超高齢社会の中で、通所介護を利用する方が続々と増えてきています。
「通所介護の事業所を開業したいけど、通所介護の人員基準がよくわからない」という方もいるのではないでしょうか。
通所介護を運営するにあたって、厚生労働省が定めた設備基準や人員基準があります。
厚生労働省が定めた基準を満たしていないと、事業の停止処分などのペナルティを受けてしまいます。
この記事では通所介護の人員の基準、基準を満たしていないとどうなるのか、人員を満たすための対策をお伝えします。
通所介護の運営を考えている方や通所介護に勤務したい方は参考にしてください。
目次
通所介護の役割は、要介護状態になった利用者でも、可能な限り自宅で自立した日常生活を営めるように支援することです。
その通所介護をしっかりと運営するために、厚生労働省の定めた人員基準があります。
人員基準を満たしておらず、虚偽の報告が発覚した場合は人員基準違反になるのでご注意ください。
この人員基準を守らなければ、期限付きでサービスの停止、減算などの処分があります。
また、通所介護の人員基準は施設の利用者数によっても異なります。
厚生労働省が定めた人員基準の詳細は後述していきます。
通所介護を運営するにあたって、最低限の人員を確保しなければなりません。
厚生労働省が定めた人員基準は5つあります。
この5つの人員配置を満たさなければなりません。
運営する施設の規模によって、確保しなければならない人数は異なります。
厚生労働省が定めた最低限の人員基準なので、できる限り余裕を持って人員基準を満たす必要があります。
管理者は施設の責任者のことを指します。
介護保険法で定められた内容で運営できているかということと、従業員や備品、利用者の情報などのお金の管理などが仕事です。
通所介護の管理者業務を一元管理と呼んでいます。
人員基準は、どの通所介護施設にも常勤で1名の管理者を配置しなければなりません。
必要な資格はありません。利用者の情報の管理や従業員のシフト管理などの施設全体の統括を行います。
また、管理者としての業務に支障がない場合は兼務も可能です。
要点をまとめると、以下になります。
生活相談員は、利用者や利用者の家族が抱えている介護に関しての悩みや相談などに乗り、アドバイスを行います。
介護の専門的なアドバイスが必要になってくるため、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事、介護福祉士などの資格が必要です。
保有資格は自治体によって異なる場合もございます。
人員基準はサービス提供時間に応じて、専従で1名以上の配置が必要です。
サービス提供時間というのは、営業時間が8時〜17時の場合は9時間になります。
勤務時間数の計算として、サービス担当者会議、地域ケア会議等も含めることができます。
厚生労働省の基準では介護職員または、生活相談員のどちらか1人以上が常勤の必要があるとされているため、必ずしも常勤である必要はありません。
要点をまとめると、以下になります。
看護職員は、利用者の服薬の管理や健康状態の確認、排泄、入浴介助を行います。
看護師、准看護師の資格が必要です。
人員基準は、利用者数が10名を超える場合は、専従で1名以上の配置が必要です。
ですが、常勤の必要はありません。
利用者数が10名以下の場合は、看護職員、又は介護職員のいずれか1名の配置で可能です。
なので、看護職員を配置しなくても認められる場合もあります。
また、例外として訪問看護ステーション、病院などと連携をとり、利用者の健康状態の確認をできていれば人員配置を満たしたことになります。
要点をまとめると、以下になります。
介護職員は、利用者の身の回りの補助を行います。
食事や入浴、着替え、排泄などの身体介助、洗濯や、掃除、調理、服薬などの生活介助が主な仕事です。
管理者や、生活相談員などの兼務も可能です。
人員基準は、厚生労働省の基準として下記のように定められています。
利用者が30人の場合で計算してみます。
計算式に当てはめると「(30名−15名)÷5 + 1」になりますので、介護職員は4名以上の配置が必要です。
機能訓練指導員は、利用者が自宅で生活ができるよう身体機能の維持、改善などを支援します。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護士、准看護師、柔道整復師又は、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格が必要です。
人員基準は、利用者数に関係なく、1名以上の配置が必要になります。
看護職員との兼務も可能です。
要点をまとめると、以下になります。
通所介護の人員基準は文字だけではわかりにくいと思うので、分かりやすいよう利用者数別に表でまとめました。
利用者10人の通所介護施設 | 利用者30人の通所介護施設 | |
管理者 | 常勤で1名 | 常勤で1名 |
生活指導員 | 1名〜 (介護職員または生活相談員のうち1名は常勤) | 1名〜 (介護職員または生活相談員のうち1名は常勤) |
看護職員 | 1名〜(介護職員だけでも可) | 1名〜 |
介護職員 計算式「(利用者数−15)÷5 + 1」 | 1名〜 (介護職員または生活相談員のうち1名は常勤) | 4名〜 (介護職員または生活相談員のうち1名は常勤) |
機能訓練指導員 | 1名〜 (看護職員と兼務可) | 1名〜 (看護職員と兼務可) |
勤続年数の長い介護福祉士が増えると「サービス提供体制強化加算」が取得できます。
条件として、割合が60%以上や勤続年数が10年以上の介護福祉士が25%以上などがあります。
2015年に介護保険の制度改正にともない、通所介護の人員の見直しが行われました。
通所介護の人員について、変更されたのは以下の3つになります。
3つを詳しく解説していきますので、参考にしてください。
制度改正前は、看護職員は専従の看護師を1名配置しなければなりませんでした。
ですが、改正後の基準では提供時間内に病院、訪問看護ステーションなどと連携していれば、専従していなくても基準は満たされることとなりました。
病院、訪問看護ステーションと連携して、電話などでの指示出しでも利用者の健康状態をチェックできる体制であれば問題ないとされています。
ですが、看護職員がいない時間帯に、利用者の容態に異変があった場合などの急な事態にも、対応できる環境にしていなければなりません。
そのため、病院、訪問看護ステーションとは、密接な連携を常時とっておく必要があります。
制度改正により、看護職員の人員不足が解消されるようになりました。
制度改正前は、常勤の職員の勤務時間は週に32時間が基準とされていました。
ですが、制度改正後には、介護や育児をしているなどの理由がある場合は30時間となりました。
短時間勤務が認められたことにより、育児、介護による離職の割合を減らしました。
また、条件を満たした事業所は助成金が入るため、施設側にもメリットがあると言えます。
制度改正前は、生活相談員は、専従で1名以上。かつ、事業所内での相談業務のみが勤務時間とされていました。
ですが、制度改正後はサービス担当者会議や利用者宅への訪問も勤務時間と換算されるようになりました。
事業所外での勤務が認められることにより、生活相談員としての質の高いサービス提供ができるようになりました。
厚生労働省が定めた人員基準を満たさなければ、減算やサービス停止などの処分を受けます。
また、人員基準を満たしておらず、満たしているような虚偽の報告をする不正行為のことを「人員基準違反」と言います。
通所介護は原則6年に1回、運営指導があり、その際に人員基準違反が発覚した場合の処分は以下になります。
ただし、感染症の蔓延や災害などの事情でやむを得ない事態の場合は、人員基準が緩和され、考慮してくれる可能性もあります。
事態が起き次第、行政に確認を取り、対応してください。
対策としては、兼務できる人員や専従ではなくてもいい人員などを把握しておくことです。
例えば、看護職員では、訪問看護ステーション、病院、診療所などと連携して利用者の健康状態をチェックしていれば専従の必要はありません。
他に機能訓練指導員の場合でも看護職員と兼務が可能です。
こうした人員基準を満たせない場合でも適切な対策を講じることが必要です。
通所介護の人員基準は介護報酬改定によって、変更される場合があります。
今回の記事では、最新の人員基準をまとめていますが、これまでの介護報酬改定によって人員基準が変わったのか気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。
通所介護施設を運営するにあたって、人員基準を満たすことが大切です。
人員基準違反をしてしまうと、行政処分に科されてしまう可能性もあるので、人員基準をきちんと理解した上で運営するようにしましょう。