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訪問介護事業の買収時における注意点

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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本記事では
訪問介護事業のM&A、買収時における注意点をご紹介をしてまいります。

介護事業の買収の際に見落としがちなリスク

介護事業買収の際に見落としがちなリスク

通常のデューデリジェンスでは、決算書をはじめ経理、人事、労務周り、不動産や紛争関係等の書類を確認しますが、介護事業を買収する際は追加で介護保険法及び厚生省令に則った業務運用を行っているかを確認する必要があります。

実際の業務運用書類を確認しなければ、潜在リスクやそのリスク額を把握する事が出来ず分析も出来ません。

少なくとも直近3年間の業務員用書類を確認し、どのようなリスクで、いくらの返還額が想定されるのかを把握しなければ、買収後に大きな損害を受ける可能性も潜んでいます。

潜むリスクの具体例

介護事業を運営する企業の中小企業では、介護業務以外に手を避ける人材が配置できず、コンプライアンスを遵守して業務運用を行えている事業所は稀です。

教育も儘ならない状態で法令の知識を持つ人材はおらず、日々の作業をこなすためのサポートとして専門知識のない事務員を配置しているのが現状です。

この状態で売り上げをあげてきた企業は、その売上すべてが返還となり得るリスクを抱えていると言っても過言ではありません。 

■処分事例

省令上必要と定められた書類を、作成する事を知らずに介護サービスのみ提供していた

⇒作成していない期間から現在まですべて返還

 不正なサービスを、不正と知らずによかれと思って提供していた

⇒不正サービス部分の売上額すべて返還

絶対に買ってはいけないのはこんな企業

運営基準

絶対に買ってはいけないのはこんな企業

M&Aを行う際は、仲介企業が仲介を行う事が多いです。

この仲介業者は介護企業に関する知識があるわけではありませんので、『一般のM&Aの際に行われるデューデリジェンスの書類』を整えるお手伝いは出来ますが、介護に特化した書類の準備は出来ません。

介護に特化した業務運用書類が準備出来ない状態であれば、提示されている売上すべてが返還の対象となり得る状態ですので、このような企業を買収する事には大きなリスクを伴います。

また、このような状態で働いてきた職員は、買収先でコンプライアンスを守る業務を指示された場合に大きなギャップを感じ、退職へとつながる可能性が大いにあります。

介護事業の買収目的の大部分を占める『人材の確保』にも、大きな影響を及ぼすことも忘れてはいけません。

絶対買ってはいけない企業の具体例

①介護に特化した業務運営の書類が出せない

訪問介護事業を運営するにあたっては、守るべきルールが省令で定められています。

これらの書類が出せない場合は、『違反した運営を行っている』という状況です。

指定の取り消し等重い処分を受けるリスクが有りますので、買収はこれらを覚悟して行わなければいけません。

②人材に関する書類が出せない

訪問介護事業には人員基準と呼ばれる人材配置の基準が有ります。

職責ごとにその保有すべき資格が定められており、これを持たない従業員が介護サービスを実施しても介護報酬を得る事は出来ません。

しかしながら、資格を保有しないで介護サービスの提供を行い、報酬を得ているケースが有りますので、資格に関する書類が適正かを確認する必要があります。

③売上が直近で上がっている

売上が直近で上がっている場合、仲介会社が支援した結果である可能性が高いです。

『売り上げをあげることが出来る人材』を、買収の副産物として考えている様であれば、ここには注意が必要です。

さいごに

訪問介護事業では、人材の高齢化が問題視されていますが、同じように中小企業の経営者の高齢化も進んできており、売却を考える経営者が多くなってきています。

中小企業のほとんどが十分な教育やノウハウなく事業をスタートさせ、売り上げを立てる事に注力してきています。

現在までそのような処分が下っていなくても、ここまで幸い処分が下る様な出来事がなかっただけの可能性もあり、介護事業の買収には専門的な知識を持ち、介護に特化したデューデリを実施する必要があります。