通所介護は、他の介護施設に比べて給与が低いと言われることがあります。
ただし、厚生労働省によると、施設間の平均賃金に大きな差はありません。
この記事では、通所介護で働く職員の賞与がどのくらいなのかを介護サービスの種類ごとにご紹介していきたいと思います。
また、通所介護の賃金を上げる方法についても説明します。
目次
介護施設にはさまざまなサービスを提供する事業所があり、ボーナスの有無や金額は種類によって異なります。
介護労働安定センターの調査によると、介護老人保健施設(特別養護老人ホーム)などの居住地は、 約9割(90.1%)の方が「定期的にボーナスを支給している」と回答してます。
通所型事務所は約7割(69.8%)、訪問型の事業所は約6割(59.8%)にとどまります。
つまり、入所型の事業所であれば賞与をもらえるケースがほとんどですが、訪問型の事業所は比較的賞与を貰えないケースが多いようです。
通所型に賞与があるかどうかは、勤務先によって異なります。
賞与は本来、通常の賃金とは別に支払われる特別賃金なので、会社によっては、賞与、賞与の支給回数、賞与の計算根拠(○月など)、賞与としての支給額も含めて月給を高めに調整している場合があります。
・介護老人福祉施設(特養):約79万円
・介護老人保健施設(老健):約69万円
・特定施設入居者生活介護:約52万円
・訪問介護:約44万円
・通所介護(デイサービス):約48万円
・認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム):約38万円
このデータから判断すると、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)など、入所型サービスを提供する施設はボーナスが高い傾向にあります。
また、介護業界でも、他の業界と同様に、ボーナス額は事業所の規模に応じて賞与も高まります。
入所型に比べて、訪問型、通所型に中小企業が多いことも賞与額の差の要因となっています。
特養・グループホーム・有料老人ホーム・デイサービスなど、介護サービスによっても賞与額の平均は異なります。
介護サービスの種類 | 平均賞与 |
訪問介護 | 438,390円 |
通所介護(デイサービス) | 484,638円 |
通所リハビリテーション | 585,235円 |
短期入所生活介護 | 471,402円 |
小規模多機能型居宅介護 | 446,501円 |
看護小規模多機能型居宅介護 | 426,141円 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 376,956円 |
介護老人福祉施設(特養) | 785,509円 |
介護老人保健施設 | 689,128円 |
賞与は介護サービスの種類によって大きく異なりますが、平均が最も高いのは特別介護職員です。
特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームなどの入所型施設で働く方のボーナスは、デイサービスなどの訪問型や通所型に比べて高額になる傾向にあります。
通所型事業者は、夜勤がないなど働き方に幅がありますが、賞与が安いので、仕事量や給与、賞与を天秤にかけて選ぶ必要があります。
介護職といってもさまざまな職種があり、職種によっても、ボーナス額は異なります。
職種 | 平均賞与 |
訪問介護員 | 428,909円 |
介護職員 | 541,988円 |
サービス提供責任者 | 599,029円 |
生活相談員 | 649,719円 |
看護職員 | 691,858円 |
介護支援専門員 | 680,934円 |
PT・OT・STなど | 664,383円 |
管理栄養士・栄養士 | 721,324円 |
介護職の種類によって約30万円の差があります。
生活相談員、看護職員、管理栄養士など、資格を活かせる職種は平均賞与額が高いです。
昇給を目指すなら、キャリアアップのために上記の職種を目指すのもおすすめです。
年齢別の平均賞与額
介護職員の給与は、年齢によっても異なりますが、ピークを迎えるのは40代です。
年齢階級 | 平均賞与 |
20歳未満 | 366,710円 |
20歳以上~24歳未満 | 466,523円 |
25歳以上~29歳未満 | 511,542円 |
30歳以上~34歳未満 | 555,137円 |
35歳以上~39歳未満 | 596,404円 |
40歳以上~44歳未満 | 633,401円 |
45歳以上~49歳未満 | 628,553円 |
50歳以上~54歳未満 | 606,041円 |
55歳以上~59歳未満 | 631,962円 |
60歳以上~64歳未満 | 510,790円 |
65歳以上~69歳未満 | 401,419円 |
70歳以上 | 348,446円 |
介護職の平均賞与は、年齢に応じて35万円から63万円で、年齢とともに高くなります。
しかし、40 代は 60 万円台をピークに、その後は徐々に下落傾向にあります。
また、介護職員の年齢幅も広く、20代から定年を過ぎた65歳以上の社員もいるため、給与の幅も広いです。
年代別でみた賞与は、40代をピークに次第に下がっていきますが、一方で勤続年数が長いほど介護職員の賞与は上がる傾向にあります。
勤続年数 | 平均賞与 |
1年未満 | 306,356円 |
1年以上~2年未満 | 370,337円 |
2年以上~3年未満 | 477,738円 |
3年以上~4年未満 | 501,625円 |
4年以上~5年未満 | 527,317円 |
5年以上~10年未満 | 574,227円 |
10年以上~15年未満 | 672,927円 |
15年以上~20年未満 | 797,889円 |
20年以上 | 988,542円 |
勤続年数による賞与の平均額は、勤続1年目と勤続20年以上で30万円から100万円と幅が広いです。
勤続年数と平均賞与はほぼ比例しており、20年以上の勤続者の平均賞与は100万円近くになります。
夜勤のない通所介護の平均賃金は、夜勤のある他の介護職よりも低い傾向にあります。
「給与」とは、当施設が支払う手当および賞与を除く基本給をいい、「給与」には施設から受け取るすべてのものを含みます。
厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、正社員の介護職員の平均給与は278,180円(月給、常勤者)です。
アルバイトの平均給与は135,020円(時給・アルバイト)です。
パート・アルバイトの場合、勤務時間によって時給や時給が大きく異なりますが、家庭の事情に合わせて勤務時間やシフトを変更しやすいというメリットがあります。
一方、正社員は勤務時間や曜日が決まっているが、その分給与は安定しています。仕事の責任は重くなりますが、アルバイトよりも福利厚生や各種手当、賞与などの福利厚生が充実します。
参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 – 厚生労働省
通所介護の職員として給与・給料を上げるには「資格を取得する」「役職に就く」「経験を積む」等といった方法があります。
下記で詳しく解説するので、参考にしてみてください。
有資格者は給与面でも賞与面でも有利なため、賞与を増やしたい場合はまず資格を取得する必要があります。
介護資格は、一般的に「初任研修」→「インターンシップ」→「介護職員」の順で取得します。
資格を取得すると、賞与額だけでなく、他の多くのメリットも得られます。
給与に関しては、資格を取得することで得られるメリットとして、資格手当の受給と給与のアップが挙げられます。
特に介護福祉士資格は実務経験と専門知識が必要な国家資格であり、取得は容易ではありませんが、取得すれば職場での待遇が期待できます。
介護職員の経験を積みながら給与アップを目指す方におすすめの資格です。
介護職員の年収は、資格の有無によって大きく異なります。
特に、介護福祉士やケアマネジャーなどの上位資格を取得している場合は、基本給が高くなり、資格手当も加算されるため、無資格者よりも多くの収入を得ることができます。
保有資格 | 平均給与 |
保有資格なし | 271,260円 |
介護職員初任者研修 | 300,510円 |
実務者研修 | 307,330円 |
介護福祉士 | 328,720円 |
介護支援専門員 | 362,290円 |
社会福祉士 | 363,480円 |
参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 – 厚生労働省
介護職のキャリア形成は、一般的に介護職員初任者研修→実務者研修→介護福祉士→ケアマネージャーとなります。
順次資格取得しながら、一般介護職員から、フロアーリーダーや管理職の各ポジションを目標にすることができます。
介護施設によっては資格取得の支援制度がある場合もあるので、就職活動の際は制度があるか確認することをおすすめします。
また、利用者の送迎業務も通所介護で行うことができます。
送迎をすれば手当が出ますので、「普通自動車免許」を取得して仕事の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
賞与アップには、役職を経験することがおすすめです。
介護職には「主任」「ユニットリーダー」「サービス責任者」などの役職があります。
リーダーシップを担う小規模なチームの責任者、たとえばフロアリーダーは、役職として大きな重要性を持たないかもしれませんが、そのような地位に就くことで手当や昇進の面で利益があります。
そのような地位に就くことで、重要な役割を担い、プレッシャーも増すかもしれませんが、同時にボーナスの額も増加することが期待できます。
しかし、管理職の経験は転職の際に大きなアドバンテージとなるため、条件交渉がしやすいなど、将来的により良い職場に転職したい方にも大きなアドバンテージとなります。
通所介護の管理者や生活相談員のような役職に就けば、役職手当がもらえるので昇給が可能です。
厚生労働省「平成33年度 介護福祉士の報酬に関する調査結果」によると、通所介護一般職の平均給与は271,940円、管理職の平均給与は325,020円。およそ、約53,000円の差があります。
昇給制度のある通所介護なら、経験年数を積むことで、給料(基本給)を上げられる可能性があります。
下記は、厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」をもとにした、勤続年数別の給料です。
継続年数 | 平均給料額 |
1年(勤続1年~1年11か月) | 182,860円 |
5年(勤続5年~5年11か月) | 173,400円 |
10年(勤続10年~10年11か月) | 191,350円 |
15年(勤続15年~15年11か月) | 193,810円 |
20年以上 | 217,840円 |
経験年収1年の給与は約18.3万円ですが、10年後は約19.1万円と約8千円アップします。
20年後は約218,000円となり、経験1年分の給与に比べて約35,000円高くなります。
通所介護で働きながら給料を上げるためには、地道に経験を積むことが大切です。
参考:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
より良い条件で働きたいなら、施設長や上司にアドバイスを求めるのもひとつの方法です。
職場の施設長や上司に問い合わせをするのは、とても勇気のいることですが、賞与をアップしてほしい・賞与制度を導入して欲しいといったスタッフの声を伝えることで、職場の処遇改善につながっていきます。
しかし、この方法は短期間で結果を出すのは難しいです。
現在の職場に長期務めることを想定して、長期的に待遇を改善する方法として、これを試してください。
通所介護は基本的に日中のみの利用ですが、施設によっては宿泊できる施設もあります。
夜勤の時給が通常よりも高いので、週に1回でも夜勤の機会があれば給料アップを実感できます。
また、施設や事業所によって給与の内訳が異なるため、「賞与あり」「退職金あり」「昇給あり」など条件の良い職場を探すのも1つの方法です。
たとえば、多くの事業所を持つ大企業は、給与が充実している傾向があります。
しかし、介護職を探す際には、給与だけでなく職場の雰囲気ややりがいなどの要素も重要です。
介護職の内、正社員の69.5%、非正社員の38.5%が賞与を取得しており、その数は年々増加しています。
介護職の処遇改善に向けた取り組みが進められているため、この傾向が続けば、賞与なしの割合が低下する可能性があります。
参考:介護労働安定センター令和元年度「介護労働実態調査」の結果
介護職の賞与が今後も増加し続ける理由の一つに、「介護職員処遇改善加算」の実施があります。
介護職員処遇改善加算は、介護職で働く人の所得向上を目的として、介護職員1人当たり月額37,000円を対象事業者に給付する制度です。
そのため、事業者では介護職員処遇改善割課金をボーナスとして支給する場合もあり、平均支払額は増加傾向にあります。
しかし、介護の仕事に従事している人の中には、賞与も出ず月給も上がってない人も多く、今は恩恵を受けているとは言えません。
介護職員全員のボーナスアップにはまだまだ課題が多いようです。
厚生労働省は、介護職員の待遇改善の実施により、月々の昇給を行う代わりに賞与が支給されない事態を避けるため、「黒字事業所の賞与減額の禁止」を通知しました。
つまり、職場の経営が黒字である限り、ボーナスカットにはなりません。
現在勤務している事業所の経営状況が気になる場合は、施設長の上司に聞いてみることをお勧めします。
デイサービスの給料についてよくある質問に回答します。
「どれくらい給料がもらえるのか知りたい!」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
デイサービスで働く介護職員の給与は、約27万8,000円で、年収は、約334万円です。
この金額を安いと思うかどうかは人それぞれですが、普通に生活できます。
介護職員の給与は、施設や資格の種類によって異なりますので、あくまでも目安として参考にしてください。
通所介護で働く介護者は、特別養護老人ホームや老人介護施設などの居住施設で働く介護者よりも給料が低い傾向があります。
これは、多くの通所介護が日勤のみのサービスを提供し、夜勤手当を受け取っていないことが原因である可能性があります。
賃金は低めになりがちですが、身体への負担が少ない施設ですので、賃金だけに目を向けるのではなく、昼間のサービスのメリット・デメリットを考えたほうがよいでしょう。
令和2年度「介護労働実態調査」によると、介護福祉士の平均賞与額(無期雇用者/月給)は626,094円です。
これはあくまでも平均値ですので、職場によって異なります。
雇用主は賞与を支払う義務がなく、一部の職場には賞与がありません。
一般的には、夏季と冬季の年2回支給されるケースが多いです。
参考:公益財団法人「介護労働安定センター」
基本給が高い施設は、介護老人保健施設(特別養護老人ホーム)、訪問介護事務所、通所介護などですので、賞与も高めと期待できます。
一般的に規模が大きく、基盤がしっかりしていて、福利厚生が充実している施設は、基本給も高くなりやすいので、賞与も高くなります。
介護職の賞与を上げる方法としては、「勤続年数を重ねる」「経験を積みキャリアアップをはかる」などがあります。
賞与を簡単に上げられない場合、1 つの方法は、より給与の高い職場に移動することです。
夜勤手当がないため、通所介護の平均賃金は低くなる傾向にあります。
しかし、日勤のみの勤務なので、「夜勤は体に悪い」「日中は育児や介護で働きたい」という方には働きやすい環境です。
通所介護で給料を上げたいなら、『正社員になる』『経験を積む』『資格を取得する』などの方法を試してみてください。