通所介護は、利用者が可能な限り在宅で自立した日常生活を送ることができるよう、引きこもりの解消・心身機能の維持・家族の介護の負担軽減などが目的です。
2015年の改定では、これらの目的をより強く反映した改定内容となりました。
今回の記事では、通所介護における2015年の改定内容のポイントを分かりやすく解説します。
通所介護全体について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください!
目次
介護保険は3年に1回見直しが行われており、2015年も改定年でした。
その中で、下記の3つの柱が主要な内容となりました。
1.中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化
2.介護人材確保対策の推進
3.サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築
それぞれ詳細な内容を解説します。
国は、今まで病院で受け入れていた、中重度の要介護者・認知症高齢者などを在宅で介護してもらうよう推進しています。
その理由として、国内における高齢化問題があります。
2020年には、65歳以上の高齢者数は3,617万人と過去最多となり、高齢化率は28.7%となりました。
参考:総務省統計局
高齢化率は今後も増加傾向で、2025年には65歳以上の高齢者数は3,657万人となり、2042年には最も多い人数の3,878万人になると予測しています。
また、75歳以上高齢者の割合も増加し、2025年には2,179万人、2055年には2,401万人になると見込まれています。
参考:厚生労働省
認知症も高齢になるにつれて人数が増加する傾向で、内閣府による平成29年版高齢社会白書における「65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来の推計」によると、2012年は認知症患者数462万人で7人に1人だったのに対し、2025年には600万人を超え、認知症の割合は、5人に1人になると推定されています。
参考:内閣府
一方、令和元年版高齢社会白書によると、治る見込みがない病気にかかった場合でも、60歳以上の51.0%が「自宅」で最期を迎えたいと希望しています。
参考:内閣府
実際、今まで病院で入院していたような中重度の要介護者・認知症高齢者は、人数が多すぎるため受け入れることができなくなります。
そのため、今後は中重度の要介護者・認知症高齢者になったとしても、「住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるようにする」という地域包括ケアシステムの基本的な考え方を実現するため、在宅生活を支援するためのサービスの充実を図る必要が今まで以上に重要です。
在宅での介護を充実させるためには、今まで以上に介護人材を確保する必要があります。
実際、経済産業省によると、介護関連の従事者数は2015年には183万人で、約4万人の人材不足という予測でした。
今後、人材不足はさらに増加し、2025年にはこれが43万人、2035年には79万人の人材不足と見込んでいます。
国内の高齢者割合などから、今後も増大する介護ニーズへの対応や質の高い介護サービスを確保する観点から、介護職員の安定的な確保を図るとともに、更なる資質向上への取組を推進する必要があります。
今後の需要拡大などからも、介護事業に参入している事業所は、厚生労働省が毎年10月1日に発表している「施設・事業所調査の状況」の2012年~2020年までの内容によると、訪問看護ステーションは約2倍増加、通所介護も2012年~2015年の3年間で34,107施設から43,406施設へと急増しています。
事業所が増加することで、事業所だけを設立して、サービス内容に差が出るという問題点が生じています。
そのため、2015年の介護保険改定では、サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築として、今まで以上に効果的・効率的なサービス提供することを推進しました。
介護保険改定は全ての介護サービス内容に対して、見直しが行われますが、今回はその中でも通所介護におけるポイントを解説します。
認知症・中重度の要介護者が増加していることを背景に、認知症・中重度の介助が必要であっても、在宅での生活が維持できる体制を整えることを目的として新設されました。
具体的に認知症加算は、認知症高齢者に該当する者を積極的に受け入れるための体制で、前年度または算定月前3ヵ月間の利用者総数のうち、日常生活自立度Ⅲ以上の占める割合が20%以上であるなどのいくつかの要件を超えると、1日に60単位加算可能となりました。
また、中重度者ケア体制加算は、利用者のうち3割以上が、要介護3以上と中重度者ケアが必要な高齢者を積極的に受け入れる体制を整えている事業所を評価するとして、1日において45単位加算されるようになりました。
介護職員の待遇改善し、人材確保する目的で2012年度の介護報酬改正時に設けられた「介護職員処遇改善加算」を見直し、それまでの加算区分から、さらに加算率の高い区分である「新加算Ⅰ」が設けられました。
この介護職員処遇改善加算Ⅰを取得することにより、介護職員の月給与を約1.2万円程度引き上げることができるようになります。
サービス提供体制強化加算は、介護職員のキャリア・勤続年数・専門性などによる職員評価方法の1つで、介護福祉士の配置が一層促進されるために、介護福祉士の配置割合が高くなるにつれて高く評価されるようになりました。
具体的には、介護福祉士の割合が6割以上であれば、1日18単位、介護福祉士の割合が5割以上の場合は、1日12単位加算されるようになりました。
通所介護を行うにあたって、近隣に入所施設・高齢者向け住宅を建て、利用者自身で通ってもらう事業所が多くなり、本当に通所介護が必要な方が利用できない場合がありました。
その対策として、通所介護において、送迎を実施しない場合、片道で「マイナス47単位」の単位数が減算されるようになりました。
その一方で、通所介護の送迎時に利用者の自宅内で介護・介助を行う場合は、その時間を通所介護の利用時間に含めるという仕組みとなり、通所介護を今まで以上に積極的に利用できるように改定されました。
通所介護の送迎未実施時でも解説したように、通所介護の事業所近くに入所施設などの集合住宅を建て、通所介護に通っている多くの方がその集合住宅に住んでいるなどの場合がありました。
その対策として、事業所と同一建物に居住する場合・事業所と同一建物から通う場合に関しては、1日において「マイナス94単位」の単位数が減算されるようになりました。
1日の単位数を減算させることにより、多くの方が通所介護を利用できるように改定しました。
通所介護における看護職員の配置は、2015年以前までは、従事者のうち、1人は看護師または准看護師を配置するという基準が設けられていました。
しかし、介護職員と同じくらい看護職員の不足が問題となっているため、看護職員を確保することが難しい事業所も多いのが現状です。
このような問題から、2015年に実施された改定では、看護職員の人員配置を緩和し、病院や診療所、訪問看護ステーションと連携して健康状態の確認を行った場合には、看護職員の人員配置基準が満たされたものとすることが示されました。
通所介護の人員基準について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください!
【2022年最新版】通所介護の人員基準・計算方法を徹底紹介!
通所介護と聞くと、元気な高齢者が通って、利用者みんなでその時間を楽しむというイメージが強くあるかもしれません。
しかし、今回解説した介護保険改正の内容から分かるように今後は通所介護でも、多くの認知症・中重度の要介護者が通うようになり、その対策を十分にしている事業所が評価されます。
そのため、今回の記事を参考にして、各事業所は今後の通所介護に対応できそうなのかなどの見直しを検討してください。