障害者・精神保健に対する支援はさまざまありますが、全ての方が受けることはできません。
今回は、障害者・精神保健に対する支援を受けるための対象者だけでなく、実際にどのようなサービスを受けることができるのかまで紹介します。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
国内において、障害に関するさまざまな法律があり、その法律ごとに「障害者」の定義が異なります。
さまざまな法律の中でも、障害者の自立および社会参加の支援のための施策を総合的かつ計画的に推進し、障害者の福祉を増進することを目的とした「障害者基本法」では下記のように定義しています。
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
それ以外でも、障害のある方が日常生活や社会生活を営む上で必要な障害福祉サービスなどが定められた法律である「障害者総合支援法」では下記のように定義しています。
参考:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
多くはこの2つの法律を基準として障害者を定義しています。
身体障害者福祉法では、身体障害者を「身体上の障害がある18歳以上の人で、身体障害者手帳の交付を受けた人」と定義しており大きく下記の5つに分かれます。
知的機能の障害が発達期である18歳までにおおむねあらわれて、何らかの特別の支援を必要とする状態で、知的能力を表すIQ(知的指数)と日常生活への適応能力を総合的に判断して下記4つに重症度が分けられます。
重症度 | IQ(知能指数) |
軽度 | 約50~70 |
中等度 | 約36~49 |
重度 | 約20~35 |
最重度 | 約19以下 |
上記の内容でおおまかな評価は可能ですが、IQが70以下でも適応能力が高ければ、知的障害ではないと判断される場合もあります。
なお、適応能力は下記3つの領域における能力で評価します。
感情や行動に著しいかたよりが見られ日常生活や社会参加が困難となっている状態で、下記のような種類があります。
「難病の患者に対する医療等に関する法律」によると、発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものを難病と定義しています。
なお、2021年11月時点で難病は366疾病あります。。
その他にも、難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる「指定難病」もあり、「難病」の定義に加えて下記の定義も合わせて必要です。
この指定難病は、現時点で338疾患あります。
参考:厚生労働省「指定難病」
上記のような症状があり、何らかの障害によって自立が困難・日常生活に支援を必要とする方に対して、自治体から交付される手帳のことです。
障害者手帳は、下記のように3種類に分かれます。
種類 | 身体障害者手帳 | 精神障害者保健福祉手帳 | 療育手帳 |
根拠 | 身体障害者福祉法 | 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 | 療育手帳制度について |
交付主体 | ・都道府県知事 ・指定都市の市長 ・中核市の市長 | ・都道府県知事 ・指定都市の市長 | ・都道府県知事 ・指定都市の市長 ・児童相談所を設置する中核市の市長 |
障害分類 | ・視覚障害 ・聴覚、平衡機能障害 ・音声、言語、そしゃく障害 ・肢体不自由(上肢不自由、下枝不自由、体幹機能障害、脳原性運動機能障害) ・心臓機能障害 ・じん臓機能障害 ・呼吸器機能障害 ・ぼうこう、直腸機能障害 ・小腸機能障害 ・HIV免疫機能障害 ・肝臓機能障害 | ・知的障害 | ・統合失調症 ・気分(感情)障害 ・非定型精神病 ・てんかん ・中毒精神病 ・器質性精神障害(高次脳機能障害を含む) ・発達障害 ・その他の精神疾患 |
所持者数 | 4,910,098人(令和3年度福祉行政報告例) | 1,213,063人(令和3年度福祉行政報告例) | 1,263,460人(令和3年度福祉行政報告例) |
参考:厚生労働省「障害者手帳」
身体障害者福祉法に基づき、身体上の障害がある18歳以上の方が取得できる手帳で、身体障害のある方の自立や社会活動の参加を促し、支援を目的としています。
申請できるのは、「対象の疾患だと診断される」かつ「その疾患による障害が一定以上あり、永続する(障害が固定され、身体機能が健康な状態まで回復する可能性が極めて低い状態)」を条件として設けています。
また、「指定難病」の場合でも、疾患の症状と医師の診断により障害者手帳の取得ができたり、障害者総合支援法に定める福祉サービスを受けることができたりする場合があります。
下記のように申請します。
また、本人による申請が困難な場合は代理として家族や医療機関の職員による申請も可能となる場合があります。
原則的に更新はありませんが、障害の状態が軽減されるなどの予想される場合は、再認定を行う場合もあります。また、それ以外においても下記の場面で手続きが必要です。
これらの手続きは各市区町村の障害福祉課などの窓口で行えます。
1級から7級までの等級があり、1級に近づくほど障害の程度が重く、1級から6級までの障害のある方が身体障害者手帳の交付対象です。7級の障害単体では交付の対象とはなりませんが、7級の障害が2つ以上ある場合や、7級のほかに6級以上の障害がある場合も交付の対象です。
この等級に関しては、都道府県知事によって指定された指定医によって判定されます。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づき、精神障害のある方の自立や社会活動の参加促進と支援を目的とした手帳で、厚生労働省では下記のように説明しています。
上記のように、精神疾患によって長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方を交付対象としています。また、発達障害に関しても精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
参考:厚生労働省「障害者手帳」
下記のように申請します。
症状の軽減、重症化が比較的短期間に見られるため、有効期限は2年間のため更新が必要で、有効期限の3ヵ月前から行えます。
下記のように1〜3級に分けられています。
階級 | 症状 |
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスは下記です。
上記の中は、障害種別・等級・在住の自治体・所得状況などによって内容は変わるため注意が必要です。
その中でも今回は主要な内容をより詳しく説明します。
障害者手帳取得者に対して医療費負担が軽減されます。
例えば大阪府内の市町村に住所があり、下記の症状に該当する方は、医療機関での医療費の自己負担が原則1割です。
障害者手帳を持っている本人や、家計を同じにしている配偶者・扶養親族に障害者手帳を持っている方がいる場合は、本人やその家族の税負担を軽減するため下記のように一定額が所得から控除されます。
控除額 | 所得額 | 住民税 |
障害者*1 | 270,000円 | 260,000円 |
特別障害者*2 | 400,000円 | 300,000円 |
同居特別障害者*3 | 750,000円 | 530,000円 |
*1知的障害、身体・精神障害者手帳を所持している方
*2重度の知的障害と判定された方、身体障害1級又は2級・精神障害1級の方
*3同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居をしている方
参考:国税庁「障害者控除」
公的制度「補装具支給制度」が利用できるため、義肢・視覚障害者安全つえ・補聴器・車いすなどの補装具の購入・修理で必要な費用の助成が受けられ、原則として必要費用の1割を自己負担するだけでよくなります。
ただ対象となる補装具の種類・上限の価格・個数などは細かい条件があるため、厚生労働省が発表している「義肢等補装具費支給要綱」で確認するのが重要です。
障害者を対象とした採用枠で企業が雇用を行う制度です。障害の有無に関係なく、能力や希望に合った職業選択ができるように国が障害者雇用対策を進めています。
そのため、障害者雇用促進法によると、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。
また、障害者手帳を取得してれば、この法定雇用率で定められる枠での就業が可能なだけでなく、下記のような合理的配慮を求めることも可能です。
なお、障害者手帳を持っていても障害者雇用枠で就業することは義務ではなく、一般雇用枠で就業することも問題はありません。
今回は、地域の障害者・精神保健に対する支援として、その対象者と受けることが出来るサービスの内容について紹介しました。
障害者・精神保健に対する支援を受けるためには、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳などの障害者手帳の取得が必要です。
また、障害者手帳を取得すれば、「医療費の助成」「障害者控除」「補助具購入費用の助成」「障害者雇用枠への応募」などさまざまなサービスを受けることができます。
ただ、サービス内容は、障害種別・等級・在住の自治体・所得状況などによっても異なるため、ご自身のお住いの各市町村に一度お確かめください。