通所介護事業所における運営指導では、必ずと言っていいほど確認されるのがモニタリングシートの記録内容です。「何を書けばいいかわからない」「評価の書き方に悩む」といった声をよく聞きますが、適切な記録は利用者の状態把握と事業所の質向上に不可欠な要素です。
本記事では、運営指導対策にも役立つモニタリングシートの書き方を具体例とともに解説します。
目次
モニタリングは、利用者の状態・目標の達成度・サービスの効果を定期的に評価する仕組みです。通所介護計画書で設定した課題や目標に対して、実際に提供したサービスがどのような効果をもたらしているかを客観的に把握し、必要に応じて計画を見直すための重要なプロセスとなります。
アセスメントが「現在の状態を把握する」ことを目的とするのに対し、モニタリングは「変化を評価する」ことに焦点を当てています。通所介護計画書で立てた支援目標に対する進捗状況を定期的に確認し、利用者のニーズに応じてサービス内容を調整するための根拠となる記録です。
運営指導では「モニタリングの記録内容」が確認対象の重要項目として位置づけられており、記録の不備や内容の不十分さが指摘されやすいポイントでもあります。適切なモニタリング記録は、事業所の専門性と利用者への責任を示す証拠書類として機能します。
一般的なモニタリングシートには以下の項目が含まれます。
基本情報欄 :利用者名、実施日、実施者名、計画書作成日
課題・目標欄 :通所介護計画書で設定した課題と長期・短期目標
提供サービス欄:実際に提供したサービス内容と頻度
変化・評価欄 :目標達成状況、利用者の状態変化、効果の評価
支援方針欄 :今後の支援方向性、計画変更の必要性
地域や保険者によって推奨される様式が異なる場合もあるため、まずは所在地の地域包括支援センターや保険者に確認することが大切です。ただし、基本的な記載項目は共通しているため、雛形を参考に事業所の実情に合わせて柔軟に対応することが可能です。
重要なのは様式の統一ではなく、記録内容の充実です。職員間で記載方法にばらつきが出ないよう、事業所内で記載ルールを明確にしておくことが効果的です。
モニタリングの実施頻度は原則として6ヵ月ごとですが、利用者の状況に変化があった場合はその都度実施する必要があります。
定期実施のタイミング
- 通所介護計画書作成から6ヵ月後
- 要介護度の更新時
- ケアプランの変更時
随時実施が必要なケース
- 利用者の心身状態に著しい変化があった場合
- サービス内容や頻度を変更した場合
- 個別機能訓練加算等の算定に関わる変更があった場合
- 利用者や家族からサービスに関する要望があった場合
実施日と実施者の記録は必須事項として明記することが重要です。運営指導では、実施予定日と実際の実施日に大きな乖離がないか、適切な職員が実施しているかが確認されます。
モニタリングシートの記述は「課題に対する支援の進捗」「変化」「評価」を軸に構成します。
悪い例
- 「問題なし」
- 「順調に進んでいる」
- 「変化なし」
良い例
- 「昼食時の食事介助について、1ヵ月前は全介助が必要だったが、現在は1/2量の自力摂取が可能となり、残りは部分介助で対応。咀嚼・嚥下機能の向上が見られる」
- 「歩行訓練により、杖歩行での移動距離が10mから30mに拡大。下肢筋力の向上を実感されており、意欲的に取り組まれている」
記載のポイント
- 事実ベースで記載:客観的な変化を数値や具体的な行動で表現
- 比較の視点:以前の状態と現在の状態を対比
- 根拠の明示:変化の要因や背景を分析
- 今後の方向性:継続・変更・新たな取り組みの必要性を示す
曖昧な表現は避け、第三者が読んでも利用者の状況が理解できる記録を心がけることが重要です。
運営指導において、モニタリング関連で指摘されやすい事例は以下の通りです:
実施・記録の不備
- モニタリングの未実施(6ヵ月経過しても実施していない)
- 実施日と記録の不一致
- 実施者の記載漏れ
内容の不十分さ
- 通所介護計画書との不整合(計画で設定した目標と評価内容がつながらない)
- 利用者の状態変化に関する記録が不十分
- 抽象的な表現のみで具体性に欠ける
手続きの不備
- 利用者・家族への説明記録の欠如
- 多職種連携の記録不足
- ケアマネジャーへの報告記録の不備
指摘を避けるためには、”書く前の整理”が重要です。雛形を活用し、記載すべき項目を明確にしてから記録に取り掛かることで、漏れや不備を防ぐことができます。
モニタリングの本質的な目的は「気づき」「改善」「振り返り」にあります。利用者の小さな変化に気づき、サービスの改善点を見つけ、これまでの支援を振り返ることで、より質の高いケアの提供が可能になります。
「何を書けばいいかわからない」「評価の表現に悩む」といった書きづらさは、適切な雛形の活用と記録の視点を整理することで解決できます。記録作成に時間をかけすぎるのではなく、利用者と向き合う時間を確保するためにも、効率的な記録方法の確立が重要です。
運営指導対策や各種加算の算定要件を満たすためにも、記録精度の高い様式を使用することが事業所運営の安定につながります。まずは使いやすい雛形から始めて、段階的に記録の質を向上させていくことをお勧めします。