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訪問介護事業者の小規模M&Aの失敗事例

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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この記事では、 訪問介護事業者の小規模M&Aの失敗事例についてご紹介をします。

訪問介護のM&Aの失敗事例①

譲渡に踏み切れず貯金を切り崩すこととなった事例

売手事業者:訪問介護事業、地域生活支援事業

事業:訪問介護事業、地域生活支援事業

従業員:23名 売上:300万円(単月) 原価:360万円(単月) 

経常利益:△60万円

売却希望額:ー

措置の時代からこれまで誠実に事業運営を行ってきた事業所。従業員の半数以上が5年以上勤めているベテランと呼ばれる層であったが従業員の高齢化に伴い退職者が続いており、伴って売り上げが落ちてきていた。

『M&A』は『従業員や利用者をお金に換える』行為に思えてしまい、本当であれば馴染みの事業所に利用者と従業員を任せたい(廃業を選びたい)が、日々利用者を優先し、具体的な行動が出来ずどんどんと赤字が増えていった。

赤字だという事を誰にも相談できず、『廃業』も『M&A』も選ぶことができず、自身の貯金を切り崩していたが底を尽きたころ、『廃業を行い利用者と職員は知り合いの会社に頼む』という決断をおこなった。

数か月後、託した知人の会社に従事する職員から『なんの取り決めもされず移動したため、給与は下がり、勤務条件も考慮されなかったためやめた』と聞くこととなってしまった。

 

訪問介護のM&Aの失敗事例②

法令書類整備を怠って価値が下がったケース

事業:訪問介護事業・居宅介護支援事業

従業員:20名 売上:300万円(単月) 原価:260万円(単月) 

経常利益:40万円 負債:300万円

売却希望額:1,000万円

社長兼管理者が長年地域で事業を行ってきた事業所。温和で優しく、自らも稼働に入る等社長自らが現場に入り第一線で支援を行ってきていた。65歳を超えたのを機にリタイアを考え、M&Aを検討。

以下2社から譲受の申し込みを受けた。早々に譲渡を行い、リタイアしたいという希望。

A社:中小企業 デューデリジェンスにて介護保険報酬の資料提出を求める(返還リスクをあらかじめ想定したい)(提示額1000万円)

B社:大手企業 デューデリジェンスは簡易的に実施、詳細の確認もせず購入を希望

話を進めていくうちに『面倒なことを言わない』し『早く買う』からという事を理由に価格の値下げ交渉が始まった。

値下げされるのであればと改めてA社に譲渡をしたい旨仲介業者へ申し出るが、A社が要求する書類も整っていなかったため交渉を断られてしまった。結果売却額は希望価格の半分の500万円まで下がってしまい、仲介料を支払うと、手元には大きな金額は残らなくなってしまった。

 

まとめ

    M&Aの失敗事例を紹介してまいりましたが、会社が買収されたらどうなるか、従業員がどうなるのかは、買収先の経営陣の判断に委ねられるところが大きいと言えます。またどうしても新しい企業文化になじめず、社員間のトラブルや退職者が出てしまうことも考えられます。
    こういった可能性を限りなくゼロ近づけるために介護に精通している仲介会社へ相談することが一つの選択になるかと思います。