訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. 介護保険法
  3. 科学的介護
  4. 今さら聞けない 科学的介護とは?
運営基準

今さら聞けない 科学的介護とは?

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

本記事では
科学的介護についてご紹介していきます。

 

科学的介護(科学的裏付けに基づく介護)とは

科学的介護とは(科学的裏付けに基づく介護)とは

1990年代以降、医療分野においては、「エビデンスに基づく医療」が実施されています。

エビデンスに基づく医療とは、「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと」と定義されています。

医療業界では、多数の症例や臨床結果等を記録し分析結果を論文等に残し業界で共有することにより、積み上げたエビデンスを患者に示すことができています。このエビデンスに沿った情報を「科学的根拠」と呼び、介護業界においても医療業界同様に介護サービスのエビデンスを集め、サービスやケアの内容等の客観的情報を利用者に提示できるようにする必要があり、このことを「科学的介護」と言います。

これまで有識者によりエビデンスになり得るデータが何か、その収集方法はどんなものが良いか等の検討がされてきており、2021年現在は『科学的介護推進体制加算』が、科学的介護情報システム「LIFE」の運用開始とともに新設されました。

LIFEとは

 エビデンスに基づいた自立支援・重度化防止等を進めるためには、科学的に妥当性のある指標等を
収集・蓄積及び分析し、また分析の結果を現場にフィードバックをする仕組みが必要です。

この実現に向けて、厚生労働省では平成 28 年度から通所・訪問リハビリテーションの計画書等の情報を収集し、フィードバックを行う VISIT、令和2年度からは高齢者の状態やケアの内容等の情報を収集するCHASEを運用してきました。令和 3 年度からは、VISIT と CHASE の一体的な運用が開始される
とともに、名称が「科学的介護情報システム(LIFE)」に変更になりました。


LIFE では、計画書の作成等が要件となっている加算において実施されている PDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルについて、データに基づくさらなる PDCA サイクルを推進し、ケアの質の向上につなげることを目指しています。

具体的には、全国の介護施設・事業所において作成・記録されている利用者の状態やケアの実績等(計画書等の様式等)のデータを、LIFE で収集・蓄積し、また蓄積したデータに基づくフィードバック情報を計画書等の改善に活かしていただくことで、PDCA サイクルの好循環を実現し、質の高いケアにつなげていくことが期待されています。

 

科学的介護に期待されていることと懸念事項

通知から実施までの期間

科学的介護に期待されていること

①利用者が適切な介護方法を選べる

自分がどの様な状態で、どのような支援を受ける事が適切かを科学的な根拠で示されることにより、俯瞰で認識でき、適切な介護サービスを選択することができます。また、改善例などを見ながら自分にとって達成可能な目標を立てる事も可能になります。

②自立支援・重度化防止に役立つ

分析されたデータや科学的根拠に基づいた介護サービスや支援を受ける事で、より確実なADL、QOLの維持向上につなげる事ができます。

③介護職や事業所の質が向上

実施すべき支援が科学的根拠により導き出されるため、介護の質向上につながります。

④介護給付費の削減

受けるべき人に受けるべき介護サービスが選択されるため、過剰サービスや不適切な介護サービス費が削られます。

科学的介護の懸念事項

①売り上げが減る

科学的根拠に基づき介護サービスを提供するようになるという事は、根拠のない介護サービスを提供することは出来なくなることを意味しています。

②ICTに強くない職員の退職リスク

根拠に基づいたサービス実施、結果、評価と手順を踏み、それらのデータを積み重ねていき、更に効果のある介護サービスを探していくのが科学的介護です。アナログで出来る事も限られていきますので、これについていけないと考える高齢職員等は退職のトリガーとなり得ます。

 

今から訪問介護が準備すべきこと

現在は施設やリハを中心に『データの収集』を行っている段階ですが、5年後10年後はこのデータに基づき、介護サービスを位置付けるためには『科学的な根拠』が必要になってくることでしょう。

科学的な根拠を訪問介護にあてはめると、『掃除』支援が必要な対象利用者とデータが認めているか、『掃除』を実施することで得られる効果は何か、その効果を得るための『期間』は何か月なのか、等、根拠に基づきPDCAをたどっていくこととなります。

現在でも、アセスメントは計画を立てるための根拠書類であり、アセスメントで導き出された課題を解決するのが計画、ヘルパーにより支援が実施され、これを評価するのがモニタリングです。

これまで『この利用者は部屋が汚いから掃除のサービスが必要』と掃除の支援を行ってきた事業所は、5年後10年後にこれまで通りの支援を実施する事が出来なくなってしまいます。

長く介護事業を行っていくためには、科学的介護を意識し、現在の介護サービスに対しても『なぜこの介護サービスを提供するか』という根拠を明確に示せる訓練をしておくことが大切です。

さいごに

『加算』は、介護報酬改定のたびに新設されていきます。国が評価したい、進めていきたい施策はこの『加算』が設定されますので、施設、リハを中心に科学的介護に関する加算が過去2回の報酬改定で新設されています。

訪問介護においては、現段階で科学的介護に関する加算はなく、介護の質が高い事業所を評価する特定事業所加算がメインです。

科学的根拠の流れに乗りながら、適正化した介護サービスで下がった売り上げは特定事業所加算を取得して埋めていくという運営が最も望ましいと言えます。