2024年4月に実施された介護報酬改定は、介護人材の確保・定着と生産性向上を重視した内容となりました。通所介護事業所にとって最も大きな変更は処遇改善加算の一本化で、多くの事業者が対応に追われています。
本記事では、2024年度改定で通所介護に関わる重要なポイントを整理し、運営への影響と必要な対応について解説します。改定内容を正しく理解し、対応することで安定した事業運営を継続していきましょう。
目次
今回の改定は全体で+1.59%の改定率となり、そのうち0.98%が介護職員の処遇改善に充てられています。厚生労働省は「持続可能性」と「質の向上」の両立を掲げ、単純な報酬アップではなく要件の明確化と質の担保に重点を置いています。
改定の4つの柱は、介護人材の確保・定着、生産性向上の推進、地域包括ケアシステムの推進、科学的介護の推進です。これらの方針に基づき、各サービスで具体的な改定が実施されました。
これまで3つに分かれていた処遇改善関連の加算が「介護職員等処遇改善加算」として統合されました。算定率の簡素化と配分ルールの明確化により事務負担の軽減が図られていますが、移行期間中の手続きが重要です。
多くの事業所で既に移行作業が完了していますが、配分計算や職員への説明記録など、運営指導で重点的に確認される項目となっています。
認知症専門ケア加算の要件見直しにより、より多くの事業所での取得が可能となりました。また、医療機関等との連携による「認知症生活機能向上連携加算」も新設されています。
これらの加算取得には、認知症介護研修の受講促進や認知症ケアプログラムの充実が必要となります。
科学的介護推進体制加算では、データ提出項目の追加とフィードバック情報の活用義務化がおこなわれました。個別機能訓練加算においてもLIFE連携による加算率アップが設定されています。
データ入力・管理システムの整備と、PDCAサイクルの実施記録が運営指導での確認項目となっています。
改定により基本報酬の微増と加算取得の促進により収益面での改善可能性がある一方で、新たな算定要件への対応や書類作成・管理の負担も増加しています。
特にICT導入コストやLIFE対応システムなど、設備投資が必要な項目も多く、事業所の規模や体制によって対応の難易度が変わってきます。職員のモチベーション向上や科学的根拠に基づくケアの実現など、長期的にはサービス質向上につながる内容となっています。
地域密着型通所介護についても、通所介護と同様の改定内容が適用されています。処遇改善加算の一本化、認知症対応力向上、科学的介護推進などの主要な改定ポイントは共通です。
ただし、運営推進会議での改定内容の報告義務や、指定権者である市町村との密な連携が必要な点は、地域密着型特有の注意点となります。
運営指導では、処遇改善加算の移行手続きが最も重点的に確認されます。新加算への移行手続きの適正性、配分計算の正確性、職員への説明・合意の記録、計画書・実績報告書の提出状況などが詳細にチェックされます。
LIFE関連加算についても、データ提出の実施状況とフィードバック活用の記録、PDCAサイクルの実施証拠が確認項目となっています。また、リスクマネジメント委員会の設置・運営記録や事故報告・分析の実施状況など、安全管理体制の強化に関する項目も新たに追加されています。
まず短期的には、現在取得中の加算の継続算定要件を再確認し、改定に伴う新たな記録様式の準備をおこなうことが重要です。特に処遇改善加算の移行関連書類や各種委員会の議事録整備は急務となります。
中長期的には、認知症ケア研修やLIFE活用研修など計画的な人材育成と、業務効率化のためのICTシステム導入の検討が必要です。継続的な自主点検体制の強化と、厚生労働省や自治体からの最新情報の収集・更新も欠かせません。
2024年度介護報酬改定は、通所介護事業所にとって大きな転換点となる重要な改定です。改定内容の正確な把握と算定要件の確実な理解、タイムリーな対応実施が成功のカギとなります。
改定内容は複雑で専門的な知識が必要なため、詳細な算定要件や運営指導での確認ポイント、必要書類の整備方法については、運営指導ガイドブック等の専門資料を活用することで確実な対応が可能になります。
改定対応により、持続可能で質の高いサービス提供を実現し、利用者満足度の向上と安定した事業運営を両立していきましょう。