この記事では、障害者総合支援法における2024年の報酬改定に向けて現在議論されていることをご紹介してまいります。
障害者総合支援法における報酬改定は、2024年に控えています。
2024年には、医療・介護報酬の改定も予定されており、医療・福祉にとって大きな改定となることが予想されます。
障害福祉サービス等の予算額は、社会保障関係費全体の伸びを上回る水準で増加しており、利用者数や事業所数とともに、直近 10 年間で約2倍となっています。
今後も需要の伸びが見込まれる中で、障害者等が真に必要なサービスを効率的かつ重点的に提供していくためには、利用者が急増している要因分析や提供実態の把握を行った上で、提供されるサービスの質とともに、制度の持続可能性を確保していくことが重要であるとするのが次回報酬改定の大本となっています。
また、2021年の報酬改定で『引き続き検討していく』こととなった事項についても改定が入りやすいことに注意が必要です。
財政制度等審議会(2022年5月25日)『歴史の転換点における財政運営』
障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて中間整理令和3年12月16日
情報公表制度において、全ての法人に「事業所等の財務状況」の都道府県への報告及び「障害福祉サービス等情報検索」における公表が法令上義務化がされている一方で、「障害福祉サービス等情報検索」での財務状況の公表が低調であるため、法令に従い、財務状況を公表するように徹底すべきであるという議論がされています。
障害者の地域生活を支えるグループホームについては、入所施設や精神科病院等からの地域移行を推進するために整備が進められてきました。
障害者が2024年度に向けて希望する地域生活の実現を推進する観点から、グループホーム利用者の中に一人暮らしやパートナーとの同居等を希望する者が存在することも踏まえ、グループホームにおいて地域生活の希望の実現に向けた支援を推進していく制度について『新たなサービスの類型の創設』等を検討していく必要があるとしています。
居住支援全体の中における障害者支援施設とグループホームそれぞれの役割や機能を踏まえ、安心できる居住環境を提供する観点から、障害者支援施設としての対応の在り方や、地域生活支援拠点等のコーディネーター、相談支援事業者、障害福祉サービス事業者、地域住民との連携の強化していく必要がある。
障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、 地域の実情に応じて整備することにより、障害者が地域で安心して暮らせる支援体制を構築することを目的とし緊急時における相談や短期入所等の活用を可能とすることにより、地域生活の安心感を担保する機能や、体験の機会の場の提供を通じて、入所施設や病院、親元から離れてグループホームで暮らすことや、一人暮らし等の地域生活への移行をしやすくする機能を整備する必要がある。
利用者数、事業所数、相談支援専門員数とも増加傾向にある中で、相談支援専門員はその人員の不足や更なる資質の向上を求める声があるほか、地域生活の支援を推進するためには各相談支援事業のなお一層の充実強化を求める声があります。
基幹相談支援センターの設置は増加傾向にあるものの、必要な人材育成や支援者をサポートするための取組が地域内で実施されていないことがあるため、形骸化を防ぐ取り組みを行う必要があるとしています。
また、相談支援専門員と医療・他法関係者との連携を強化していくことがご利用者を支える肝になることから、情報連携についても強化していくことが議論されていく予定です。
障害者の一人暮らし等の地域生活を支援する自立生活援助と地域定着支援の制度の在り方について、さらに手厚い訪問が必要な者への支援や、ICTを活用した安否確認や緊急通報の活用による効果的・効率的な支援など効率化を図りながら地域の実情に応じた支援をしていく必要があるとしています。
障害者の希望や能力に沿った就労につなげるため、雇用施策と福祉施策の連携強化により、就労支援の充実を図るとともに、教育や医療(かかりつけ医、産業医等)などの関係機関との連携の在り方や、就労系障害福祉サービスの利用を希望する障害者へのアセスメント(ニーズの把握と就労能力や適性の評価)の実施の制度化を検討し、就労支援における障害者総合支援法制度そのものを見直すとともに、就労について支援できる担い手の育成も行っていく方向で議論が進んでいくものと思われます。
相談支援を担う職員の教育・研修の仕組みや財源の確保、 精神医療の提供体制について、いわゆる「かかりつけ精神科医」機能の役割を含むケースマネジメントの担い手や、他科の「かかりつけ医」との連携の在り方、医療と福祉の緊密な連携のもと精神障害者の地域移行をより一層進めるため、精
神科医療機関の精神保健福祉士等と地域生活支援拠点等のコーディネーターとの連携の強化などを図っていくことで議論が進んでいます。
自己評価や利用者評価について、各サービスの特性も踏まえつつ、具体的な評価項目について整理した上で、他のサービスにも展開していくことや、専門的な観点も含めた第三者による外部評価の導入について、検討することとされています。
今後の障害福祉サービス等報酬の改定の検討等に当たっては、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの3つの視点を持って、障害福祉サービス等の目的・特性も踏まえつつ、プロセスの視点に基づく報酬
の評価をより充実させつつ、併せてアウトカムの視点に基づく報酬の評価についても、当該評価手法が適切なサービスについては、その導入について研究・検討していくこととされています。
当該データ基盤の整備に当たっては、国の調査分析、市町村による補装具を含む自立支援給付等のデータ提供、第三者への提供等に係る仕組みを設けるため、介護保険下で運用されている『LIFE』同様、障害者総合支援法でもデータの収集を行っていく考え。
障害福祉サービス等の利用者や事業所の増加に伴い、事業所の指導監督等の業務が増加し、十分な指導監督が実施できていないため、都道府県等に対する支援を検討するとしています。
障害者本人のQOL向上への活用や障害福祉現場の業務効率化及び職員の負担軽減をさらに推進していく必要があることを踏まえ、調査研究等の実施を通じて、障害福祉分野におけるICT活用やロボット導入に関する実証データの収集に努めながら、 特に、各種記録や計画の作成、移乗介護等の介護業務、相談支援、自立生活援助等の地域生活を支援する業務等において、障害特性に応じたICT活用やロボット導入により、業務効率化や職員の業務負担軽減をさらに推進するその方策等について検討が進んでいきます。
報酬改定による処遇改善や、返済免除条件付きの就職支援金貸付事業を実施しているが、必要な財源を確保しつつ、こうした取組を一層推進していくこととされています。
障害者総合支援法においては、ご利用者1人1人にとって自立支援や社会参加のために必要な支援を見極めるため、データの収集をおこないながら必要な給付を確保していくことが強く言われています。
介護保険法における報酬改定では、2024年に向けて財務省のほうで細かく議論がされていますが、一方で障害者総合支援法は介護にくらべ詳細な議論はされていません。
現在と同様のルールのもと、同様に報酬が支払われるといった事ではなく、方向性は介護と同じであり『必要なサービスに対して必要なだけ支払われる』ということを念頭に準備を進めていかなければいけません。