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デイサービスにおける高齢者虐待の事例とは?現場で起きた5つのケースと予防策を解説

2025-08-01

高齢者虐待は、介護現場において決して起きてはならない深刻な問題です。しかし、厚生労働省の調査によると、養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数は年々増加傾向にあり、2022年度には2,639件が報告されています。

デイサービスは利用者が日中を過ごす大切な場所であり、安心・安全な環境を提供することが最も重要な責務です。しかし、職員不足やストレス、知識不足などが原因で、意図せずに虐待に該当する行為がおこなわれてしまうケースが存在します。

この記事では、実際にデイサービスで発生した高齢者虐待の事例を通じて、虐待の実態を理解し、早期発見と予防のためのポイントを解説します。事業所の管理者や職員の皆様が、虐待防止に向けた具体的な対策を講じる際の参考としてご活用ください。

高齢者虐待とは?定義と種類をおさらい

高齢者虐待防止法における定義

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)では、高齢者虐待を「養護者による高齢者虐待」と「養介護施設従事者等による高齢者虐待」の2つに分類しています。

デイサービスなどの介護サービス事業所では、「養介護施設従事者等による高齢者虐待」が該当し、これは「養介護施設又は養介護事業の業務に従事する者が、当該養介護施設に入所し、その他当該養介護施設を利用し、又は当該養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者に対しおこなう虐待」と定義されています。

重要なのは、虐待する側の意図に関係なく、結果として高齢者に身体的・精神的苦痛を与える行為は虐待に該当するということです。「利用者のため」「時間がないから」といった理由があっても、不適切な対応は虐待として認定される可能性があります。

虐待の5つの種類

身体的虐待

暴力的行為により身体に傷やあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的に遮断する行為。殴る、蹴る、つねる、無理やり食事を口に押し込む、必要のない身体拘束などが該当します。

心理的虐待

脅し、侮辱、無視などにより精神的・情緒的苦痛を与える行為。怒鳴る、罵る、嫌がらせ、恥辱を与える、無視する、子供扱いするなどの行為が含まれます。

性的虐待

本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要。わいせつな行為をする、強要する、性器への接触、わいせつな写真を撮るなどが該当します。

経済的虐待

本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限することなど。年金や預貯金を無断使用する、必要な金銭を渡さない、日用品の購入に必要な金銭を渡さないなどの行為です。

ネグレクト

介護や世話をおこなっている者が、介護・世話を放棄または放任し、高齢者の心身に痛手を負わせることや心身の正常な発達を阻害する行為。必要な介護サービスの提供を怠る、健康状態の悪化を放置する、必要な医療を受けさせないなどが該当します。

デイサービスで起きた高齢者虐待の事例【5選】

事例1:暴言を繰り返す職員による心理的虐待

関東地方のデイサービス事業所で発生した事例です。認知症による徘徊行動や大声を出す利用者に対し、職員が「うるさい!」「じっとしていろ!」「家に帰れ!」などの暴言を繰り返していました。

この職員は普段は利用者に優しく接していましたが、忙しい時間帯や利用者の行動が重なった際にストレスが爆発し、感情的になって暴言を吐くパターンが続いていました。他の職員も気づいていましたが、直接注意することができず、問題が長期化しました。

家族から「最近、デイサービスに行きたがらない」「怖い人がいると言っている」という相談があり、事業所が調査した結果、複数の利用者に対する心理的虐待が発覚しました。職員は即座に解雇され、事業所は再発防止策として職員研修の強化と相談体制の整備をおこないました。

事例2:排泄介助時の過度な身体拘束

中部地方のデイサービスで起きた事例では、排泄介助を嫌がる認知症の利用者に対し、職員が「安全のため」という理由で車椅子をベルトで固定し、無理やりトイレに連れて行く行為を繰り返していました。

利用者は介助を嫌がり、暴れることがありましたが、職員は「転倒防止」「他の利用者への迷惑防止」を理由に身体拘束を正当化していました。しかし、この対応は利用者の尊厳を著しく損なう不適切なケアであり、身体的虐待に該当します。

問題は、利用者の腕や足に拘束による傷跡があることを家族が発見したことで発覚しました。事業所は適切なケア方法について職員教育を徹底し、身体拘束をおこなわない介助方法を確立することで再発防止に取り組みました。

事例3:職員不足により入浴を拒否され続けたケース(ネグレクト)

九州地方のデイサービスで発生した事例では、深刻な職員不足により、入浴介助に十分な人員を配置できない状況が続いていました。その結果、入浴介助に時間のかかる利用者や介助の難しい利用者の入浴を断り続けるケースが発生しました。

特に、身体機能の低下により2人介助が必要な利用者に対し、「今日は人が足りない」「時間がない」という理由で3か月間入浴サービスを提供しなかった事例がありました。利用者の清潔保持は基本的な生活支援であり、これを怠ることはネグレクトに該当します。

問題は利用者の家族から市役所への通報により発覚し、事業所は人員配置の見直しと、入浴拒否時の代替案(清拭サービス等)の整備を求められました。

事例4:利用者の金銭を無断で使用したケース(経済的虐待)

東北地方のデイサービスで起きた経済的虐待の事例では、職員が利用者の財布から現金を抜き取る行為を繰り返していました。被害者は軽度の認知症があり、金銭管理に不安があったため、財布を事業所で預かっていました。

職員は「少額だからバレない」「認知症だから覚えていない」と考え、数か月間にわたって合計15万円を盗んでいました。利用者は「お金が足りない」と訴えていましたが、認知症による記憶違いと思われていました。

事実が発覚したのは、家族が利用者の金銭管理を確認した際に、使途不明な支出が多数あることに気づいたからです。防犯カメラの確認により職員の犯行が明らかになり、刑事告発されました。事業所は金銭管理体制の見直しと複数職員によるチェック体制を導入しました。

事例5:他の利用者からの暴力を放置(施設側の対応不足)

関西地方のデイサービスで発生した事例では、認知症による行動・心理症状(BPSD)で他の利用者に暴力を振るう利用者がいましたが、事業所がその対応を怠り、被害を受ける利用者を放置していました。

加害者となる利用者は重度の認知症により、他の利用者を叩いたり、物を投げたりする行動が頻繁にありました。しかし、職員は「認知症だから仕方がない」「家族に契約解除は言いにくい」という理由で根本的な対策を取らず、被害を受ける利用者の安全を確保しませんでした。

ある利用者が頭部に大きな傷を負い、家族が事業所に抗議したことで問題が表面化しました。事業所は適切な環境整備を怠り、利用者の安全を守る義務を果たしていなかったとして、ネグレクトに該当すると判断されました。

虐待の兆候に気づくポイントとは?

高齢者虐待を早期に発見するためには、利用者の身体的変化や行動の変化を注意深く観察することが重要です。

身体的な兆候

説明のつかない傷やあざ、やけど、脱水症状、栄養失調、不自然な体重減少、衛生状態の悪化などがあります。特に、隠れた部分(腹部、背中、太ももなど)の傷やあざは虐待の可能性を疑う必要があります。

行動・心理面の変化

デイサービスに来ることを嫌がる、特定の職員を避ける、おびえたような表情を見せる、急に無口になる、攻撃的になる、不眠や食欲不振などの症状が現れることがあります。

職員の行動

利用者に対して威圧的な態度を取る、感情的になりやすい、他の職員の前でも不適切な発言をする、利用者との関わりを避けるような行動が見られる場合は、虐待のリスクが高いと考えられます。

組織的な問題

職員の勤務態度に問題がある、研修が不十分、管理体制が整っていない、職員間のコミュニケーションが不足している環境では、虐待が発生しやすくなります。

虐待の兆候を発見した場合は、速やかに管理者に報告し、市町村や地域包括支援センターに相談することが重要です。また、事業所内での情報共有と対策検討をおこない、利用者の安全確保を最優先に行動する必要があります。

まとめ

デイサービスにおける高齢者虐待は、決して他人事ではありません。どの事業所でも起こり得る問題として、日頃から予防意識を持って取り組むことが重要です。

虐待防止のためには、職員一人ひとりが高齢者の人権と尊厳を理解し、適切なケア技術を身につけることが不可欠です。また、管理者は職員の労働環境を整備し、ストレス軽減とスキルアップのための支援を継続的におこなう必要があります。

今回紹介した事例を教訓として、自分たちの事業所でも同様の問題が起きていないか定期的にチェックし、虐待防止体制の強化に取り組んでいきましょう。利用者が安心して過ごせる環境づくりは、すべての介護事業所の責務です。

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