毎日のケア、本当にお疲れ様です。物価は上がるのに人手は足りない……。今の介護現場は、かつてないほど厳しい状況にありますよね。
実は今、国の方針で「経営情報の報告(見える化)」が義務化されるなど、大きな変化が起きています。「また事務作業が増えるの?」と思われるかもしれません。でも、これだけは言わせてください。
この「面倒な報告」こそが、私たちの給与や待遇、そして事業所の存続を守るための「最強の武器」になるのです。
今回は、少し難しいニュースの裏側にある「現場が知っておくべき真実」を、わかりやすく解説します。
ニュースでよく聞くこの言葉、簡単に言うと「介護業界の健康診断」です。
国は3年に一度、介護の報酬(サービスの定価)を見直します。その時、「介護事業所はどれくらい儲かっているのか?」「赤字で苦しいのか?」を判断する材料にするのが、この調査です。
毎年A4サイズの封筒が事業所に届き、事業所の人数やご利用者の人数などを答えるアンケート冊子のようなものが届いていますが、これがこの調査のもととなる物です。
このアンケートを集計した結果で
・利益が出すぎていると判断されたら…
→「余裕があるね」と報酬を下げられる(=売上が減る)・実態通り「苦しい」と伝われば…
→「支援が必要だ」と報酬が上がる可能性がある
つまり、この調査結果が介護報酬改定を直撃するのです。
最新の調査(令和5年度)で、衝撃的な事実が判明しました。
地域福祉の砦である特別養護老人ホーム(特養)の収支が、制度始まって以来初めて「マイナス(赤字)」になったのです。
この理由は明らかで、電気代もガス代も、食材費も上がっているのに、介護報酬は簡単に上がらず収支のバランスが崩れたことです。
直近では物価高の対策として補助金なども用意されていますが、人材不足の中でこの申請に時間を割く事さえ困難な法人も沢山存在します。
一見、暗いニュースに見えますが、これは「もう現場の努力だけで乗り切るのは限界です」という悲鳴が、数字として国に届いたとも言えます。国も「これは非常に厳しい状況だ」と認めざるを得なくなっていると言えます。
一方で、令和6年度の改定で訪問介護の報酬が引き下げられたことは記憶に新しいと思います。その根拠とされたのが「訪問介護は利益率が7.8%もある(儲かっている)」というデータでした。
「そんなわけない!」と私たち現場は思いましたよね。なぜこんな数字が出たのかと言えば、この調査が原因です。
前提としてこの調査に返答できるのは、この調査の意味を知っていて、返答できる余力のある事業所です。
「人が居なくて管理者もサービス提供責任者も現場に出ざる得ない」「忙しすぎて回答できなかった」事業所の声が届かなかったからです。事務員もいない、ギリギリで頑張っている赤字の事業所は、調査に答える余裕がありませんでした。
その結果、比較的余裕のある事業所のデータばかりが集まり、「平均すると儲かっているように見えてしまった」のです(これを専門用語で生存者バイアスと言います)。
沈黙は、誤解を生んでしまいます。これが「データを報告しないこと」の怖さです。
「ちゃんと実態を見てほしい!」という声を受け、国も動き出しました。
2027年の改定に向けた次の調査(令和7年度)では、今まで見落とされていた「隠れたコスト」も調査項目に入ります。
・移動時間の実態:ヘルパーの移動にかかる時間や手段
・インフレの影響:食材費の高騰がどれくらい経営を圧迫しているか
・ICT・ロボット費用:導入費だけでなく、保守点検などのランニングコスト
今まで「見えない努力」でカバーしていた部分が、ようやく評価のテーブルに乗るようになります。
2024年度から、原則すべての事業所に経営情報の報告が義務化されました。「やらなかったら罰則(指定取消など)」という怖い側面もありますが、私たちはこう捉えましょう。
「正しいデータを出すことは、正当な報酬を要求する『権利』を得ること」正しく報告しないと、また「みんな儲かっている」と勘違いされ、報酬を下げられてしまうかもしれません。
2027年の改定で、現場の実情に合った報酬を勝ち取るためには、感情論ではなく「精緻なデータ(証拠)」が必要です。
今は事務負担が増えて大変な時期ですが、このデータ報告は、自分たちの首を絞めるためのものではなく、自分たちを守る「盾」を作る作業です。
特に複数の事業所を持つ法人の場合は、本部が一括して回答することで、より正確に、ミスなく「現場のコスト」を計上できる仕組みもあります。
「私たちの現場は、これだけコストがかかっていて、これだけ大変なんです。」
胸を張ってそう言えるよう、正しいデータを世の中に示していきましょう。
それが、2027年に明るいニュースを聞くための第一歩になります。