療養通所介護において、かつて「入浴介助体制強化加算」という評価項目が存在していました。しかし、2021年度の介護報酬改定により、この加算は廃止されています。
本記事では、廃止された入浴介助体制強化加算の内容と廃止の経緯、そして現在の入浴介助に関するルールについて解説します。療養通所介護に携わる事業所の方は、報酬体系の変更を正しく理解し、引き続き安全で質の高い入浴支援を提供するための参考にしてください。
目次
療養通所介護は、常時看護師による観察が必要な重度の要介護者や、末期がん患者など医療ニーズの高い利用者を対象とした通所系サービスです。一般的な通所介護とは異なり、利用定員が18名以下に限定され、看護職員を手厚く配置することが義務付けられています。
特に入浴支援は、医療的管理を要する利用者にとって自宅では困難なケアであり、清潔保持や褥瘡予防、心身のリフレッシュといった多面的な効果が期待されます。バイタルチェックや全身状態の観察が不可欠であり、安全な入浴体制の確保が強く求められてきました。
入浴介助体制強化加算は、2021年度改定以前に、安全な入浴介助を提供するための体制を評価する加算として設けられていました。医療ニーズの高い利用者に対して、十分な人員配置と専門的な技術を持った職員による入浴支援を促進することが目的でした。
算定要件には、入浴時の介護職員配置基準、利用者の身体状況に応じた入浴方法の選択、入浴前後のバイタルチェック体制、緊急時対応マニュアルの整備などが含まれていました。日単位の報酬体系のもとで、入浴サービスを提供した日に1日あたり60単位を算定できる仕組みでした。
入浴介助体制強化加算は、2021年度(令和3年度)の介護報酬改定において廃止されました。この背景には、療養通所介護の報酬体系が「日単位」から「月単位の包括報酬」へと大きく見直されたことがあります。医療・介護両方のニーズを持つ中重度の要介護者への柔軟なサービス提供を図る観点から、この包括報酬への移行により、入浴介助体制強化加算を含む各種加算が基本報酬に包括される形となりました。
報酬体系が変わっても入浴介助の重要性は変わらず、月単位の包括報酬の中で引き続き提供することが求められています。
月単位包括報酬となった現在でも、入浴介助は重要なサービスとして位置づけられており、運営基準上の安全管理や職員配置が求められます。運営指導では、入浴実施記録の管理、入浴前後のバイタルチェックの実施と記録、職員への入浴介助研修の実施状況などが確認対象となっています。
また、医療依存度の高い利用者にとって入浴は一定のリスクを伴うため、利用者や家族への丁寧な説明と同意のプロセスが信頼関係の構築とトラブル防止につながります。
月単位包括報酬への移行後も、安全な入浴支援を継続するための体制整備が必要です。職員研修の充実、マニュアルの整備、事故防止対策の見直しなど、基本的な取り組みを着実に実施しましょう。
包括報酬の中で安定した運営をおこなうには、サービスの質を維持・向上させながら効率的な事業運営を図ることが重要です。LIFE関連加算が算定可能であれば活用を検討し、科学的介護情報の収集・活用を通じてサービスの質を評価してもらう仕組みを構築することも有効です。入浴介助の質を高めることで利用者満足度を向上させ、安定した利用につなげる視点も大切です。
入浴介助体制強化加算は、2021年度の介護報酬改定で療養通所介護が月単位の包括報酬体系に移行したことに伴い廃止されました。現在この加算を個別に算定することはできませんが、入浴支援の重要性は変わらず、職員体制の整備や記録管理は引き続き必須です。
包括報酬体系のもとでは、柔軟なサービス提供が可能となる一方、質の高い入浴介助を含む総合的なケアの提供が求められます。LIFE等の活用も視野に入れながら、安全で質の高いサービス提供と安定した運営を両立させ、利用者の安全と尊厳を守る介護の実践に取り組んでいきましょう。