介護給付費明細書は、介護報酬請求の根拠となる重要書類です。記載ミスや漏れがあると返戻(書類が戻される)や監査での指摘の原因となり、事業所の収入に直接影響します。本記事では、介護給付費明細書(第二様式)の書き方・記載例・注意点を現場目線で解説します。
介護給付費明細書(第二様式)とは、利用者へ提供した介護サービスの実績を記録したサービス提供票などを基に算出した介護給付費について、その内訳や保険者・利用者等への請求額を算定する書類です。
役割 | 内容 |
介護報酬請求の証拠 | 国保連への報酬請求の根拠書類として機能 |
利用者負担額の算定 | 利用者の自己負担額を正確に算出 |
サービス提供の証明 | 実際に提供したサービス内容と単位数の記録 |
事業所収入の管理 | 月次の収入内訳を把握し経営管理に活用 |
介護給付費明細書の様式は、提供するサービス種別によって記載項目が異なります。通所介護ではサービス提供時間帯や入浴介助加算、個別機能訓練加算の有無などを記載し、訪問介護ではサービス提供回数と時間、生活援助・身体介護の区分、特定事業所加算の有無などを記載します。
介護給付費明細書の様式は、厚生労働省令により定められています。介護サービスを提供した月の翌月1日から10日までに国保連へ提出します。令和6年度の介護報酬改定により、加算の内容や単位数が変更されているため、最新の単位数表を使用して請求する必要があります。
介護給付費明細書に記載すべき項目を整理しました。
項目カテゴリ | 記載内容 | 記入時の注意点 |
利用者情報 | ・被保険者番号 | 被保険者証と完全一致させる。 |
サービス提供情報 | ・サービス種別コード | サービス提供票(別表)との整合性を必ず確認 |
加算・減算項目 | ・各種加算コード | 算定要件を満たしているか記録で確認。根拠書類の保管も必須 |
計算合計 | ・総単位数 | 計算ミスがないか電卓で再計算して確認 |
事業所情報 | ・事業所番号 | 指定通知書の内容と一致させる |
担当者情報 | ・作成者氏名 | 責任の所在を明確にするため必須 |
備考欄は、特記事項や過誤調整の理由、その他連絡事項を記載する欄です。必要に応じて記載しますが、空欄でも問題ありません。ただし、通常と異なる請求を行う場合や、過去の請求を訂正する場合は、その理由を明記することで審査がスムーズになります。
記載前・記載後にチェックすべき項目を体系的に整理しました。
加算・減算の計上ミスは返戻の主要原因です。以下の点に注意しましょう。
同じサービスを重複して請求することを「二重請求」、誤った内容で請求することを「過誤請求」といいます。これらは返戻だけでなく、悪質な場合は指導対象となります。
防止策
返戻とは、審査の段階で内容の不備が発見されたため、請求書類が事業所に戻されることです。返戻となると対象分の支払い処理ができないため、内容を見直して再請求する必要があります。
介護給付費明細書の内容は、以下の書類と整合している必要があります。
照合対象書類 | 確認内容 |
居宅サービス計画書 | サービス種別、利用頻度が計画内か |
通所介護計画書 | 提供したサービス内容が計画に沿っているか |
サービス提供票 | 提供日数・回数が一致しているか |
サービス実施記録 | 実際にサービスを提供した証拠があるか |
計画書に記載されていないサービスを請求すると、運営指導で指摘される可能性があります。
運営指導では、以下の項目が重点的にチェックされます。
指摘項目 | 具体的な内容 | 対策 |
加算の算定根拠不足 | 加算を請求しているが記録や計画書に根拠がない | 加算ごとに算定要件を記録に明記する |
サービス提供の実態がない | 請求はしているが実施記録がない | 必ずサービス実施記録を残す |
計画書との不整合 | 計画にないサービスを請求している | 計画変更の手続きを行う |
二重請求 | 他事業所と重複して同じ時間帯を請求 | 利用者のサービス利用状況を把握する |
単位数の計算ミス | 加算の計算や合計単位数が誤っている | 計算過程を記録し、複数人で確認する |
介護給付費明細書は請求業務の基礎書類であり、正しく記載することで返戻や指摘を防止できます。
重要ポイント
本記事で紹介したポイントを参考に、日々の記録業務を効率化し、確実な請求業務を実現してください。正確な請求は事業所の安定した経営基盤につながります。