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処遇改善加算の平成27年度の変更点は?新設された加算Ⅰについても解説!

介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)は、平成23年度まで実施されていた介護職員処遇改善交付金による他職種との賃金格差縮小を目的とした交付金制度を継続したものです。

平成24年度から、介護報酬をより円滑に介護職員の賃金へ充てることができる制度として創設されました。

このため、当該交付金の対象であった介護サービス事業者や介護保険施設は原則として賃金改善の水準を維持することが求められています。

今回の記事では、平成27年度に改正された処遇改善加算の変更点について詳しく解説しております。

新設された処遇改善加算Ⅰの概要や今後の既存の処遇改善加算の取り扱いについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

処遇改善加算の平成27年度の変更点

平成27年度の改正により、事業主は介護職員の資質向上やキャリア形成できる労働環境の整備を推進することが求められています。

その背景としては、高い質の介護サービスの提供が求められていることや、今後高齢化が進み、介護職員数の増加が必要となる一方で労働環境の厳しさから離職する職員が未だ多いことが挙げられます。

このことから、介護職員の社会的・経済的な評価が高まっていくことが重要であることを踏まえ、事業主の取り組みがより一層促進されるよう加算を拡充したものです。

今回の処遇改善加算の変更点としては、大きく次の2点が挙げられます。

・処遇改善加算Ⅰの新設
・平成23年度以前の処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、ⅢはⅡ、Ⅲ、Ⅳへ移行

処遇改善加算Ⅰの新設に伴い、新たな算定要件が設けられました。

特にキャリアパス要件と職場環境等要件は、各加算の算定要件に関わる重要な要件となっております。

また、平成23年度以前の処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲについては、今回の改正により処遇改善加算Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに移行されました。

では、処遇改善加算Ⅰの概要や算定要件について詳しくみていきましょう。

処遇改善加算Ⅰの新設 

新たに設けられた処遇改善加算Ⅰは、算定要件を満たすと職員一人あたり月額12,000円相当が加算されます。

現行の加算である月額15,000円相当の区分を取得していた事業所・施設は、処遇改善加算Ⅰのみ取得することで上乗せされるので、合計で月額27,000円相当が加算できることになります。

これによって、介護職員の更なる賃金改善が期待できます。

処遇改善加算Ⅰは算定要件が他の処遇改善加算区分よりも数多くの要件を満たす必要があります。

算定要件の詳細についてはこの後記載しておりますので、気になる方はぜひ目を通してみてください。

厳しい算定要件になっている分、単なる賃金改善にとどまらず、介護職員がキャリアアップできる環境整備の構築、資質向上を事業主が積極的に行うことになります。

これは介護職員の労働環境改善のみならず、サービス利用者にとってもより高い介護サービスを享受できる制度となっております。

次に、算定要件にもなっているキャリアパス要件について、詳しく解説していきます。

キャリアパス要件は大きく下記の2つの区分に分類されます。

・職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件と賃金体系を定めること等(キャリアパス要件Ⅰ)

・資質向上のための具体的な計画を策定し、研修の実施または研修の機会を確保していること等(キャリアパス要件Ⅱ)

それぞれの要件の内容について詳しく見ていきましょう。

キャリアパス要件Ⅰについては、下記の3つの項目を全て満たさなければなりません。

・職員の職位、職責または職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金の関するものを含む)を定めていること。

・上記に掲げる職位、職責または職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)について定めていること。

・上記2つの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知している。

キャリアパス要件Ⅱについては、下記の2つの項目を全て満たさなければなりません。

・介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び下記に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施または研修の機会を確保していること。

(1)資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供または技術指導等を実施(OJT、OFF-JT等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。(資質向上のための計画を添付)

(2)資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。(当該支援の内容について記載)

・上記について、全ての介護職員に周知していること。

参考:厚生労働省

キャリアパス要件は、このように安定した雇用形態や賃金体系の確立と介護職員の資質向上に向けた具体的な取り組みについて明記されています。

この具体的な取り組みが実施されることによって、他業種との賃金格差縮小や高い専門性を持った介護職員の増加につながるといえるでしょう。

この計画書については雇用している全介護職員に周知することのほか、計画が形骸化しないよう、策定した計画に対する実施報告を各都道府県知事へ提出することが義務付けられております。

処遇改善加算Ⅰの算定要件

処遇改善加算Ⅰの算定要件は、上記のキャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱともに満たし、かつ、職場環境等要件を全て満たす必要があります。

この職場環境等要件は、処遇改善加算Ⅰの場合、平成27年4月から届出を要する日に属する月の前月までに実施した処遇改善の内容を全ての介護職員に周知しなければなりません。

また、平成27年9月末までに届出を行う場合には、実施予定である処遇改善の内容を全ての介護職員に周知していることにより、満たしたものとされています。

職場環境等要件は下記のとおり、資質の向上、職場環境・処遇の改善、その他の3つのカテゴリーに分類され、各カテゴリーごとにそれぞれ具体的な項目が明記されております。

(1)資質の向上
(2)職場環境・処遇の改善
(3)その他

職場環境等要件について必ず1つ以上該当することが求められており、介護職員処遇改善計画書に記入し、全介護職員に周知することによって満たされることになります。

なお、職場環境等要件に該当する事項については、選択したキャリアパス要件とは明らかに重複する事項でないものとされています。

処遇改善加算を申請する際に作成する介護職員処遇改善計画書は、上記のキャリアパス要件や職場環境等要件のほか、賃金改善計画の記載、必要書類の添付が必要となります。

賃金改善計画については、平成26年度以前に加算を取得していない介護サービス事業者の場合、下記に掲げる賃金改善計画について介護職員処遇改善計画書に記載し、都道府県知事等に届け出ることになります。

加算Ⅰの新設に伴ってもともとの加算ⅠⅡⅢがⅡⅢⅣに

今回の改正で、処遇改善加算Ⅰが新設されたことにより、従来の処遇改善加算ⅠⅡⅢは、処遇改善加算ⅡⅢⅣへ移行されました。

この移行後の処遇改善加算ⅡⅢⅣそれぞれの算定要件について、処遇改善加算Ⅰをベースにみていきましょう。

処遇改善加算Ⅱの算定要件

処遇改善加算Ⅱの算定要件としては、キャリアパス要件Ⅰまたはキャリアパス要件Ⅱのどちらかを満たし、かつ、既存の職場環境等要件を満たすこととなっております。

この既存の職場環境等要件とは、平成20年10月から届出を要する日に属する月の前月までに実施した処遇改善の内容を全ての介護職員に周知していることが要件となります。

処遇改善加算Ⅲの算定要件

処遇改善加算Ⅲの算定要件としては、キャリアパス要件Ⅰまたはキャリアパス要件Ⅱまたは既存の職場環境等要件のいずれかを満たすこととなっております。

処遇改善加算Ⅳの算定要件

処遇改善加算Ⅳの算定要件としては、キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、既存の職場環境等要件のいずれも満たさないことです。

処遇改善加算ⅡⅢⅣの算定要件は、処遇改善加算Ⅰと比較すると要件が緩和されているため、申請しやすくなっております。

しかし、各サービス区分における加算率で比較すると処遇改善加算Ⅰの比率が処遇改善加算ⅡⅢⅣよりも高くなっています。

例えば、訪問介護、夜間対応型訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスで見てみましょう。

処遇改善加算Ⅰの場合、加算率が8.6%なのに対し、処遇改善加算Ⅱの場合、加算率が4.8%と加算Ⅰの55%程度の加算率に下がります。

また、処遇改善加算Ⅲは処遇改善加算Ⅱの9割、処遇改善加算Ⅳは処遇改善加算Ⅱの8割程度まで下がるため、処遇改善加算Ⅰとの加算率の差は一目瞭然です。

賃金を受け取る介護職員の立場から考えると、同じサービスを提供しているにも関わらず、加算率の違いによって受け取る賃金が異なることになります。

そうなると処遇改善加算Ⅰを取得している事業所で働くとより多くの賃金を受け取ることができるので、処遇改善加算Ⅰを取得している事業所・施設で働きたいと考えるのではないでしょうか。

まとめ

平成27年度改正の処遇改善加算について解説いたしました。

処遇改善加算を取得するにあたってはキャリアパス要件や職場環境等要件が増え、事業主が実施する項目が増えています。

しかし、適切に実施されることで賃金体系の改善のほか、介護職員の働きやすさやキャリア形成できる環境が整備されることで、将来介護職員を目指す人材が増えていくことに期待できるのではないでしょうか。

お役立ち資料:処遇改善加算の取得を目指す方へ

介護事業所向けに、処遇改善加算の取得から運用までを詳しくまとめました。
処遇改善加算の取得を考えている方や、すでに取得しているものの運用に不安を感じる方は、ぜひご一読ください。
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