訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. 介護保険法
  3. 算定要件
  4. 特定処遇改善加算 実績提出のスケジュールと注意点を解説!

特定処遇改善加算 実績提出のスケジュールと注意点を解説!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

特定処遇改善加算を算定するためには、複数の要件を満たしたうえで処遇改善加算計画書と報告書を提出する必要があります。実績提出までのスケジュールがわからない、という方も多いのではないでしょうか。今回は、特定処遇改善加算の基本的な情報から実績提出までのスケジュールについて解説します。特定処遇改善加算を算定するうえで注意すべき点もいくつかご紹介します。この記事を読むことで、特定処遇改善加算を算定するために必要な条件が理解できるでしょう。今後、特定処遇改善加算を算定しようと考えている方はぜひ最後までお読みください。

介護職員等特定処遇改善加算とは

厚生労働省 介護給付費分科会の資料によると、特定処遇改善加算について以下のように示されています。

 

介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める。

具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運⽤を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について⽉額平均8万円相当の処遇改善を⾏うことを算定根拠拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う。

 

引用:厚生労働省 介護給付費分科会 資料「介護人材の処遇改善について」

 

将来的に超高齢社会を迎える日本において、介護職員のニーズは高まり続けるでしょう。しかし、介護職員の平均賃金はその他の業種よりも低い状況です。介護人材不足を改善するためにも、介護職員の処遇を改善する必要があります。

現在は処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算という3つの処遇改善系の加算が算定可能です。厚生労働省が公開している資料によると令和4年10月時点で75.9%の事業所が特定処遇改善加算を請求しているようです。

 

参考:厚生労働省「介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の請求状況

特定処遇改善加算と処遇改善加算の違い

特定処遇改善加算と処遇改善加算の違いについて解説します。特定処遇改善加算は処遇改善加算を算定している事業所が上乗せで算定できる加算です。どちらも介護職員の処遇を改善する目的ですが、大きく異なるのは対象とする職種です。

処遇改善加算は、介護施設において直接利用者と関わる仕事に従事する全ての職員が対象となります。一方で、特定処遇改善加算は経験と技量に優れた介護職員の処遇を改善するために新設されました。

特定処遇改善加算における制度設計の考え方が「勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額8万円相当の処遇改善を行う」というものでした。そのため、特定処遇改善加算を算定した事業所は経験・技能に応じた配分ルールを定める必要があります。

簡単に説明すると、全ての介護職員への処遇を改善する目的で算定するのが処遇改善加算、経験・知識の豊富な介護福祉士の処遇を改善するための加算が特定処遇改善加算といえるでしょう。

特定処遇改善加算3つの算定要件

特定処遇改善加算を算定するには、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定、職場環境等要件、加算の見える化、という3つの要件を満たす必要があります。各算定要件について解説します。

処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを算定

特定処遇改善加算を算定するには、処遇改善加算を算定する必要があります。処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定するには以下のキャリアパス要件を満たす必要があります。

 

【キャリアパス要件】

  1. 職位、職責、職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備する
  2. 資質向上のための計画を策定し、研修の実施又は研修の機会を設ける
  3. 経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設ける

 

上記のキャリアパス要件について、全てを満たすと処遇改善加算(Ⅰ)、1と2を満たすと処遇改善加算(Ⅱ)、1か2のいずれかを満たすと処遇改善加算(Ⅲ)を算定可能です。処遇改善加算のいずれかを算定していなければ特定処遇改善加算を算定できません。

介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取り組みを行っていること

職場環境要件において、以下の6つの区分において1項目以上の取り組みを行っている必要があります。

 

  • 入職促進に向けた取組
  • 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
  • 両立支援・多様な働き方の推進
  • 腰痛を含む心身の健康管理
  • 生産性の向上のための業務改善の取組
  • やりがい・働きがいの醸成

 

区分ごとに4項目設定されており、自事業所で取り組んでいる取り組みに該当する項目にチェックします。

 

参考:厚労省「介護職員の処遇改善」

ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること

処遇改善加算に基づく取り組みに関してホームページへの掲載等を実施して外部への見える化を実施する必要があります。掲載する内容に関しては、以下の内容を公表することが求められています。

 

  • 処遇改善に関する加算の算定状況
  • 賃金以外の処遇改善に関する具体的な取り組み内容

 

掲載先に関しては、事業所のホームページや介護サービス情報公表制度を活用することが推奨されています。

特定処遇改善加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

特定処遇改善加算にも2種類の加算があります。特定処遇改善加算(Ⅰ)と特定処遇改善加算(Ⅱ)の違いは、職員の配置基準です。より専門性の高い介護職員を配置している事業所は特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定、それ以外の事業所は特定処遇改善加算(Ⅱ)を算定します。特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定するために必要な加算は以下のとおりです。

 

  • 訪問介護……特定事業所加算ⅠまたⅡ
  • 特定施設……サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ、もしくは入居継続支援加算
  • 特養……サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ、もしくは日常生活継続支援加算
  • 療養通所介護……サービス提供体制強化加算Ⅲ
  • その他……サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ

 

多くの施設でサービス提供体制加算が算定要件になっていますが、訪問介護だけは特定事業所加算が算定要件になっているので注意しましょう。

処遇改善加算と特定処遇改善加算の計算方法

処遇改善加算と特定処遇改善加算の加算率は事業所の種類によって異なります。厚労省の資料をもとに訪問介護の算定率を以下に示します。

 

  • 処遇改善加算(Ⅰ)……13.7%
  • 処遇改善加算(Ⅱ)……10.0%
  • 処遇改善加算(Ⅲ)……5.5%
  • 特定処遇改善加算(Ⅰ)……6.3%
  • 特定処遇改善加算(Ⅱ)……4.2%

 

仮に、訪問介護で処遇改善加算(Ⅰ)と特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定した場合、2つを合算した20%が算定率となります。

 

参考:厚労省「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び 介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順 及び様式例の提示について」

特定処遇改善加算の対象職員と配分ルール

特定処遇改善加算の算定によって得た報酬は配分ルールに従って3分類された介護職員に配分されます。特定処遇改善加算の配分ルールは以下のとおりです。

 

  • ( A ) 経験・技能のある介護職員
  •  ( B ) 他の介護職員
  •  ( C ) その他の職員

 

Aの職員は、基本的に勤続10年以上の介護福祉士が対象となりますが、詳細な条件設定は法人が独自に決定しても問題ありません。上記の3分類された職員に対する配分方法は2つのルールが定められています。

 

  1. 平均賃上げ額はB(その他の介護職員)はA(経験、技能のある介護職員)より小さくなくてはいけない
  2. 「A(経験・技能のある介護職員)」のうち1人以上は、月額8万円の賃上げ、または年収440万円までの賃金増が必要

 

詳細な配分割合は各法人が独自に決められますが、経験・技能のある介護職員へ多めに配分する必要があります。

介護職員のキャリアパス整備と報告書の提出

処遇改善加算や特定処遇改善加算を算定している事業所は1年間で請求した単位数と、職員へ配分した賃金の価格を各都道府県へ報告しなければいけません。

介護職員処遇改善加算実績報告書は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日までに提出が必要です。 

仮に、年度途中で事業を廃止した事業所は、廃止後も最終の加算の支払いを受けた月の翌々月の末日までに実績報告書の提出が必要です。

処遇改善加算で算定した報酬は全て介護職員へ還元しなければいけません。介護職員へ還元されていることを報告書で示さなければ、返還処分となる可能性もあるので注意しましょう。

 

特定処遇改善加算の実績提出のスケジュール

特定処遇改善加算を算定するには、決められたタイミングで処遇改善加算計画書と実績報告書を提出する必要があります。2つの書類を提出するスケジュールについて変更される場合もあるため、書類を提出するタイミングは各都道府県へ問い合わせましょう。一般的に4月から新規取得する場合のスケジュール例は以下のとおりです。

 

  1. 処遇改善加算計画書の作成(1月)
  2. 処遇改善加算計画書の提出(2月)
  3. 職員への周知(4月)
  4. 実績報告の作成(翌年4月〜6月)
  5. 実績報告書の提出(翌年7月)

 

介護報酬改定の状況に応じて詳細なスケジュールが変更される場合もあるので、最新の情報を確認しておくとよいでしょう。

特定処遇改善加算の注意点

特定処遇改善加算を算定した事業所は、キャリアパス制度、職場環境、情報の見える化などの条件を満たす必要がありますが、それらの要件を満たすために必要な費用は賃金改善に要する費用として認められないので注意しましょう。

また、特定処遇改善加算を算定した事業所において「月額8万円の改善または年440万円以上」となる介護職員が不在の場合は、その理由も記載しなければいけません。

特定処遇改善加算のQ&A

特定処遇改善加算に関する質問についていくつか解説します。

特定処遇改善加算は、勤続10 年以上の介護福祉士がいなければ取得できないか

勤続10年以上の介護福祉士でなくても算定可能です。特定処遇改善加算を配分するべき職員のうち「経験・技能のある介護職員」の目安として、勤続10年以上の介護福祉士とされています。ただし、詳細な条件は各法人で定めても問題ありません。介護福祉士を持っていない、勤続10年以上ではない、といった介護職員でも「経験と技能ある介護職員」と法人が決めれば支給対象となります。

情報公表・ホームページ以外での見える化要件を満たす方法は?

特定処遇改善加算を算定するために必要な「情報の見える化」に関して、基本的には、情報公表システムとホームページという2つの媒体への掲載が望ましいとされています。ただし、諸事情によりインターネット上での公表が難しい場合は、チラシやパンフレットでの公開も可能です。

特定処遇改善加算でいう「賃金」とは?

特定処遇改善加算の要件として記載されている「月額8万円の処遇改善」については、法定福利費等の増加分も含めて判断した金額を指します。

一方で「処遇改善後の賃金が440 万円以上」という要件に関しては、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含まない金額を指します。

 

まとめ

今回は特定処遇改善加算に関する情報をまとめつつ、実績提出のスケジュールと注意点について紹介しました。特定処遇改善加算とは処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定している事業所が、経験と技能のある介護職員に対して処遇を改善するために算定する加算です。特定処遇改善加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類の加算があり、サービス提供体制加算など介護福祉士の配置基準に応じてどちらかの特定処遇改善加算を算定可能です。

特定処遇改善加算を算定するには、処遇改善加算計画書と実績報告書を提出する必要があります。一般的には2月に計画書を提出し、翌年7月に報告書を提出しますが、介護報酬改定などの状況に応じてスケジュールが変更する場合もあるため、詳細なスケジュールは各都道府県の情報を確認しましょう。

 

参考文献:厚生労働省 介護給付費分科会 資料「介護人材の処遇改善について」

参考文献:厚生労働省「介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の請求状況

参考文献:厚労省「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び 介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順 及び様式例の提示について」

 

特定事業所加算お役立ち情報
訪問介護における加算・減算と要件
紹介画像


訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについてまとめました。
<目次>
1.加算とは
2.訪問介護における加算・減算一覧
3.各種要件と解説
4.優先的に取得すべき加算
5.まとめ

お役立ち資料:特定処遇改善加算の取得を目指す方へ

介護事業所向けに、特定処遇改善加算の取得から運用までを詳しくまとめました。
特定処遇改善加算の取得を考えている方や、すでに取得しているものの運用に不安を感じる方は、ぜひご一読ください。
詳しく見る