個別機能訓練計画書は、個別機能訓練加算の算定に必要な書類のひとつです。
利用者の心身機能の維持・向上を目的に「どのような訓練を、どのような目的で、どんな手段で行うか」を明確にし計画を作成する必要がありますが、どのように書いたらよいか悩んでしまう場合もありますよね。
本記事では、個別機能訓練計画書に記載する必須項目を中心に記入例を紹介します。また、作成の際のポイントも紹介しているので参考にしてください。
なお、個別機能訓練加算について振り返りたい方は以下の記事もご確認ください。
個別機能訓練加算とは?基本から算定時の悩みまで詳しく解説
目次
個別機能訓練計画書は、以下の4つのテーマに沿って作成する必要があります。
以下ではそれぞれについて、記入のポイントや記入例を紹介します。
なお、厚生労働省が提供する計画書のひな形を元に解説するのであわせて参考にしてください。
※Excelファイルがダウンロードされます。
利用者の基本情報は、主に以下の5項目を記載する必要があります。
利用者本人の希望・家族の希望・利用者本人の社会参加の状況・利用者の居宅の環境は、居宅訪問を行った際に情報収集をして記載するようにしましょう。
とはいえ、いきなり直接「個別機能訓練を通じてなにができるようになりたいか」を聞いても、良い回答を得られないことがほとんどです。本人や家族の希望を上手く引き出すためには、厚生労働省が提供している「生活機能チェックシート」や「興味・関心チェックシート」を活用するなどの工夫をしてアプローチしてみましょう。
一方で、健康状態・経過の項目は、利用者を担当する医師や歯科医師から正確な情報を得て記入するのがおすすめです。
記入項目 | 記入例 |
利用者本人の希望 | 孫の世話ができるようになる |
家族の希望 | 一人でお風呂に入れるようになる |
利用者本人の社会参加の状況 | 趣味である絵画教室に月1回参加 |
利用者の居宅の環境 | 息子夫婦と同居している。トイレと浴場に手すりがあり、入浴には介助が必要。 |
個別機能訓練の目標を書く際は、参加・活動・機能の3項目において、それぞれ短期目標と長期目標を記載する必要があります。機能・活動・参加はそれぞれ以下の要素を抑えていることが重要です。
目標項目 | 項目の定義 | 記入例 |
機能 | 心身や身体に関する要素 | 筋力や手足の動き、内臓・心臓などの働き |
活動 | 生活行為などの必要行為 | ものを取って手渡すことができる、屋外を歩く |
参加 | 家庭や社会への関り方 | 孫の世話をする、趣味のサークルに行く |
具体的な目標を考える場合は、まずは参加の長期目標を考え、そこから逆算していくのがおすすめです。
例えば、参加の長期目標を「趣味である絵画教室に一人で行けるようになる」と定義した場合、「歩いて絵画教室に行けること」「筆を持って絵を描けること」などが活動目標になります。また、活動目標から逆算して機能目標を考えると、「30分歩行できる体力がある」「一定以上の握力がある」などの目標設定が可能です。
【短期目標】
目標項目 | 記入例 |
機能 | 下肢の筋力を改善する |
活動 | 屋外を一人で歩き続けることができる |
参加 | 一人で散歩に行けるようになる |
【長期目標】
目標項目 | 記入例 |
機能 | 30分歩行できる体力をつける |
活動 | 歩いて絵画教室に行けるようになる |
参加 | 趣味である絵画教室に一人で行けるようになる |
設定した個別機能訓練目標を達成できるよう個別機能訓練項目を検討します。プログラム内容以外にも留意点・頻度・時間の3項目を記載することが重要です。
内容 | 留意点 | 頻度 | 時間 |
下肢筋力向上訓練 | 疲労が見られる場合は休憩をこまめに取りながら実施 | 週3回 | 15分 |
バランス訓練(立位保持) | スタッフの近接介助下で安全に実施 | 週2回 | 15分 |
歩行訓練(歩行器使用) | 環境整備を行い、床の滑りや障害物に注意 | 週3回 | 15分 |
個別機能訓練実施後の変化を記載します。
項目 | 記入例 |
実施による変化 | 歩行訓練を実施した結果、開始当初は5mの歩行で息切れが見られたが、現在は10m程度の歩行が可能となり、ふらつきも軽減傾向がみられる。 |
課題とその要因 | 立ち上がり動作時に膝の不安定さが見られ、立位保持が不安定な時間帯がある。今後は立ち上がり動作の訓練を強化し、体調の変動に応じた柔軟な支援が求められる。 |
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通所介護での個別機能訓練加算を算定するには、「個別機能訓練計画書」の作成が必要です。ただし、運用上の柔軟な対応も認められている部分があるため、効率よく・正しく進めるためのポイントを押さえておきましょう。
個別機能訓練計画書の作成=機能訓練指導員の仕事、と思いがちですが、実際は誰が作っても問題ありません。
たとえば、利用者の身体状況の把握は看護師や介護職員が、ADLの目標は生活相談員が整理し、それを機能訓練指導員が計画書に落とし込む、というように、役割分担することで作成の負担を軽減できます。
通所介護計画書の中に、個別機能訓練に関する記載(目的・具体的内容・頻度など)が明確に盛り込まれていれば、別に「個別機能訓練計画書」という様式を作成しなくても構いません。
つまり、「別紙として作成しないとダメ!」といった決まりはなく、あくまで「必要な項目が計画書の中に含まれているか」が問われます。自事業所の計画書の様式を見直し、記載内容で対応できる場合は、書類を一本化するのも効率化のひとつです。
計画書の作成後は、利用者または家族に対して内容の説明と同意の取得が必要です。ただし、必ずしも「サイン(署名・押印)」が必要というわけではありません。
2021年の介護報酬改定以降、メールなどの電磁的記録でも問題なく要件を満たすことができます。サインにこだわりすぎて説明の機会を逃すことがないよう、柔軟な運用を心がけましょう。
個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定する場合は、国が運用する「LIFE(科学的介護情報システム)」への情報提供が必要です。LIFEでは以下のようなデータを送信する必要があります。
LIFEへの入力や送信はやや手間がかかるため、記録のタイミングを決めておく、専用の担当者を設けるなど、事業所内でルール化するとスムーズです。
個別機能訓練計画書は、個別機能訓練加算の算定に必要な書類です。
作成には記載が必要な項目が多く、多くのスタッフとコミュニケーションを取りながら分担して作成する必要があるため、作成が面倒くさいと感じることもありますよね。
書類の作成や加算の運用に関して不安がある場合は、介護の事務作業に特化したプロに相談するのも一つの手です。
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