本記事では、介護事業所におけるBCP策定のポイントについてご紹介していきます。
令和3年の介護報酬改定の改正内容に、厚生労働省から「業務継続に向けた取組の強化」を加えたことが発表されました。これにより介護サービス事業者は、業務継続に向けた計画等の策定などが義務付けられることとなります(3年の経過措置期間あり)。
BCPとは、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことをBCP(事業継続計画)(※1)(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。 (※1)介護分野では、BCPを業務継続計画と呼びます。
介護サービスは、利用者の生活を支える上で必要不可欠なものです。そのため、自然災害の発生や、感染症の流行によって介護サービスが停止すると、利用者の生活に大きな支障が生じます。
そこで介護事業者は、介護サービスが中断しないよう準備するとともに、中断した場合でも速やかに復旧させるため、あらかじめ検討した対策をBCPの形にまとめておくことが求められています。
3年の猶予が与えられたBCP策定ですが、3年後は作成することが義務となるため、未作成の場合は『運営基準違反』に該当してしまうことに注意が必要です。
このことから、厚生労働省は作成にあたっての研修資料を動画で配信しています。
厚生労働省掲載先:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
自然災害と感染症の2つの柱から構成され、それぞれ異なる対象や影響範囲を説明しています。
BCP策定でのポイントは以下3点です。
1. BCP作成時は、ひな形などを有効に活用する。
2. BCP作成後は、定期的に訓練(シミュレーション)を実施し、職員への周知と課題を洗いだす。
3. 課題を見直し、BCPの修正を繰り返すことで、施設・事業所に適したより良いBCPが作成できる。
介護サービスにおけるサービスの継続には、訪問事業所においては新型コロナウイルス感染症拡大時に備え事前の準備を入念に進めることが大切です。
また、業務の縮小や事業所の閉鎖を余儀なくされる場合でも、利用者への影響を極力抑えるよう事前の検討を進めることも重要です。
利用者の安全確保のために、介護保険のサービス利用者(65歳以上の高齢者及び40歳以上の特定疾病のある方)は、抵抗力が弱く、感染すると重症化するリスクが高いため、予防が非常に重要です。集団感染が発生した場合、深刻な人的被害が生じる危険性があるため、利用者の安全確保に向けた感染防止策をあらかじめ検討し、確実に実行することが求められます。
利用者の安全だけでなく、職員の安全確保感染拡大時に業務継続を図ることは、職員の感染するリスクを高めるほか長時間勤務や精神的打撃など職員の労働環境が過酷になることが懸念されます。労働契約法第5条(使用者の安全配慮義務)の観点からも、職員の感染防止対策とあわせて、職員の過重労働やメンタルヘルス対応への適切な措置を講じる必要があります。
新型コロナウイルスも感染者数が減り、少しづつ町が賑わいを取り戻してきています。
一方で関東地方を中心に地震が多発しており、私たち介護職は常にご利用者様と自分たちの安全確保を念頭に動かなければいけないことを痛感させられます。