この記事では、2024年に向けた介護報酬改定の議論についてご紹介をしてまいります。
次回の介護報酬改定は、2024年に控えています。
2024年は医療保険・障害者総合支援法も改定を迎えるため、医療・福祉にとって大きな転換の年になると言えます。
そんな大きな転換に向け、私たち事業所においては改正の動向や情報をいち早くキャッチし、改定の前に出来る準備は取り掛かることが大切です。
令和4年11月時点で正式に決定しているものは有りませんが、国の予算に深く関わる財務省が議論している内容は以下の通りです。
財政制度等審議会(2022年5月25日)『歴史の転換点における財政運営』P66~
この後介護保険・障害者総合支援法の部会で議論を詰めていくこととなりますが、国の予算が無ければ話を進めることも十分に出来ませんので、財務省の示す意向は大きく各審議会に影響を与えることとなります。
次項より、現在財務省の方で議論されている2024年に向けた内容について解説していきます。
規模別に見ると、規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高い結果となっており、介護分野では主として収入面が公定価格によって規定されるという特徴がありますので、費用面の効率化が最も重要です。
このことから、備品の一括購入、請求事務や労務管理など管理部門の共通化、効率的な人員配置といった費用構造の改善、さらにはその実現に資する経営の大規模化・協働化が推奨されています。
また、小規模な法人が他との連携を欠いたまま運営を行うということは、新型コロナウイルスのような新興感染症発生時や災害時において、業務継続も施設内療養の実現もおぼつかなくなってしまう。このため、根本的に介護事業の経営の大規模化・協働化が抜本的に推進されるべきであるとしています。
医療・障害の情報公表制度では、経営状況の見える化が義務化されており、この目的は経営の大規模化・共同化を推奨していく動きの後押しをしていくためだと議論されています。
このことからも、小規模事業所においては『共同化』が大きなポイントとなることは間違いありません。
利用者負担については、2割・3割負担の導入が進められてきましたが、2022年に行われる後期高齢者医療における患者負担割合の見直し等を踏まえ、介護保険サービスの利用者負担も原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、現役世代との均衡の観点から現役世代並み所得(3割)等の改定を図る必要があると議論されています。
居宅介護支援(ケアマネジメント)については、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担をとらない例外的取扱いがなされてきました。
しかしながら、介護保険制度創設から 20 年を超えサービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることを踏まえれば、2024年から利用者負担を導入することが『当然』であるとされています。
また、居宅介護支援事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、「法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性の問題が存在することから『介護報酬のために福祉用具だけを位置付けているサービスの報酬を減らす』ことも議論に挙げられています。
地域包括ケアシステムを推奨し、居宅での生活を基本とする概念のもと、これまで施設の室料と光熱費は介護給付費の対象とされてきました。
これを今後は、居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料及び光熱水費)を求めていく観点から、給付対象となっている室料相当額について、基本のサービス費用から外す議論がなされています。
制度創設以降、様々な政策上の配慮を理由に、区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加していることについて、制度創設時に企図したように、設定された限度額の範囲内で給付を受けることを徹底すべきであり、特に居宅における生活の継続の支援を目的とした加算について区分支給限度額の中に戻すべきだという議論がされています。
地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、各地方公共団体が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、その枠内で交付金を措置する仕組みとされています。
多くの地方公共団体がこの上限を超えて総合事業のサービスを提供しているため、今後はこの上限を守る様厳格にルールを徹底していくという事が言われており、2024年の改定を待たず2022年既に運営のガイドラインが見直され、上限を守る様にという通知が行われました。
要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討し、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべきであるという議論が進んでいます。
近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった医療系の居宅系サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加しています。
少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、居宅療養管理指導費は算定できない」と算定要件が明確化されたことも踏まえ、2024年の改定を待たずに算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようにすべきであると言われています。
ケアプラン点検等の実施が位置付けあっれている『介護給付費適正化事業』において、医療費適正化計画と比較すると適正化計画は殊更に費用節減や効率化の観点が乏しいことが問題視されています。
介護給付費の地域差について、一人当たりの介護給付費を都道府県別に比較すると、居宅サービスの内訳では訪問介護の地域差が最も大きく、地域差の是正には、広域的な要因分析が不可欠であり、都道府県が主体的に市町村の適正化事業の進捗状況の公表など「見える化」を進めることが重要だとされています。
都道府県が指定権者である居宅サービスのうち、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護について、市町村が、都道府県に事前協議を申し入れ、その協議結果に基づき、都道府県が指定拒否等を行う枠組みがありますが、現在は指定の拒否が行われることはほぼ有りません。
サービス見込み量を超えた場合に、市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否ができるようにし、保険者である市町村が実際のニーズに合わせて端的に地域のサービス供給量をコントロールできるようにすべきだと議論されています。
令和4年11月14日に行われた審議会では、地域包括ケアシステムの推進の中で通所+介護の複合サービスが提案され、議論を進めていく方向性で話が一部進んでいます。
通所介護においては、玄関までの送迎を中心とした支援が行われていますが、前後の支援を通所介護が提供できるようになるなどの利点があります。
市町村を指定権者とする「地域密着型サービス」のスキームに、新たなサービスを位置付ける方向で調整していくとされ、詳細は今後細かく決定していくとしています。
財務省での新たな議論が令和4年11月7日に実施されました。財政制度分科会(令和4年11月7日開催)
この中で次の2024年度の介護保険制度改正にも言及し、以前から実現を迫っていた要介護1と2の訪問介護、通所介護を総合事業へ移行することについて、具体化に向けた検討を進めるべきと改めて提言しています。
ただし、これまで介護業界や実際のご利用者、家族が強く反発していることから『段階的にでも(具体化すべき)』との文言が新たに追加されており、事実上、2024年度の介護報酬改定では段階的な移行の『スタートを切る』にとどまる予測です。
本日は、令和4年11月現在の情報についてご紹介させていただきました。
介護報酬改定については、引き続き詳細をご紹介してまいりますので、準備を怠らないようにしましょう。