通所介護事業所(デイサービス)において、利用者一人ひとりに適切なサービスを提供するために欠かせない書類が「通所介護計画書」です。この計画書は、介護保険法に基づき作成が義務づけられており、運営指導においても重要なチェック項目となります。
本記事では、通所介護計画書の基本的な内容から具体的な書き方まで、初心者にも分かりやすく解説します。
通所介護計画書は、通所介護事業所が利用者に対して提供するサービス内容を、具体的に記載した計画書です。介護保険法に基づき、通所介護事業者は利用者ごとに通所介護計画を作成することが義務づけられています。
通所介護計画書は、利用者の心身の状況や希望、家族の意向を踏まえて作成され、デイサービスでの目標設定や具体的なサービス内容、提供方法などを明記します。
居宅介護支援事業所による居宅サービス計画(ケアプラン)に沿って作成される、個別のサービス計画書として位置づけられています。
通所介護計画書には以下のような目的があります。
利用者一人ひとりの身体状況・認知機能・生活歴・趣味・嗜好などを詳細に把握し、その人らしい生活の継続を支援するための個別性の高いサービス提供を可能にします。
明確な目標設定と具体的なサービス内容の明示により、職員間での情報共有が図られ、統一した質の高いケアの提供につながります。
介護保険制度における運営基準を満たすための必須書類として、適切な事業運営の根拠となります。
サービス内容を可視化することで、利用者や家族との間で提供されるケアについての共通理解を図り、信頼関係の構築に寄与します。
通所介護計画書の、基本的な構成要素と具体的な記入例をご紹介します。
氏名、生年月日、要介護度、主治医、担当介護支援専門員などの基本情報を記載します。
例:田中花子様(85歳、要介護2、主治医:○○病院△△医師)
利用者の身体機能、認知機能、社会参加の状況などを具体的に記載します。
例:歩行時にふらつきがあり、転倒リスクが高い。外出機会が減少し、他者との交流が少ない状況
利用者が達成したい目標を期間を定めて設定します。
例:長期目標:安全に外出し、地域活動に参加できる(6ヵ月)
短期目標:デイサービス内で安定した歩行ができる(2ヵ月)
具体的な支援内容を詳細に記載します。
例:機能訓練:平行棒を使用した歩行訓練(週2回・各15分)
レクリエーション:手工芸活動への参加支援
利用者の心身の状況、生活歴、家族構成、希望などを詳細に聞き取り、客観的な評価をおこないます。ADL評価表や認知機能評価なども活用しましょう。
担当ケアマネジャーが作成した居宅サービス計画の内容を確認し、通所介護で担う役割を明確にします。
アセスメント結果に基づき、利用者の状況に応じた実現可能で具体的な目標を設定します。長期目標はおおむね6ヵ月、短期目標はおおむね3ヵ月程度で設定することが一般的です。
設定した目標を達成するために必要なサービス内容を具体的に決定します。提供頻度、時間、担当者なども明記します。
作成した計画書について利用者や家族に分かりやすく説明し、同意を得てから署名をいただきます。
通所介護計画書は、サービス提供が終了した日から2年間保存することが義務づけられています。個人情報保護の観点から、施錠可能な場所での保管が必要です。
通所介護計画書は少なくとも6ヵ月に1回以上見直しをおこない、必要に応じて変更します。利用者の状態変化や目標達成状況に応じて、随時見直しをおこなうことも重要です。
計画書の見直しには、介護職員、看護職員、機能訓練指導員、生活相談員など多職種が参加し、様々な視点からの意見を反映させることが大切です。
通所介護計画書は、利用者に質の高い個別ケアを提供するための重要な書類です。適切な作成と運用により、利用者の自立支援と生活の質の向上を図ることができます。
運営指導において通所介護計画書は重点的にチェックされる書類の一つです。作成から保管、見直しまでの一連のプロセスを適切に実施することで、法令遵守と質の高いサービス提供の両立を図りましょう。