく、介護保険制度の今後の改革によって、保険適用範囲の見直しや介護事業所の大規模化が進むとみられており、これらの方針は介護市場の成長を後押しするとも考えられています。

また、日本の介護サービスや福祉用具、介護予防等に対する海外からの関心も高く、介護ビジネスは公的保険をベースとしたものではあるものの、成長が期待できる産業であり、引き続き市場の拡大を見込んだ M&A が増加するとされています。

2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2020年の「老人福祉・介護事業」倒産は118件(前年比6.3%増)で、これまで年間最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多記録を更新しました。

新型コロナ感染拡大で利用控えなどが進み、経営が悪化した新型コロナ関連倒産も7件発生しており、人手不足などで経営不振が続く小規模事業者に加え、新型コロナの影響が件数を押し上げた形となっています。

業種別では、「訪問介護事業」が56件(構成比47.4%)と半数近くを占め、深刻なヘルパー不足が影響し、次いで、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」の38件(同32.2%)で、前年から18.7%増加しています。大手企業との利用者や従業員の獲得競争が激しく、倒産増加の一因にもなっているとみられています。

売却をするにあたり大切なこと

売却をするにあたり大切なこと

介護業界において会社の売却を考える際に大切なことは『売却価格』と『売却後のご利用者・従業員』の2点です。

介護業界において経営者が売却を考える場合、多くは『急いでいる』という特徴があげられます。

経営が立ちいかなくなり、安価でも急いで買い手を探すという事が多く、また売却後のご利用者や従業員の『安心』まで手が回らず、結果売却後に従業員が辞めトラブルに発展するといったことも珍しくありません。

企業価値を上げ、ご利用者と従業員の『安心』を確保するべくきちんと計画立てたうえで、落ち着いて売却に臨むことが大切です。

介護会社の企業価値とは

 介護事業を営む会社の企業価値は、売り上げや収益だけにとどまりません。

介護事業を買収する企業の多くは『収益』ではなく、『人材』の確保を期待しています。

人材がいれば、売り上げを上げることは難しくなく、売り上げが上がれば収益を上げることができます。

このことから、人材が良ければ赤字の企業でも買い手は多く存在します。一方で、人材が居ない、居ても使い勝手が悪い、退職が目に見えているような企業であれば、収益があっても買い手がつかないこともあります。

介護会社の企業価値は、優秀な人材と、その優秀な人材があげている売上・収益、運営ノウハウで決まります。

売却を考える際に注意すること

前項でお伝えした通り、介護業界の企業価値は『人材』が多くを占めます。

優秀な人材だからこそ、法令を守った運営ができ、売上・収益を上げることができます。一方で、売却を考えている場合は、この『優秀な人材が不足している』ことが多いのも事実です。

優秀な人材がたくさん所属し、収益が上がっている状態であれば、多くは売却を考えません。

売却を行う際に必ず実施しなければいけないことは、『企業価値を上げる』ために『人材を教育』し、売却先でも従業員が自信をもって業務にあたることができる『教育』を行うことです。

売却先で従業員が自信なく業務にあたっていれば、M&Aは退職をするためのトリガーになり得ます。買い手は人材に対しお金を払うという意識も持っていますから、売却後にすぐ退職があれば、大きなトラブルに発展することは見えています。

売却前に人材教育を実施することは、企業価値を上げ、従業員が安心して次のステップに行くために必要不可欠なことです。

売却前に実施するべき人材教育とは

営業力と法令遵守の知識です。

介護業界は法律の下、ルールを守り運営していくことが求められています。

しかしながら多くの従業員は介護のプロで、法律のプロではありません。このことから、悪意なく法令を違反し、誰も気づかない中で『大きな法律違反』をおかして運営している事業所が多く存在しています。

また、福祉という世界の中では、まだまだ『営業』というスタイルが根付かず、人材が居ても売上が上がらないという事もあります。

売却を考えた際に、仲介業者は『とにかく売上を上げて数字を高く見せる』という事を進めてきますが、これだけでは企業価値は上がりません。

攻めと、守りを兼ね備えて初めて人材が価値を持ち、人材が価値を持つことで企業が価値を持ちます。

最後に

新型コロナウイルスが人材不足の介護業界に大きな打撃をもたらし、M&Aに拍車がかかっています。

介護業界の多くの企業は『赤字だから売れない』『価値なんてないからたたむだけにする』等、M&Aに消極的です。

売却までのプロセスの中でも、しっかりと計画を立て、少しでも企業価値をあげて職員の安心を確保する。

そのために企業価値を『売上を上げるだけで企業価値があがる』と言わない仲介業者を選ぶ、これが大切です。

 

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