通所介護における業務日誌は、日々のサービス提供を客観的に記録する重要な書類です。監査や加算要件にも深く関わるため、正しい記入が求められ、実地指導では必ず確認される書類の一つとなっています。
本記事では、通所介護事業所で必要となる「業務日誌の目的」「具体的な書き方」「記入のポイント」を詳しく紹介します。運営基準を満たした業務日誌の作成にぜひお役立てください。
目次
通所介護の業務日誌とは、事業所で行われる日々の業務内容と利用者の状況を記録する公的な書類です。介護保険法に基づく運営基準により、事業者は業務の実施状況を適切に記録・保存することが義務づけられています。
業務日誌の主な目的は以下の通りです。
- サービス提供の証明:実際に介護サービスを提供した事実を客観的に記録し、介護報酬請求の根拠とする
- 継続的なケアの実現:職員間での情報共有を図り、利用者に対する一貫したサービス提供を支援する
- 事故、トラブル時の対応記録:緊急時や問題発生時の対応を詳細に記録し、今後の改善策検討に活用する
- 行政指導への対応:実地指導や監査の際に、適切な運営状況を証明する重要な資料となる
事業所は業務日誌を5年間保存する必要があり、行政からの求めに応じていつでも提示できる状態で管理しなければなりません。
通所介護の業務日誌に記載すべき内容は大きく6つの要素に分けられます。
実施日時・曜日、記録者名、管理者や生活相談員による確認印が必要です。これらは業務日誌の信頼性を担保する重要な要素となります。
利用者数と氏名、出席・欠席状況、送迎の実施状況、個別の特記事項を詳細に記録します。欠席理由や送迎時の特記事項も含めて、利用者の状況を客観的に把握できる内容が求められます。
勤務職員数と職種別内訳、特に管理者・生活相談員・看護職員・介護職員の配置状況を明確に記載する必要があります。人員配置基準の遵守状況を証明する重要な記録となります。
実施した介護サービスの内容、機能訓練の実施状況、レクリエーション活動などの詳細を記録します。加算算定の根拠となるサービス提供の実態を示すため、時間や参加者も含めて具体的に記載することが重要です。
事故・ヒヤリハット事例、感染症対策の実施状況、設備・機器の点検結果などを漏れなく記録します。利用者の安全確保に向けた取り組みを客観的に示す内容となります。
家族や関係機関との連絡内容、ケアマネジャーとの情報共有、医療機関との連携状況などを記載し、チームケアの実施状況を明確にします。
業務日誌は法的な証拠書類としての性質を持つため、客観的事実のみを記録することが重要です。記録者の主観的な判断や感情的な表現は避け、「誰が見ても同じ解釈ができる」内容で記載しましょう。
良い例:「A氏、歩行時にふらつきが見られ、職員が付き添いで支援」
悪い例:「A氏の調子が悪そうで心配になった」
時間・場所・関わった職員名・具体的な状況を明記し、後から検証可能な記録を心がけてください。
業務日誌には利用者の氏名や状況を記載しますが、不必要な個人情報の記載は避けましょう。特に病気の詳細や家族関係の複雑な事情などは、業務上必要最小限に留めることが重要です。
個人情報保護の観点から、業務日誌の保管・管理にも十分注意を払い、関係者以外の目に触れることがないよう適切に管理してください。
実地指導では、以下の項目が特に重点的にチェックされます。
- 職員の勤務状況:管理者・生活相談員の兼務状況、看護職員の勤務時間、人員配置基準の遵守状況
- 送迎の実施記録:送迎加算を算定している場合の送迎実施状況、安全運転管理体制
- 機能訓練の実施状況:個別機能訓練加算算定時の訓練実施記録、訓練内容の個別性
- 感染症、事故対策:日々の健康チェック、感染症発生時の対応、事故発生時の初期対応と報告
これらの項目については特に詳細な記録を心がけ、加算要件を満たしていることを明確に示せるよう準備しておきましょう。
通所介護の業務日誌は、適切な事業運営と利用者へのサービス提供を証明する重要な文書です。記録の際は感情的な表現を避け、事実に基づいた客観的な内容で記載することが重要です。
実地指導で指摘されやすい項目については特に注意深く記録し、加算要件の遵守状況を明確に示せるよう心がけてください。適切な業務日誌の作成により、利用者により良いサービスを提供し、行政指導にも自信を持って対応できる事業所運営を実現していきましょう。