通所介護(デイサービス)を運営する事業者にとって、介護報酬の加算・減算制度の理解は欠かせません。近年の報酬改定では、より質の高いサービス提供を促進するため、加算の拡充と減算の厳格化が進められています。
本記事では、通所介護における加算・減算の種類、最新の報酬改定のポイントまで詳しく解説します。
目次
通所介護における加算・減算制度は、基本報酬に上乗せまたは減額される仕組みです。加算は、基本的なサービスに加えて特別な体制を整備したり、質の高いサービスを提供したりする事業者に対して追加報酬を付与する制度です。
一方、減算は人員基準や設備基準を満たさない場合、または適切な記録管理ができていない場合に基本報酬から差し引かれる制度です。
この制度の目的は、介護サービスの質向上と適正な事業運営の確保にあります。加算を取得することで事業者は収益向上を図れる一方、基準を満たさない場合は減算により経営に大きな影響を受けるため、常に適正な運営を心がける必要があります。
加算名 | 単位数・算定回数 |
生活機能向上連携加算 | 100~200単位/月 |
認知症加算 | 60単位/日 |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 所定単位数×5/100 |
サービス提供体制強化加算 | 6~22単位/回 |
介護職員等処遇改善加算 | 所定単位数×33/1000~92/1000 |
栄養アセスメント加算 | 50単位/月 |
口腔機能向上加算 | 150~160単位/回 |
栄養改善加算 | 200単位/回 |
若年性認知症利用者受入加算 | 60単位/日 |
ADL維持等加算 | 30~60単位/月 |
個別機能訓練加算 | 20~76単位/日 |
中重度者ケア体制加算 | 45単位/日 |
3%加算 | 基本報酬×3% |
生活相談員配置等加算 | 13単位/日 |
口腔・栄養スクリーニング加算 | 5~20単位 |
科学的介護推進体制加算(LIFE加算) | 40単位/月 |
入浴介助加算 | 40~55単位/日 |
減算名 | 単位数・算定回数 |
同一建物減算 | -94単位/日 |
共生型による減算 | 指定生活介護:×93/100 |
高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数×1% |
業務継続計画未策定減算 | 所定単位数×1% |
定員超過利用減算 | 所定単位数×70/100 |
人員基準欠如減算 | 所定単位数×70/100 |
送迎減算 | -47単位(片道につき) |
令和6年度介護報酬改定では、通所介護の質向上と持続可能性の確保を目指した大きな変更が実施されました。
今回の改定では、質の高いサービス提供を評価する加算が拡充されました。
特にADL維持等加算の見直しや、個別機能訓練加算の要件緩和により、事業者がより取り組みやすい環境が整備されています。
また、科学的介護推進体制加算の新設により、データに基づく科学的な介護の実践が評価されるようになりました。これらの変更は、単なるサービス提供から、利用者の自立支援や重度化防止に向けた質の高いケアへの転換を促しています。
一方で、基準違反や記録管理の不備に対する減算は厳格化されています。
特に人員基準欠如減算の適用期間の見直しや、記録の整備・保管に関する要件の明確化により、事業者にはより適正な運営が求められています。
また、利用者の安全確保に関する取り組みが不十分な場合の減算も強化され、事業者は継続的な改善努力が必要となっています。
通所介護の加算・減算制度は、質の高いサービス提供を評価し、適正運営を促進する仕組みです。事業者は加算要件を理解して積極的に取り組み、同時に減算を避けるため基本的な運営基準を遵守することが重要です。
令和6年度改定では加算拡充と減算厳格化が進められており、今後も自立支援と重度化防止重視の傾向が続くと予想されます。最新の制度動向を把握し、継続的な改善に取り組むことで、持続可能な事業運営を実現しましょう。