この記事では、令和3年の介護報酬改定項目である高齢者虐待防止の推進についてご紹介します。
目次
今回の改定については、省令の改正となっていますので、運営基準の変更が必要な項目でした。
運営基準の中に、入所者・利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、従業者に対しては、研修を実施する等の措置を講じなければならない旨を規定しておく必要があります。
以下改定内容です。
【虐待の防止のための措置に関する事項 ※3年間の経過措置期間を設ける】
①虐待の防止のための対策を検討する委員会の設置を行う
・委員会は定期的に開催すること
・委員会の決定事項等は従業者に周知徹底を図ること
②虐待防止のための指針を定める
③虐待防止のための研修を定期的に実施する
④虐待防止のための担当者を置く
■身体的虐待 ・・・いわゆる暴力など
■介護・世話の放棄 ・・・いわゆるネグレクトといわれるもの
■心理的虐待 ・・・高齢者に対する暴言、等の心理的外傷を与えるもの
■性的虐待 ・・・利用者にワイセツな行為を行うこと又は強要すること
■経済的虐待 ・・・本人の同意をなくして金銭を使用する、または制限すること
虐待を起こさないようにするためには、早期発見できるように研修や認知症等の基礎知識を学習し、特性に応じたケアが提供できるようにすることが求められています。
■高齢者虐待・不適切なケアの未然防止のための取り組み
・事故や苦情の分析と再発防止に関する取り組み
・提供する介護サービスの点検と、不適切事例の改善等による質の向上
・管理職・職員が一体となって介護の質を高めるための取り組み
・教育研修や認知症ケア等に関する理解を深めるための研修等
同時に、職員のメンタルヘルスケアも含め、指針やマニュアル等の作成を行うとともに、作成後は定期的に見直し、必要に応じて更新していくことが大切です。
定めるべきことの詳細については以下の通りです。
虐待発生時の対応
虐待と思われる事象が起こった時に、速やかに報告する体制や申し出ることができるように体制を整備する必要があります。虐待に対する責務を果たすため、事業所において、虐待を早期発見するために、日常的にどのような対応をすべきかを研修などを通し周知しておく必要があります。
虐待防止責任者と担当者の責務
この責任者と担当者が何を行うべきであるかということを明確にしておくことが求められます。例えば、以下のようなことを定め、責任者に認識してもらうことが大切です。
【虐待防止責任者(管理者)の責務】
①虐待の内容と原因の解決策
②当事者との話し合い
【虐待防止担当者(相談員)の責務】
①虐待通報受付・・・利用者及び家族、職員からの受付
②虐待の内容と利用者の意向の確認及び記録
③虐待防止責任者への報告
【マニュアルの作成】
このような責務や通報を受けた後の流れ、研修の実施等はマニュアルとして、作成する必要があります。これらは市町村が作成している指針や方針書を参考にし、また、これらのマニュアル等については、求めに応じいつでも閲覧できるように文書の掲示及びホームページ上での公表等も視野にいれましょう。
居宅療養管理指導や居宅介護支援などの小規模な事業者では、実質的に従業者が1名だけということがあり得る。このような事業所でも虐待防止委員会の開催や研修を定期的にしなければならないか。
(答)
・ 虐待はあってはならないことであり、高齢者の尊厳を守るため、関係機関との連携を密にして、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会及び研修を定期的に実施していただきたい。小規模事業所においては他者・他機関によるチェック機能が得られにくい環境にあることが考えられることから、積極的に外部機関等を活用されたい。
・ 例えば、小規模事業所における虐待防止委員会の開催にあたっては、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等他委員会との合同開催、関係機関等の協力を得て開催することが考えられる。
・ 研修の定期的実施にあたっては、虐待防止委員会同様法人内の複数事業所や他委員会との合同開催、都道府県や市町村等が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催等が考えられる。
「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月 26 日)」
虐待防に関する取り組みは、3年の経過措置が定められていますが、高齢者における虐待防止の体制は早期に整えるべき体制です。
経過措置の満了を待たず、取り組みを実施しましょう。
まだ、特定事業所加算を取得されていない事業所の方は、まず情報収集から始めることをお勧めいたします。