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個別機能訓練加算の計画書とは?サイン不要って本当?

2025-02-26

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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個別機能訓練とは、高齢者の自立支援と生活機能の向上を目標とした個別のトレーニングプログラムです。個別機能訓練をおこない、加算を取得するためには、利用者のニーズや心身の状態、生活環境に応じた「個別機能訓練計画書」を作成し、計画書にもとづいた訓練を実施する必要があります。

しかし「計画書に何を記載すればいいのか」「書く際のポイントはあるのか」などわからないことも多いでしょう。今回は、個別機能訓練計画書に記載するべき項目や記載時のポイントについて解説します。

個別機能訓練加算の計画書とは

個別機能訓練計画書とは、個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロと、個別機能訓練加算(Ⅱ)のいずれかを算定するときに必要になる書類の1つです。

計画書は規則やガイドラインに従った効果的な訓練を提供して利用者の機能向上や生活の質の向上を図ることを目的に作成されます。これによって、訓練の効果を最大化することができます

具体的な記載内容は以下の通りです。

  • 本人、家族の希望
  • 日常生活や社会生活などの役割
  • 健康状態
  • 個別機能訓練の長期目標、短期目標
  • 個別機能訓練のプログラム内容(訓練内容、頻度、方法を詳細に記載)
  • 個別機能訓練実施後の評価

利用者の現状を把握でき効果的な訓練をおこなうことができることに加えて、訓練の進行状況や成果を定期的に見直すきっかけになる、訓練に係わる職員や利用者家族とのコミュニケーションツールともなるなど、計画書の作成は重要な役割を果たします。

計画書の作成には、主に以下の機能訓練指導員からの助言を得ながら、多職種でチームを組んで作成します。

  • 看護師
  • 准看護師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 柔道整復師
  • あん摩マッサージ指圧師

計画書作成の過程では、利用者本人やその家族の意見も大切にされ、一貫した支援が提供されるようにします。

個別機能訓練計画書の必須項目と記入例

基本情報|利用者の情報や作成者など

基本情報は、ケアマネジャーによるケアプランと利用者やその家族から得た情報をもとに記載していきます。

本人や家族の希望・要望、社会参加の状況、居宅の環境、健康状態などを記載します。居宅環境については、利用者宅へ訪問した際に、健康状態については医師や歯科医師から受け取った情報やケアプランを参考に記載します。

そのほかの具体的な記載内容は以下の通りです。

  1. 作成日・計画作成者
  2. 要介護度・日常生活自立度
  3. 認知症高齢者の日常生活自立度

作成日・計画作成者

計画書には、計画書作成日を記載します。初回作成の場合は初回利用日もしくは初回利用日よりも前の日付を記載します。2回目以降の作成の場合は、前回作成日よりも3ヵ月以内の日付を記載します。

計画書を作成する職員名とその職種を記載します。多職種と連携したうえで計画を立案、実施したことの証明になります。主に担当している機能訓練指導員の名前を記載することが多いですが、生活相談員や管理者の名前でも問題ありません。

要介護度・日常生活自立度

利用者の現在の要介護度(要介護1〜5)を記載します。認定結果が出ていない場合は「申請中」と記載します。

障害高齢者の日常生活自立度は、寝たきり度に応じて「ランクJ(生活自立)」「ランクA(準寝たきり)」「ランクB(寝たきり)」「ランクC(寝たきり)」の段階に分けられます。それぞれ程度によってさらに2段階に分かれます。ケアプランをもとにいずれかを記載します。

ランク基準
生活自立ランクJ

何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
J-1.交通機関等を利用して外出する
J-2.隣近所へなら外出する(買い物、老人会など)

準寝たきりランクA

屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない
A-1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
A-2.介助者がいても外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活する

寝たきりランクB

屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
B-1.車いすに移乗し、食事、排せつはベッドから離れておこなう
B-2.介助により車いすに移乗し、食事、排せつも介助が必要

ランクC

1日中ベッド上で過ごし、排せつ、食事、着替えにおいて介助を要する
C-1.自力で寝返りをうつ
C-2.自力では寝返りもうてない

引用:厚生労働省「障害者の日常生活自立度(寝たきり度)」

認知症高齢者の日常生活自立度

認知症高齢者の日常生活自立度は、ランクIからランクMまでの7段階に分けられます。ケアプランをもとにいずれかを記載します。

ランク判定基準見られる症状・行動
I何らかの認知症を有するが、日常生活では家庭や社会で自立している。
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。
Ⅱa家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などこれまでできてたことのミスが目立つ。
Ⅱb家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。服薬管理ができない、電話応対や訪問者の対応など1人で留守番ができない。
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。
Ⅲa日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。着替え、食事、排せつが上手にできない、時間がかかる。やたら物を口に入れる、物を拾い集める、俳諧、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為など
Ⅲb夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。ランクⅢaと同じ
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。ランクⅢに同じ
M著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等

引用:厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度

個別機能訓練の目標|短期目標と長期目標

利用者の状況を踏まえたうえで、機能訓練実施のための目標を設定します。3ヵ月の短期目標と長期目標に分けて、それぞれ機能・活動・参加について記載します。

長期目標では、利用者が住み慣れた地域の居宅で可能な限り自立して暮らし続けられるよう座る・立つ・歩くといった身体機能の向上だけでなく、調理・洗濯や掃除・排泄・入浴など居宅における生活行為や買い物や習い事にいくなど社会的関係の維持に関する行為など、具体的な生活での行動を達成することを含めた目標であることが必要です。

短期目標では、長期目標を達成するために必要な行為ごとに細分化して整理します。

記載例は以下の通りです。

長期目標短期目標(今後3ヵ月)
機能

下肢能力・耐久性の向上
認知機能低下に対する対応(メモ等の代償的手段の活用)

下肢能力・耐久性の向上
認知機能低下に対する対応(メモ等の代償的手段の活用)

活動屋外歩行を見守りで1時間程度できる屋外歩行を見守りで20分程度できる
参加

スーパーで買い物ができる
自分で買った食材を使って料理ができる

家族と家の周りの散歩を楽しめる

個別機能訓練項目|プログラム内容や頻度など

実施するプログラム内容、留意点、頻度、時間などを記載します。長期・短期目標をしっかりと設定した後に取り掛かることが必要です。目標達成のためには、おおむね週1回以上の計画的・継続的な実施が目安とされています。

プログラム内容の作成には、短期目標の達成に必要なポイントを利用者の身体機能と照らし合わせながら整理します。現在の困りごとに対してどのような訓練をおこなうと達成できるかを考えて具体的にプログラムを記載しましょう。

記載例は以下の通りです。

プログラム内容留意点頻度時間主な実施者
1下肢と体幹の筋力増強訓練(歩行能力向上のため)高血圧週2回10分

理学療法士
(機能訓練指導員)

2

歩行訓練(屋内、屋外)
(近所への買い物ができるようになるため)
(歩行補助具もあわせて選定)

高血圧と転倒週2回10分

理学療法士
(機能訓練指導員)

3

認知機能低下に対する対応訓練
(買い物や調理メモを見ながら実施できるように)
(買い物リストの作成)

自尊心週2回10分

理学療法士
(機能訓練指導員)

4

買い物訓練
(模擬的にあるいは実際にスーパーなどへ買い物にいく)

高血圧と転倒週2回20分

理学療法士
(機能訓練指導員)

個別機能訓練実施後の評価|身体機能と日常生活能力の変化

プログラム実施後には、利用者の身体機能を日常生活能力の変化を記載します。実施したうえでの記入になるため、初回作成時には記入不要です。2回目以降の際には、実施した結果を踏まえて記載し、目標や訓練項目の見直しが必要な場合は、計画書の更新をおこないます。

以下の2項目について記載します。

  • 個別機能訓練の実施による変化
  • 個別機能訓練実施における課題とその要因

記入例を紹介します。

個別機能訓練の実施による変化個別機能訓練実施における課題とその要因

前回(初回)計画書作成時と比べ、屋外で10分程度見守りで歩行できるようになってきている。
メモも少し活用可能。

長時間の歩行はまだ難しい。
メモの活用も少しずつ定着してきているが継続が必要。

個別機能訓練加算の計画書作成ポイント

目標設定は具体的に記載

長期目標

長期目標は生活機能の構成要素である以下a~cをバランスよく含めて設定されることが求められます。

  1. 体の動きや精神の働きである「心身機能」
  2. ADL/家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」
  3. 家庭や社会で役割を果たすことである「参加」

居宅状況における生活レベルや、地域における社会的関係の維持に関する点などより具体的な目標の達成を目指します。

活動欄に目標を記載する際は、頻度・自立度・目的を明確に記載します。

参加欄に目標を記載する際は、手段・目的を明確に記載すると良いでしょう。

短期目標

長期目標を設定した後は、目標を達成するために必要な行為ごとに細分化し、短期目標として整理する。

短期目標は、より具体的にイメージできるものにするのがポイントです。

チェックシートの活用

生活機能チェックシート、興味・関心チェックシートの内容を個別機能訓練計画書に当てはめることができると、書類に一貫性を持たせつつ、作成効率を上げることにもつながります。

生活機能チェックシート

生活機能チェックシートとは、高齢者や障害を持つ方々の生活機能を評価するためのチェックシートです。これにより利用者の生活の質を向上させるための具体的な支援策が見つかりやすくなります。

生活機能チェックシートで評価する際は、各項目を「自立」「一部介助」「全介助」で評価します。各項目における課題の有無も評価しなければなりません。

評価項目は以下の通りです。

項目
起居動作(基本的動作)寝返り、起き上がり、座位、起き上がり、座位、立ち上がり、立位
ADL(日常生活動作)食事、イスとベッドの間の移乗、整容、トイレ動作、入浴、平地歩行、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロール
IADL(手段的生活動作)調理、洗濯、掃除

参考:厚生労働省「生活機能チェックシート

生活機能チェックシートの評価者は、「一定の研修を受けた者」という要件を満たせば、職種の定めはありません。評価者も毎回同じ職員がおこなう必要はなく、機能訓練計画作成にかかわる職員であればだれでも構いません。

ただし、3ヵ月に1回利用者の居宅訪問をおこない生活機能チェックシートへの評価を実施しなければなりません。

興味・関心チェックシート

興味・関心チェックシートは、個人の趣味や興味、関心を評価するためのチェックシートです。これをもとに利用者がどのような活動に対して意欲や興味を持っているかを把握して、生活の質を向上させるための支援計画や活動プログラムを作成していきます。

興味・関心チェックシートで評価する際は、日常生活や社会生活における各項目を「してみたい」「興味がある」「している」で評価します。

チェックシートの「してみたい」「興味がある」にチェックが入った項目を個別機能訓練計画書の短期目標や長期目標の活動・参加欄に記載することもできます。

評価項目は以下の通りです。

生活行為
  • 自分でトイレへいく
  • 1人でお風呂に入る
  • 自分で服を着る
  • 自分で食べる
  • 歯磨きをする
  • 身だしなみを整える
  • 好きな時に眠る
  • 掃除、整理整頓
  • 料理を作る
  • 買い物
  • 家や庭の手入れ、世話
  • 洗濯もの、洗濯ものたたみ
  • 自転車、車の運転
  • 電車、バスでの外出
  • 動物の世話
  • 孫、子供の世話
  • 友達とおしゃべり、遊ぶ
  • 家族、親せきとの団らん
  • デート、異性との交流
  • 居酒屋にいく
  • ボランティア
  • 地域活動(町内会、老人クラブ)
  • お参り、宗教活動
  • 生涯学習、歴史
  • 読書
  • 俳句
  • 書道、習字
  • 絵を描く、絵手紙
  • パソコン、ワープロ
  • 写真
  • 映画、観劇、演奏会
  • お茶、お花
  • 歌を歌う、カラオケ
  • 音楽を聴く、楽器演奏
  • 将棋、囲碁、麻雀、ゲーム
  • 体操、運動
  • 散歩
  • ゴルフ、グラウンドゴルフ、水泳、テニスなどのスポーツ
  • ダンス、踊り
  • 野球、相撲などの観戦
  • 競馬、競輪、競艇、パチンコ
  • 編み物
  • 針仕事
  • 畑仕事
  • 賃金を伴う仕事
  • 旅行・温泉

参考:厚生労働省「興味・関心チェックシート

こちらも同様に「一定の研修を受けた者」という要件を満たせば、職種の定めはありません。評価者も毎回同じ職員がおこなう必要はなく、機能訓練計画作成にかかわる職員であればだれでも構いません。

生活機能チェックシートと同様に3ヵ月に1度の居宅訪問の際に併せて評価をおこなう必要があります。

個別機能訓練加算の計画書に関するよくある質問

個別機能訓練加算の計画書は1と2の違いはありますか?

個別機能訓練加算(Ⅰ)も(Ⅱ)も計画書に違いはありません。同様に作成してかまいません。

違いとしては、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定する場合には、「生活機能チェックシート」と「個別機能訓練計画書」の2点をLIFEへ提出する必要があります。

LIFEへ提出する個別機能訓練計画の項目は以下の通りです。

  • 計画書の作成日
  • 要介護度
  • 障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度
  • 病名・合併疾患(ICD10における傷病名コードを記載)
  • 個別機能訓練項目(ICFコード・プログラムコードを記載)

個別機能訓練計画書はケアマネジャーに提出しなければなりませんか?

計画書をケアマネジャーに提出する義務はありません。しかし、利用者に機能訓練を提供することをケアプランに明記してもらう必要があるため、情報共有をおこなうことは必須です。

個別機能訓練計画書はサイン不要と聞きました。本当ですか?

令和3年度の介護報酬改定によって、業務負担の軽減のために計画書への同意を示す利用者からの署名や捺印は不要になりました。

しかし、計画書そのものに同意のサインや捺印をもらうことが不要になっただけで、何かしらの形で計画書に対して同意したことを示す署名は必要なので注意しましょう。

個別機能訓練加算の計画書のひな形はダウンロードできますか?

個別機能訓練加算の計画書は、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。生活機能チェックシートや興味・関心チェックシートの様式もございますのであわせてご確認ください。

個別機能訓練加算の計画書を適切に作成し、利用者の能力を維持・向上しましょう

今回は個別機能訓練加算の計画書について解説いたしました。利用者のニーズや状態に応じて具体的な目標を明確にする個別機能訓練計画書は質の高い機能訓練を提供するための要と言えます。医療職や介護職など多職種が連携して評価や訓練をおこなうことで効果的な支援が可能になるでしょう。

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