2019年に経験・技能のある職員の処遇改善を図ることを目的として特定処遇改善加算が制定されました。
特定処遇改善加算は、従来の全ての職員を対象とした処遇改善加算に上乗せされる加算です。
従来の処遇改善加算の算定も継続されるため、算定の取得要件や加算率について迷ってしまう場面もあるのではないでしょうか。
この記事では
について詳しく解説しています。
そもそも処遇改善加算とは何か詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護職員処遇改善加算とは?取得方法・区分・種類・注意するポイントを徹底紹介
2019年に、処遇改善加算に上乗せする特定処遇改善加算が制定されました。
従来の処遇改善加算は全ての職員が対象なのに対し、特定処遇改善加算は経験・技能のある介護福祉士の処遇改善に重点化しているのが特徴です。
従来の処遇改善加算はそのまま算定され、要件を満たしている場合2019年に制定された特定処遇改善加算も算定されるようになりました。
ここでは、特定処遇改善加算について詳しく説明します。
特定処遇改善加算は、介護の人材確保のため経験や技能のある職員に重点を置いた加算です。
とくに勤続10年以上の経験豊富な介護福祉士の処遇を改善することを目的とし、新しい政策パッケージに基づいて2019年に制定されました。
介護サービス事業所における勤続10年以上の介護福祉士について、月額8万円相当の処遇改善を行うことを目指しています。
他の介護職員の処遇改善にもあてられるよう、柔軟な配分ルールが定められていることも特徴です。
特定処遇加算の取得要件は以下のように定められています。
参考:厚生労働省
特定処遇加算の対象サービスとその加算率をご紹介します。
サービス区分 | 特定処遇改善加算(加算率) | |
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | |
・訪問介護 ・夜間対応型訪問介護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 6.3% | 4.2% |
・(介護予防)訪問入浴介護 | 2.1% | 1.5% |
・通所介護 ・地域密着型通所介護 | 1.2% | 1.0% |
・(介護予防)通所リハビリテーション | 2.0% | 1.7% |
・(介護予防)特定施設入居者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 | 1.8% | 1.2% |
・(介護予防)認知症対応型通所介護 | 3.1% | 2.4% |
・(介護予防)小規模多機能型居宅介護 ・看護小規模多機能型居宅介護 | 1.5% | 1.2% |
・(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 3.1% | 2.3% |
・介護老人福祉施設 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・(介護予防)短期入所生活介護 | 2.7% | 2.3% |
・介護老人保健施設 ・(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 2.1% | 1.7% |
・介護療養型医療施設 ・(介護予防)短期入所療養介護(病院等) | 1.5% | 1.1% |
・介護医療院 ・(介護予防)短期入所療養介護(医療院) | 1.5% | 1.1% |
参考:厚生労働省
なお、以下のサービスは加算の対象外です。
特定処遇改善については、こちらの記事でより詳しく解説しているので、是非参考にしてください。
特定処遇改善加算とは?算定要件や配分ルールなどについて徹底解説!
2012年に定められた介護職員処遇改善加算には、IからVまでの5区分があります。
2019年に特定処遇改善加算が制定されたあとも、処遇改善加算の取り扱いに変更はなく、従来通り加算されます。
キャリアパス要件と職場環境等要件をどの程度満たしているかによって決定される、5つの区分について説明します。
<キャリアパス要件>
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
※就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む。
<職場環境等要件>
賃金改善を除く、職場環境等の改善
満たすべきキャリアパス要件 | 職場環境等要件 | |
加算(Ⅰ) | ①+②+③ | 満たす |
加算(Ⅱ) | ①+② | 満たす |
加算(Ⅲ) | ①or② | 満たす |
加算(Ⅳ) | ①or② | キャリアパス要件が何も満たされていない場合に満たす必要あり |
加算(Ⅴ) | 満たさない | 満たさない |
参考:厚生労働省
加算率の低い加算ⅣとⅤは2018年にすでに廃止は決まっており、2022年3月で全て廃止になっています。
2021年3月時点で加算IVまたはVを算定していた介護サービス事業所に限り、上位区分に移行するために1年の経過措置期間が定められていました。
この1年の経過措置期間が終わり、予定通り2022年3月末で加算ⅣとⅤは廃止されています。
2019年に制定された特定処遇改善加算には、取得要件や算定の区分などで判断に困るケースもあるようです。
よくある質問をまとめましたので参考にしてください。
取得可能です。ただし以下の3つの要件を満たしている必要があります。
特定処遇改善加算(Ⅰ)の算定開始時点で配置要件を満たしていれば、算定可能です。
計画書策定時点で要件を満たしていなくても準備を行い、算定開始の時点で介護福祉士の配置要件を満たしていれば問題ありません。
別の職員を定めなくてもそのまま運用可能です。
退職した場合などは、指定権者に合理的な理由を説明することで配分ルールを満たしたものと扱うことができます。
説明に当たっては、介護職員処遇改善実績報告書・介護職員等特定処遇改善実績報告書の「④月額8平均8万円又は改善後の賃金が年額440万円となった者<特定>」欄の「その他」に記載をしてください。
可能です。
事業所のホームページがある場合、そのホームページを活用し、
・ 介護職員等特定処遇改善加算の取得状況
・ 賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容
を公表することで見える化を満たすものとします。
事業所・施設の建物内の入口付近など外部の者が閲覧できる場所への掲示により公表する方法も認められています。
見える化の原則は介護サービスの情報公表制度を活用することです。
しかし制度の対象となっておらずホームページもない場合は、外部の人が閲覧可能な形で公表すれば要件を満たすものとします。
参考:厚生労働省
2019年に経験や技能のある介護福祉士の処遇改善を目的として、特定処遇改善加算が制定されました。
従来の処遇改善加算の取り扱いには変更はなく、要件を満たせば特定処遇改善加算が上乗せされます。
特定処遇改善加算は勤続10年以上の介護福祉士について、月額8万円相当の処遇改善を行うことが目的です。
他の介護職員に配分することも認められており、処遇改善によって介護業界の人材確保が進むことが期待されています。