訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. 障害者総合支援法
  3. その他
  4. 新型コロナウイルスが5類へ!訪問介護における注意点とは?

新型コロナウイルスが5類へ!訪問介護における注意点とは?

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

令和5年5月から新型コロナウイルスが5類感染症へ移行します。一般的な感染症対策のあり方が大きく変化しますが、訪問介護事業所が取るべき感染症対策はどのように変化するのでしょうか。この記事では、5類感染症に関する基本的な情報、高齢者への影響、訪問介護における移行後の注意点などについて解説します。この記事を読むことで、これから訪問介護事業所が取るべき対策がわかります。ぜひ最後までお読みください。



5類感染症とは

感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によって定められている感染症5類型のうちのひとつです。

感染症法は1999年に施行された法律です。感染症法の第一章 総則(目的)第一条には以下のように記載されています。

 

この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

 

引用:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第一章 総則(目的)第一条

 

感染症法は感染症患者に対して適切な医療を提供し、まん延を防止することを目的としています。感染症法の中で感染症の分類は以下の通りに分けられています。

 

  • 1類感染症
  • 2類感染症
  • 3類感染症
  • 4類感染症
  • 5類感染症
  • 新型インフルエンザ等感染症
  • 指定感染症
  • 新感染症(症例積み重ね前/症例積み重ね後)

 

参考:厚生労働省 健康局結核感染症課「感染症の範囲及び類型について」

 

令和5年5月8日以降、新型コロナウイルスの分類が新型インフルエンザ等感染症から季節性インフルエンザなどと同じ5類感染症へ移行しました。

新型インフルエンザ等感染症の分類では、急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると判断され、外出自粛等の対応を要請されます。しかし、五類感染症になると、国民や医療関係者への情報提供を要する、といった対策となるため、新型コロナウイルス罹患患者への対応が大きく異なるでしょう。

新型コロナウイルス5類移行の経緯

新型コロナウイルスの分類が5類へ移行した経緯について解説します。厚生労働大臣の公表文書によると、5類感染症移行の理由として以下の内容が記載されていました。

 

  • 国内では、いずれもオミクロン株の亜系統であるXBB.1.5系統やXBB.1.9系統の占める割合が増加する等の動きはあるものの、これらの変異株について重症度が上昇していることを示す知見は国内外で確認されていないこと。
  • 感染状況は足元で増加傾向となっているが、水準は昨年夏の感染拡大前を下回る状況が継続し、病床使用率や重症病床使用率は全国的に低い水準にあること。

 

引用:令和5年4月27日 厚生労働大臣 公表文書

 

内容を要約すると、新型コロナウイルス罹患患者の重症度が上昇している様子もなく、昨年よりも感染状況が落ち着いてきていることが理由であるといえます。

ただし、参考資料「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけの変更について」には、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなど科学的な前提が異なる状況になれば対応を見直す、という記載もあります。今後の動向によっては、感染症分類が再度変更する可能性もあるでしょう。

 

新型コロナウイルス5類移行後の対応はどうなるのか

新型コロナウイルスが5類感染症へ移行した後の対応について、厚生労働大臣の公表文書に具体的な内容が示されています。内容を確認しつつ、今後の生活について考察します。

発生動向の把握

新型コロナウイルスの感染者数などの動向を把握する方法として、これまでは医療機関や自治体から報告を受ける「全数把握」が行われてきました。5類移行後は、全国約5,000の医療機関からのデータを1週間に1回報告してもらう「定点把握」に移行します。これまでは毎日のように感染者数を報告していた状況から、1週間ごとにデータを集めて集計結果をホームページ上に公表する方法に変更されます。

医療提供体制

これまで新型コロナウイルス感染者に対応できる医療機関は、入院措置を原則とした行政の関与を前提とする医療機関に限定されていました。5類移行後は幅広い医療機関による対応が可能となる予定です。具体的な移行計画に関しては、各都道府県が策定し段階的に実施されていく予定です。詳細な情報を知りたい場合は、各都道府県の窓口へ問い合わせる必要があります。将来的には、地域の高齢者もかかりつけ医のもとで新型コロナウイルスの治療ができるようになる可能性が高いでしょう。

新型コロナウイルス感染症の患者等への対応

新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴い、入院措置・勧告、外出自粛要請といった私権制限がなくなります。これにより、新型コロナウイルスに感染しても自由に行動できるようになるでしょう。一方で、医療費の一部自己負担額が生じるため、感染症分類の変更によって新型コロナウイルス患者の自己負担額が増加します。急激な負担増加を避けるため、一定の公費支援について期限を区切って継続する予定です。

新型コロナウイルス感染後の外出自粛に関しては、発症後5日間を参考に個人で判断することになります。外出自粛は個人の判断に任されていますが、高齢者など発症リスクの高い方が多い場所への外出は避けたほうがよいでしょう。

基本的な感染対策

マスク着用など、基本的な感染対策は個人の判断に委ねられます。マスクを着用する人は減少し、新型コロナウイルスまん延以前の生活が徐々に戻ってくるでしょう。今後、マスク着用をお願いする店舗や飲食店も減っていきます。国は引き続き新型コロナウイルスに関する情報提供は続けていくので、状況を確認しつつ感染対策を実施していきましょう。

特に高齢の方は感染リスクも高いので、若年層よりも感染対策に注意する必要があります。

新型コロナワクチン

新型コロナワクチンについては、引き続き自己負担なく接種を実施する予定です。追加接種対象者は9月を目途に接種を開始する予定ですが、高齢者など重症化リスクの高い方等は5月8日以降、順次接種を実施します。令和6年3月まで新型コロナウイルスワクチンの接種期限が延長されていますが、今後いつまで公費負担で接種してくれるかわかりません。ワクチン接種をお考えの方は、早めに接種しておくとよいでしょう。

 

新型コロナウイルス5類移行で高齢者の生活はどうなるのか

新型コロナウイルスの5類移行によって、新型コロナウイルスへ感染した後の対応が変化します。

以前は新型コロナウイルスに感染した場合、かかりつけの医療機関で診てもらえず、大病院で受診していました。5類移行後は、かかりつけ医に対応してもらえるようになります。また、感染後の行動制限もなくなるので、独居高齢者も生活しやすくなるでしょう。これまでは、新型コロナウイルスに感染すると買い物にも出かけられず、医療・介護サービスも利用できない状況でした。今後は、独居高齢者が万が一感染した場合でも、自宅で生活しやすくなるでしょう。

5類移行後も高齢者が取るべき感染対策が大きく変化することはありません。統計上は新型コロナウイルス感染者数が低下しており、重症化リスクも下がってきているといえますが、新型コロナウイルスのリスクがなくなったわけではありません。特に基礎疾患を持っている高齢者は重症化リスクが高いため、5類移行後も引き続き感染対策を継続する必要があるでしょう。

高齢者施設などでのマスク着用や感染対策はどうなるのか

高齢者施設などでの感染対策について、厚生労働省老健局が「介護保険最新情報 高齢者施設等における感染対策等についてVol.1146」の中で発表しています。大きく分けてマスク着用、換気、面会に関する内容が記載されていました。内容について解説します。

マスクの着用

新型コロナウイルス5類移行後は、行政が一律にマスク着用を求めるのではなく、個人の判断に委ねることを基本としています。一方で、重症化リスクの高い方が多く生活する高齢者施設等への訪問時にはマスク着用を推奨しています。

新型コロナウイルス5類移行後の高齢者施設において、厚生労働省もマスク着用を推奨しているため、基本的にはマスク着用が必要な状況であることに変わりありません。

ただし、「 勤務中でも従業員にマスクの着用が必要ないと考えられる具体的な場面については各高齢者施設等の管理者等が適宜判断できる」と記載されています。基本的には職員も利用者もマスクを着用しつつ、各施設単位で独自にマスクに関するルールを決めていく必要がありそうです。

訪問介護に関しては、訪問するスタッフのマスク着用はもちろんですが、可能であれば利用者にもマスク着用をお願いしたほうが良いでしょう。ただし、一般的にはマスク着用が個人の判断に委ねられているので、マスク着用を拒否する利用者も多くなる可能性があります。その場合は、できる限り換気をするなどの対策をしましょう。

換気(エアロゾル対策)

換気に関しては、特に変更点はありません。これまでと変わらず換気を行っていくことが望ましいでしょう。新型コロナウイルスに関してだけでなく、その他の感染症を防ぐためにも換気は必要です。

訪問介護に関しても、基本的な対応はこれまでと変わりません。訪問中はできる限り換気を心がけましょう。

面会

家族等と面会する機会が減少することで心身の健康へ悪影響が懸念されます。そのため、高齢者施設等での面会の再開・推進を図ることは重要です。介護保険施設の運営基準においても「家族と面会の機会を確保するように努めなければいけない」とされています。今後、新型コロナウイルまん延以前のように、家族との面会ができるように努めていく必要があります。

面会制限は入所施設に関する問題なので、訪問介護に直接影響することはないかもしれません。ただし、今後行動制限が解除されることで、利用者が多くの方と面会できるようになることが予測されます。利用者が面会を繰り返す中で、新型コロナウイルスに感染する可能性が高くなることは理解しておきましょう。

5類移行後の訪問介護における新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルスが5類感染症へ移行した後も、基本的な感染対策は必要です。ただし、今後はBCP(教務継続計画)の策定が必要とされています。施設ごとにBCPを作成し、計画に沿った対策を実施していきましょう。

基本的な感染対策

基本的な感染対策は継続しなければいけません。5類感染症へ移行したといっても、基礎疾患を持つ高齢者の重症化リスクは高いままです。マスク着用、換気、手指消毒などの基本的な感染対策はこれまでと変わらず継続しましょう。

BCPの作成は必要

BCPとは「業務継続計画」のことで、すべての介護事業者が2024年3月末日までに策定することを義務づけられています。

BCPは、自然災害や感染症が発生した状況でも「重要な事業を中断させない、もしくは可能な限り早い時間で復旧させる」ことを目的として体制を整備するための計画書です。

自然災害発生時と、感染症発生時に対して計画を策定しますが、感染症に関しては主に以下の状況下での対策を立てる必要があります。

 

  • 平時対応
  • 感染疑い者の発生
  • 初動対応
  • 検査
  • 感染拡大防止体制の確立

 

参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

訪問介護における注意点

新型コロナウイルスの5類感染症移行後に訪問介護が注意すべきポイントは以下の2つです。

 

  • マスク着用など基本的な感染症対策を拒否する可能性
  • BCPに従って対策を取れるか

 

5類感染症へ移行したことで、基本的な感染対策に協力してもらえない利用者が多くなることも想定されます。利用者に対してどこまでマスク着用や消毒などの協力を依頼するのか、各施設で話し合っておく必要があるでしょう。

施設ごとにBCPを作成後、計画どおりに現場で実践できるようにしておく必要があります。BCPに関する講習会を開催するなど、事業所内の現場スタッフと情報を共有しておきましょう。

まとめ

今回は新型コロナウイルスが5類感染症へ移行したことによる訪問介護への影響について解説しました。

5類感染症へ移行することで、基本的な感染症対策や医療提供体制が緩和されます。一般的には、今後マスクを着用する機会が減っていくでしょう。しかし、介護施設に関しては基本的な感染症対策は必要です。これまでと変わらず、マスク着用、換気などを実施することが推奨されています。

訪問介護に関しても、基本的な感染対策はこれまでと変わりません。ただし、どこまで利用者に感染症対策に協力してもらうか、ということを考慮しつつBCPを策定し、計画に沿った対処ができるように準備するとよいでしょう。

 

【参考】

 

平成26年3月厚生労働省健康局結核感染症課「感染症の範囲及び類型について」

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第一章 総則(目的)第一条

厚生労働省 健康局結核感染症課「感染症の範囲及び類型について」

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 感染症法上の位置づけの変更について」

令和5年4月27日 厚生労働大臣 公表文書

厚生労働省「介護保険最新情報 高齢者施設等における感染対策等についてVol.1146

介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

 

訪問介護事業所向けお役立ち情報
訪問介護事業所の人員・設備基準完全理解マニュアル
紹介画像


訪問介護事業所向けに、訪問介護事業所の人員・設備基準についてまとめました!
<目次>
1)訪問介護事業所の人員・設備基準とは
2)訪問介護事業所の人員基準
3)訪問介護事業所の設備基準
3)まとめ