2024年度の介護報酬改定により、通所介護事業所において業務継続計画(BCP)の策定が義務化され、未策定の場合には減算が適用されています。厚生労働省の令和5年度改定検証調査では、感染症・自然災害ともにまだ策定していない事業所が8割であるという実態を受け、策定推進を目的とした減算制度が創設されました。
本記事では、業務継続計画未策定減算の詳細と実効的な対応策について詳しく解説します。
目次
新型コロナウイルス感染症の流行により、介護サービス事業所の事業継続に関する課題が浮き彫りになりました。感染症拡大や自然災害時においても、要介護者への継続的なサービス提供を確保することが目的です。
2021年度の介護報酬改定で業務継続計画の策定が義務付けられましたが、当初は経過措置期間が設けられていました。2024年度から本格的な運用が開始され、現在は未策定の場合に減算措置が適用されている状況です。
通所介護事業所は、要介護者の日常生活を支える重要な役割を担っています。災害や感染症でサービスが停止すれば、利用者の状態悪化や家族の介護負担増加につながるため、危機に備えた体制整備が求められています。
業務継続計画未策定減算は、感染症対策または災害対策のどちらか一方でも業務継続計画が未策定の場合に、基本報酬から減算される制度です。介護事業所でのBCP策定を促進する目的で2024年に創設されました。
重要なポイントは、感染症対策と災害対策の両方が必要なことです。どちらか一方が欠けていても減算対象となります。
また、計画書があるだけでは不十分で、計画に基づいた実際の対策や訓練を行わなければ減算対象となるため、形だけでなく実効性のある取り組みが求められます。
通所介護事業所がBCPを策定する際に満たすべき要件は以下の通りです。
感染症や災害が発生しても、可能な限りサービスを継続するための計画を作成します。計画には「平時の準備」「発生時の対応」「復旧時の対応」の3段階が含まれます。
年1回以上の訓練実施と、全職員への定期研修が必要です。実際の緊急事態を想定したシミュレーション訓練を行い、計画が実際に機能するかを確認します。
最低年1回は計画を見直し、訓練結果や実際の経験を踏まえて改善します。
通所介護の場合、基本報酬の1%が減算されます。
この減算は全利用者に適用されるため、事業所の経営への影響は小さくありません。例えば、月間300人の利用者で平均単位数700単位の事業所なら、月額約2万1千円、年間約25万円の減収となります。
注意すべき点は、減算の適用タイミングです。行政の指導で発覚した時点ではなく、実際に計画が未策定だった時点まで遡って減算が適用されます。
減算は、BCPを策定し行政が確認するまで継続されます。経済的損失だけでなく、事業所の信頼性にも影響する可能性があります。
A: 基本要件は同じですが、事業所の規模に応じた対応で構いません。重要なのは実際に機能する計画であることです。
A: 同一法人内なら基本部分の共同策定は可能です。ただし、各事業所の立地や利用者の特徴に合わせた個別対応部分は必要です。
A: 2025年3月31日までは、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合、業務継続計画未策定減算は適用されませんでした。しかし、この経過措置期間は既に終了しており、現在は完全なBCP策定が必須となっています。
A: 既存の計画がBCP要件を満たしていれば、不足部分を補うだけで対応できます。
通所介護における業務継続計画未策定減算は、2024年度から運用されている制度です。感染症対策または災害対策のどちらか一方でも未策定の場合、基本報酬の1%が減算されるため、事業所への経済的影響は無視できません。
この制度の目的は単なる減算ではなく、緊急事態でも利用者の安全を確保し、継続的にサービスを提供できる体制を作ることです。BCPの策定と運用は、地域の介護を支える事業所としての責任でもあります。
まだBCPを策定していない事業所は、速やかに対応する必要があります。計画作りから運用、改善まで継続的に取り組むことで、利用者・家族・職員の安心安全を確保し、信頼される事業所を目指すことが重要です。