通所介護(デイサービス)を運営する事業所にとって、送迎減算は介護報酬に大きな影響を与える重要な制度です。
利用者の送迎をおこなわない場合や、家族による送迎がおこなわれる場合に適用されるこの減算制度について、正確な理解と対応が求められています。本記事では、送迎減算の基本的な概要から具体的なケース、単位数、そして実務上の対応策まで詳しく解説します。
目次
通所介護の送迎減算とは、通常の通所介護サービスに含まれている送迎サービスを提供しない場合に、介護報酬から一定の単位数を減算する制度です。通所介護の基本報酬には送迎に係る費用が包括的に含まれているため、送迎を実施しない場合は、その分の費用を減額する必要があります。
この制度は、利用者や家族の希望により送迎サービスを利用しない場合や、事業所の事情により送迎が提供できない場合に適用されます。送迎減算は片道ごとに適用され、往路のみ、復路のみ、または往復両方の送迎をおこなわない場合にそれぞれ対応した減算がおこなわれます。
送迎減算が適用される具体的なケースは以下の通りです。
まず、利用者や家族の希望により事業所の送迎サービスを利用しない場合が該当します。これには、家族が直接送迎をおこなうケース、利用者が自家用車で通所するケース、公共交通機関を利用するケースなどが含まれます。
次に、事業所側の事情により送迎が提供できない場合も対象となります。例えば、送迎車両の故障や運転手の急病により、一時的に送迎サービスが提供できない場合などです。ただし、この場合は事業所として代替手段の検討や利用者への説明が求められます。
また、利用者の居住地が事業所の送迎エリア外にある場合や、道路状況等により送迎車両での対応が困難な場合も送迎減算の対象となることがあります。
| 項目 | 詳細 |
| 単位数 | 片道-47単位/日 往復-94単位/日 |
| 対象者 | 事業所による送迎をされていない利用者 |
| 算定要件 | 利用者の居宅と事業所間の送迎を実施していないとき |
具体例として、要介護1の利用者が通常規模型通所介護を7時間以上8時間未満利用する場合を考えてみましょう。基本報酬は655単位ですが、家族送迎により往路の送迎を利用しない場合は47単位減算され、608単位となります。復路も家族送迎の場合は、さらに47単位減算され、561単位となります。
重要なのは、送迎減算は実際に送迎サービスを提供しなかった日について、その都度適用するという点です。月単位での包括的な減算ではなく、サービス提供日ごとに判断する必要があります。
送迎減算を適用する際の実務上の留意点がいくつかあります。
まず、利用者・家族との合意形成が重要です。送迎をおこなわないことについて、事前に十分な説明をおこない、書面での同意を得ておくことが望ましいとされています。また、送迎をおこなわない理由や期間について明確に記録しておく必要があります。
次に、安全面への配慮が求められます。家族送迎や利用者の自力通所の場合でも、事業所として安全確認を怠らず、必要に応じて代替手段の提案や支援をおこなうことが大切です。
請求事務においては、送迎の実施状況を正確に把握し、減算を適用することが必要です。送迎実施の有無について、日々の記録を確実に残し、請求時に漏れや誤りがないよう注意深く確認する体制を整えることが重要です。
送迎減算への対応策として、以下のような工夫が考えられます。
利用者・家族とのコミュニケーションを密にし、送迎ニーズを事前に把握することで、計画的なサービス提供が可能になります。定期的な面談や連絡を通じて、送迎の必要性や家族の都合について情報を収集し、柔軟な対応を心がけることが大切です。
代替交通手段の情報提供も有効な対応策です。公共交通機関の利用方法、タクシー会社の紹介、地域の移動支援サービスの案内など、利用者の状況に応じた情報を提供することで、送迎以外の選択肢を広げることができます。
また、送迎エリアの見直しや効率的なルート設計により、より多くの利用者に送迎サービスを提供できる体制を整えることも重要です。
事業所の責任による送迎不能の場合は、基本的に送迎減算を適用します。ただし、代替手段(タクシー代負担等)を講じた場合は、減算を適用しないことも可能です。
実際に送迎サービスを提供しなかった部分について減算を適用します。往路は事業所送迎、復路は家族迎えの場合は、復路分のみ47単位減算となります。
サービス提供記録において、送迎実施の有無と理由を明記し、利用者・家族との合意内容についても記録として残しておくことが推奨されます。
通所介護の送迎減算は、サービス提供の実態に応じて適用する必要がある重要な制度です。片道47単位の減算額は決して小さくなく、事業所の収益に直接影響を与えます。
利用者・家族との十分なコミュニケーション、正確な記録管理、そして安全面への配慮が欠かせません。また、送迎サービスの質の向上や効率化により、可能な限り利用者のニーズに応えられる体制を整えることが重要です。
送迎減算を含む介護報酬制度は複雑で、実務上の判断に迷うケースも多く発生します。返還事例となるリスクを避けるためにも、制度の正確な理解と運用が求められています。事業所として継続的な研修や情報収集をおこない、介護報酬請求の実現を目指しましょう。