通所介護事業所(デイサービス)を開業・運営するには、国が定めた人員基準に即して職員の配置をおこなう必要があります。
しかし、通所介護の人員基準は職種ごとに細かく定められているためややこしく、正しく運用できているか不安、という人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、通所介護の人員基準について詳しく解説します。間違えやすい利用定員ごとの計算方法や基準を満たすためのポイントをわかりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
通所介護(デイサービス)の人員基準とは、介護サービスの提供に即して求められる最低限の人員配置のことを指します。生活相談員や看護職員など職種に応じて細かく計算方法が異なるため、以下で詳しく解説します。
事業所の責任者として働く管理者は「常勤専従で1人」の配置が求められます。
常勤専従での配置となるため、基本的には週40時間の勤務のうち全てを管理者としての業務に充てることが必要ですが、管理上支障がなければ別の役割を兼務することが可能です。
【管理上支障がないと判断されるケース】
・同じ事業所の従業者として勤務する
・支障がないと認められる範囲内(同一敷地内・隣接する敷地内など)にある事業所で管理者または従業者として勤務する など
利用者やご家族との連絡・調整をおこなう役割である生活相談員は「事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1以上」の配置が求められます。
ここでは、サービス提供時間に応じた配置が求められることに注意しましょう。例えば、サービス提供時間が6時間である場合、1人の生活相談員が6時間続けて働くことで基準を満たせますし、極端な話、6人の生活相談員が同時に1時間働くことでも基準を満たせます。
なお、生活相談員のサービス提供時間には、事業所外での以下の業務も含むことができます。
【サービス提供時間に含むことができる業務例】
・サービス担当者会議
・地域ケア会議
医療や看護の立場から健康管理や医療行為をおこなう看護職員は「単位ごとに専従で1以上」の配置が求められます。
ここでいう「単位」とは「同時に一体的に提供される介護サービス」のことを指します。以下のようなケースでは同時・一体的ではないサービス提供とみなされるため、それぞれで看護職員の配置が必要です。
【2単位とみなされるケース】
・一定の距離を置いた2つの場所で同時にサービス提供をおこなう
・午前・午後で別の利用者にサービス提供をおこなう
なお、看護職員の配置には、事業所の従業者としてだけでなく訪問看護ステーションなどとの連携で配置することも可能です。
介護職員の配置は、以下2つの基準を満たすことが求められます。
なお、生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤でなければいけません。また、1および2の条件を満たす場合は、ほかの単位における介護職員として従事することが可能です。
利用者の数が15人を越す場合は計算方法がややこしくなるので、詳しく解説します。単位ごとに配置する必要がある人員は以下の式で計算可能です。
【計算式】
((利用者数-15)÷5+1)
例えば利用者が28人の場合は、(28-15)÷5+1=3.6 となるため、サービス提供時間あたり介護職員を3.6人配置する必要があります。
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利用者へ機能訓練を提供する機能訓練指導員は「1人」の配置が求められます。なお、機能訓練指導員とは、以下の資格を持つ人のことを指します。
【機能訓練指導員としてカウントできる有資格者】
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師*、きゅう師*
*はり師・きゅう師の場合:(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師)いずれかの資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で、6カ月以上機能訓練指導に従事した経験を有する者に限定
機能訓練指導員の人員基準は、単位ごと・サービス提供時間ごとなどの定義がなく、比較的緩い配置要件となっています。しかし、個別機能訓練加算を算定する場合は異なる配置要件があるため注意しましょう。
個別機能訓練加算とは?基本から算定時の悩みまで詳しく解説
利用定員が18人以下の場合、事業所は「地域密着型通所介護」として扱われます。
地域密着型通所介護は市町村が指定をおこなうほか、人員基準も一部異なるので注意しましょう。
人員基準を満たさない状態でサービスを提供した場合、人員基準欠如減算を適用し、3割の減算をおこなって介護報酬請求しなくてはいけません。
もし、人員基準を満たしていないことに気づかず、人員基準欠如減算を行わずに介護保険請求をおこなった場合、不正請求とみなされ処分の対象になるため注意が必要です。
通所介護における人員基準は、単なる法令遵守だけでなく、利用者の安心とサービスの質を保つうえで不可欠な要素です。不備があれば、減算や事業停止など深刻な結果を招くこともあります。最新基準を正確に理解し、職員配置の見直しや体制整備を怠らないことが、安定した事業運営の第一歩となります。
もし、最新の人員基準や基準の計算に不安があるなら、社会保険労務士や介護事業に精通した専門家に相談し、リスクを回避することが有効です。特に加算算定時の条件確認や、新規開設時の届出書類の準備などでは第三者によるチェックが安心につながります。
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