2024年度の介護報酬改定により、通所介護(デイサービス)における認知症加算の要件や制度が見直されました。認知症加算は、認知症の高齢者に対して適切なケアを提供する事業所を評価するための加算ですが、その取得には一定の条件を満たす必要があります。
この記事では、認知症加算の取得方法、単位数、算定要件、計算方法、2024年の改定内容、取得の難しさ、留意点について詳しく解説します。
認知症加算を取得するためには、事業所が認知症高齢者への適切なケアを提供する体制を整えることが求められます。2024年度の介護報酬改定により、認知症加算の取得要件が一部変更されました。
まずは認知症加算の単位数と具体的な算定要件について詳しく解説します。
通所介護の認知症加算の単位数と算定要件は以下の表のとおりです。
項目 | 内容 |
単位数 | 60単位/日 |
算定要件 | 指定居宅サービス等基準第93条第1項第2号または第3号、指定地域密着型サービス基準第20条第1項第2号または第3号に規定する員数のうち、看護職員または介護職員を常勤換算方法で2人以上確保していること。 |
前年度における利用者総数のうち、日常生活に支障を来たす認知症の方(行動が認められるため介護を要する方)の割合が100分の15以上であること。(要件緩和) | |
認知症利用者への適切なサービス提供のため、専任の介護職員または看護職員を1名以上配置していること。 | |
事業所内で、従業者に対する認知症ケアに関する事例の検討や技術の指導に係る会議を定期的に開催していること。(新設) |
今回の改定では、単位数の変更はないものの、事業所全体で認知症利用者への対応を強化するための会議の開催が新たな要件として追加されました。また、認知症の方の割合が20%以上〜15%以上に変更され、要件が緩和されています。
変更部分に十分留意し、算定に向けた準備を進める必要があります。
2024年度のデータによると、通所介護(デイサービス)における認知症加算の算定率は以下のようになっています。
項目 | 数値 |
認知症加算単位数 | 60単位/日 |
算定事業所数 | 1,811事業所 |
算定率(事業所ベース) | 7.4% |
算定回数・日数(単位:千回・千日) | 323.3千回・千日 |
算定率(回数・日数ベース) | 2.6% |
算定単位数(単位:千単位) | 19,398千単位 |
このデータから、認知症加算を取得している事業所は全体の7.4%にとどまっていることがわかります。また、実際の算定回数・日数を基にした回数・日数ベースの算定率は2.6%であり、取得事業所であっても算定機会が限られていることが示されています。
認知症加算の算定率は低く、限られた事業所しか算定ができていません。算定率の低さの背景については後述します。
認知症加算を取得するためには、通常の配置基準を超えた職員を配置することが要件となっています。職員配置や利用者割合を考慮し、正しく人員計算をおこなう必要があります。
認知症加算の算定可否について、順を追って計算方法をわかりやすく示します。
事業所が指定基準を満たすために、どの程度の勤務時間が必要になるかを計算します。
必要な勤務延時間数=((利用者数−15)÷5+1)×平均提供時間数例:
- 利用者数:20名
- 平均提供時間数:7時間
((20−15)÷5+1)×7=(5÷5+1)×7=(1+1)×7=2×7=14時間
この計算により、利用者20名の場合、必要な勤務延時間数は14時間となります。
事業所で確保している勤務時間数の合計から、上記で算出した必要な勤務延時間数を引き、加配時間を確認します。
加配時間=実際の勤務時間数の合計−必要な勤務延時間数
例:
- 実際の勤務時間数の合計:23時間(8時間+7時間+8時間)
23−14=9時間
この場合、加配時間は9時間となります。
事業所の週単位での加配時間を計算し、職員の常勤換算人数を求めます。
常勤換算職員数=週全体の加配時間÷常勤の週勤務時間数常勤換算職員数=週全体の加配時間÷常勤の週勤務時間数常勤換算職員数=週全体の加配時間÷常勤の週勤務時間数例:
- 週全体の加配時間:84時間
- 常勤の週勤務時間数:40時間
84÷40=2.1
この計算結果より、常勤換算で2名以上の職員を確保していると判断されます。
加算取得のためには、適切な職員配置を満たす必要があります。人員配置基準をクリアするための計算方法を理解し、適切な人員体制を整えなければいけません。
これまで、認知症加算を取得するためには、事業所における認知症日常生活自立度「Ⅲ」以上の利用者割合が20%以上であることが要件とされていました。しかし、今回の改定により、この要件が15%以上に引き下げられました。この緩和により、より多くの事業所が認知症加算を算定しやすくなることが期待されます。
また、新たに追加された要件もありますので、詳しく解説します。
今回の改定では、新たな要件として「認知症ケアに関する事例の検討や技術指導の会議を定期的に開催すること」が義務化されました。
これは、事業所内での認知症ケアの質を向上させるための取り組みの一環とされており、実際の現場での対応力を高める狙いがあります。
一方で、会議の準備や運営に関する負担が増加するため、すでに職員不足が問題となっている事業所では、さらなる業務負担の増加が懸念される点も指摘されています。
また、2024年度より、介護に直接携わる職員には「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されます。これは、2021年の介護報酬改定で制定されたものであり、3年間の経過措置を経て2024年度より完全義務化となります。
ただし、この認知症介護基礎研修は、認知症加算の要件で求められる専門研修とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。認知症加算を取得するためには、別途、認知症ケアに関する専門研修を修了した職員の配置が必要となります。
このように、利用者割合が緩和されただけではなく、新たに追加された要件もあります。現在の要件に沿った事業所運営ができているか、十分確認しておく必要があります。
既に紹介した通り、通所介護における認知症加算の取得率はわずか7.4%。算定率が低い背景には複数の要因が挙げられます。厚生労働省が発表した調査結果をもとに、加算取得の障壁がどこにあるのかを解説します。
厚生労働省の調査によると、認知症加算を算定していない理由として、以下のような回答が得られています。
認知症加算を算定していない理由 | 割合 |
人員基準に規定する配置に加え、看護職員または介護職員を常勤換算で2名以上確保することが難しい | 49.3% |
認知症日常生活自立度「Ⅲ」「Ⅳ」「M」に該当する利用者の割合が20%未満(2024年度より15%に緩和) | 43.0% |
認知症介護の指導に係る専門的な研修、または認知症ケアに係る研修・研修修了者の確保が難しい | 30.4% |
認知症の症状進行の緩和に資するケアを計画的に実施するプログラムの策定が難しい | 24.5% |
算定要件に比べ、加算単位数(1日につき60単位)が少ない | 13.1% |
加算を算定することによる利用者・家族の理解が得られない | 8.8% |
認知症加算自体を知らない/算定要件を知らない | 5.2% |
参考:厚生労働省「社会保障審議会資料認知症への対応力強化(改定の方向性)」
算定しない理由上位3つを解説します。
認知症加算の取得には、看護職員または介護職員を配置基準以上に常勤換算で2名以上確保することが求められています。しかし、多くの事業所では介護職員の確保が難しく、特に小規模な事業所では、この基準を満たすことが困難となっています。
認知症日常生活自立度「Ⅲ」「Ⅳ」「M」の利用者が20%以上でなければ算定要件を満たすことができず、この要件クリアが課題という事業所も43%あります。ただ、2024年度の改定では、認知症加算の要件として求められる「認知症日常生活自立度Ⅲ以上の利用者の割合」が20%〜15%に緩和されました。依然としてハードルは高いものの、要件が緩和されたことで取得できる事業所も増えると予想されます。
認知症加算の取得には、認知症ケアに関する専門的な研修を修了した職員を1名以上配置することが要件となっています。しかし、研修受講には時間と費用がかかるため、十分な研修修了者を確保できていない事業所が多いのが現状です。
また、2024年度より「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されますが、この研修は認知症加算の要件で求められる専門研修とは異なるため、加算取得のためには別途、認知症ケアに関する研修を受講する必要があるという点もハードルとなっています。
厚生労働省の調査結果からも、認知症加算の取得が難しい理由として、人員配置基準の厳しさや認知症利用者の割合要件、研修の負担といった要因が浮き彫りになっています。
認知症加算を算定するためには、運営上のさまざまな留意点を理解し、適切に対応する必要があります。加算取得後も、運用方法を誤ると算定ができなくなる可能性があるため、継続的な管理と対応が求められます。
以下に、認知症加算を取得・運用する上での主な留意点を解説します。
通所介護の一形態である共生型通所介護を提供している事業所では、認知症加算を算定することができません。共生型通所介護とは、高齢者と障害者が同じ施設を利用できる形態の通所介護ですが、認知症加算は高齢者向けの基準に基づくため、共生型では適用外となっています。
通所介護では、「若年性認知症利用者受入加算」という別の加算が設けられていますが、認知症加算と併算定することはできません。つまり、どちらか一方の加算しか取得できないため、事業所の利用者層に応じて、どの加算を取得するのが最適かを慎重に判断する必要があります。
「中重度者ケア体制加算」の要件を満たしている場合、認知症加算と併算定することが可能です。これは、認知症加算と中重度者ケア体制加算が、それぞれ異なる視点からケアの充実を評価するものであるためです。
ただし、それぞれの加算で求められる要件を満たす必要があるため、職員配置やケア体制の整備が必要になります。
認知症加算を算定するためには、届出日の属する月の前3ヵ月の1月あたりの実績の平均により算定要件を満たしていることが条件となっています。しかし、届出後も毎月継続的に要件を維持しなければならないため、短期間で要件を満たしても、その後の運営で基準を下回った場合は加算が取り消される可能性があります。
例えば、認知症利用者の割合が一時的に15%を超えたとしても、その後利用者の入れ替わりなどで15%を下回った場合は、認知症加算を継続して取得することができなくなるため、常に利用者の状況を把握し、管理する必要があります。
2024年度の介護報酬改定により、認知症加算の取得要件が一部緩和されましたが、依然として人員配置や利用者割合、研修受講、定期会議の開催など、算定へのハードルは高いと言えます。
ただ、質の高い認知症ケアを推進することで、加算により事業運営を安定することだけでなく、地域での信頼を得ることも可能です。制度変更に柔軟に対応しながら、持続可能な運営体制を整えていくことが重要です。