通所介護事業所の指定申請や更新時に必須となる「事業計画書」。しかし「どのように記載すれば良いかわからない」といった悩みを抱える事業者様が多いのが現実です。
事業計画書は、事業所の運営方針や具体的なサービス提供体制を示す重要な文書で、記載内容が曖昧だと行政から差し戻され、指定申請が遅延するケースも少なくありません。
本記事では、通所介護事業計画書の書き方・記入例・注意点を詳しく解説し、実際に活用可能な例文もご紹介します。これから指定申請を予定されている事業者様や、更新手続きで悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
事業計画書とは、通所介護事業所がどのような目的でサービスを提供し、どのような体制で運営していくのかを具体的に示した計画文書です。介護保険法に基づく指定申請時や更新時に自治体へ提出が義務付けられており、事業所の「設計図」とも言える重要な書類です。
行政は事業計画書を通じて、申請事業所が適切な介護サービスを継続的に提供できるかを審査します。そのため、実現可能で具体的な内容を記載することが求められます。
事業所の基本的な情報「名称・所在地・営業日時・定員」などを明確に記載します。行政が事業所の概要を把握するための重要な項目です。
【記入例】
事業所名称:○○デイサービスセンター
所在地:〇〇市〇〇町1-2-3
事業開始予定日:令和○年○月○日
営業日:月曜日~土曜日(日曜日・12月31日~1月3日を除く)
営業時間:9:00~16:30
定員:25名
「事業目的・理念・サービス提供方針・地域との連携方針」を具体的に記載します。単なる理想論ではなく、実現可能な方針を示すことが重要です。
【記入例】
当事業所は、要支援・要介護認定を受けた利用者様が、可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう支援することを目的とします。
利用者様の尊厳を保持し、心身機能の維持・向上を図るとともに、ご家族の介護負担軽減に貢献し、地域包括ケアシステムの一翼を担います。
「提供するサービス内容・1日のスケジュール・年間行事計画」などを記載します。取得予定の加算に対応したサービス内容を明記することも重要です。
【記入例】
■サービス提供内容
・個別機能訓練(理学療法士による月2回の個別評価・週3回の訓練実施)
・入浴サービス(一般浴槽・機械浴槽完備)
・食事サービス(管理栄養士監修・嚥下調整食対応)
・生活相談・指導、レクリエーション(季節行事・音楽療法・手工芸等)
「管理者・生活相談員・看護職員・介護職員等の配置予定、職員の資格・経験、研修計画」を記載します。人員基準を満たしていることを数値で明確に示しましょう。
【記入例】
■職員配置体制
・管理者1名(介護福祉士・経験10年以上)
・生活相談員1名以上(社会福祉士・経験5年以上)
・看護職員1名以上(看護師・高齢者看護経験3年以上)
・機能訓練指導員1名以上(理学療法士・経験5年以上)
・介護職員(利用者15名に対し1名以上配置・有資格者率8割以上)
「施設概要・主要設備・備品一覧・安全管理体制」を記載します。設備基準を満たしていることを、具体的な数値や設備名で示すことが必要です。
【記入例】
■設備・備品等の整備体制
・延床面積250㎡、食堂・機能訓練室(150㎡)
・相談室(個人情報保護に配慮した個室)
・浴室(一般浴槽1基・機械浴槽1基)、調理室、事務室
・車椅子対応車両3台、歩行器・車椅子等の福祉用具
・血圧計、体温計等の健康管理機器
収支計画・資金調達計画を記載します。事業の継続性を示すため、現実的な数値に基づいた計画を提示することが重要です。
【記入例】
■財務計画
以下計画により、安定した事業運営を図ります。
・月間延利用者数450名(平均稼働率60%)、月間売上高280万円を想定。
・人件費率65%、その他経費25%
・営業利益率:10%
・運転資金:500万円(開設時)
事業計画書でもっとも多い失敗が、抽象的な表現です。「利用者の立場に立ったサービス提供」「質の高いケア」といった漠然とした表現では、具体的にどのようなサービスを提供するのかが伝わりません。
改善例:
× 「質の高いサービスを提供します」
○ 「個別機能訓練加算を算定し、理学療法士による月2回の個別評価と週3回の機能訓練を実施します」
理想的な内容を記載しがちですが、実際に提供できないサービスを書くのは問題です。人員配置や設備面で実現困難な計画は、後の運営で支障をきたします。
現実的に提供可能なサービス内容を正直に記載し、段階的な改善計画を示すことが重要です。
人員配置基準を満たしているか、取得予定の加算要件を満たしているかを明確に記載しないケースがあります。特に、個別機能訓練加算や入浴介助加算など、体制整備が必要な加算については、具体的な実施方法を明記する必要があります。
また、職員の資格や経験年数についても、基準を満たしていることを数値で示しましょう。
事業計画書は、事業所の運営方針と具体的なサービス提供体制を示す重要な文書です。抽象的な表現を避け、実現可能で具体的な内容を記載することが、行政審査を通過する鍵となります。
ぜひ、本記事の記入例を各事業所の実情に合わせて調整していただき、スムーズな事業計画書の作成にお役立てください。