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安全対策体制加算とは?単位数や算定要件について解説!

2024-09-27

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護施設では、事故を完全に防ぐことはできません。多様な疾患や障害を持った利用者に、職員や設備など限られたリソースで対応しなければいけません。ただ、介護職員や看護職員・リハビリ専門職も人間なので、ミスは起こり得ます。

そして、介護施設で起きたひとつのミスが大きな事故につながり、施設の信用を失うリスクもあるのです。永年介護施設が積み上げてきた信頼も、ひとつの事故がきっかけで崩れてしまう事態は避けなければいけません。

介護施設は常に多くのリスクにさらされています。利用者の転倒や嚥下トラブル、感染症や災害など、さまざまなリスクがある中で、職員と利用者を守ることが求められます。入所者全員が安心して過ごせる暮らしの場、職員が安心して働ける職場、介護施設がそのような場所になるように、取り組むべき課題が数多くあります。

介護施設における安全管理の取り組みを推進していくために生まれた加算が安全対策体制加算です。この記事では、安全対策体制加算の概要や対象、算定要件などについて詳しく解説します。

安全対策体制加算とは?

安全対策体制加算は介護施設内でのリスク管理を強化し、事故を防ぐための加算です。冒頭でも記載した通り、介護施設ではさまざまなリスクに直面しています。

しかし、介護施設における安全管理の対策は万全であるとは限りません。リスクマネジメントが体系化されておらず、十分な事故防止体制が整っていない施設もあります。また、ヒヤリ・ハットや事故の原因分析・対策などに十分注力することができない施設も存在します。

このような状況を踏まえ、介護施設内でのリスク管理を強化するために、2021年の介護保険制度改正で新設されたのが安全対策体制加算です。介護施設には、組織的に安全対策・リスクマネジメントができる体制を整えることが求められています。

対象事業所は?

安全対策体制加算の対象となる事業所について解説します。

対象となる事業所は以下の通りです。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院

有料老人ホーム(特定施設)やグループホーム等は対象外となっています。もちろん、在宅介護のサービスも含め、すべての事業所に安全対策は求められますが、加算の対象となっているのはこの5つのサービスです。

まだ新しい加算ですが、安全管理体制加算を算定している事業所は多く、介護老人福祉施設で69.9%、介護老人保健施設で73.9%、介護医療院で50.2%となっています。いずれの施設種別でも半数以上の施設が算定しています。

参考:厚生労働省「高齢者虐待の防止/介護現場における安全性の確保、リスクマネジメント

安全対策体制加算の単位数と算定要件は?

安全対策体制加算の単位数と算定要件について解説します。算定ハードルとしては比較的低い加算ですので、確実に算定できるように正しく理解しましょう。

単位数は?

単位数は以下の通りとなっています。

安全対策体制加算:20単位/日

単位数は施設種別を問わず、20単位/日となっています。20単位/日は入所者が施設に入所した初日に算定するものです。後の項目でも補足説明しますが、既に入所している利用者では算定することはできません。入所時の一度のみ、単発のみ算定できる加算となっています。

算定要件は?

加算の要件は以下の3つを満たすことです。

  • 外部の研修を受けた担当者を配置している
  • 施設内に安全対策部門を設置している
  • 組織的に安全対策を実施する体制が整備されている

要件を具体的に解説します。

外部の研修を受けた担当者を配置すること
安全対策体制加算の算定には、外部の研修を受けた担当者の配置が必要です。社内の研修ではなく、必ず外部の研修を受け、リスクマネジメントについて理解した担当者を配置しなければいけません。

施設内に安全対策部門を設置していること
安全対策体制加算の算定には、施設内に安全対策部門の設置が必要です。事故防止委員会や安全管理委員会などを設置・開催することが求められています。
介護事故やヒヤリ・ハット等の発生件数や発生事例の報告、施設全体の介護事故防止策に関する検討などをおこないます。安全対策部門が、施設の安全対策の中心としての役割を担います。

組織的に安全対策を実施する体制が整備していること
安全対策体制加算の算定要件として、組織的に安全対策を実施する体制を整備することも求められています。職員個々の判断で安全対策をおこなうのではなく、組織として安全対策に取り組むことが必要です。
そのための取り組みとして、職員を対象にした事故防止のための研修をおこなうことや、事故やヒヤリ・ハットの事例をもとにした傾向分析などをおこないます。安全な業務がおこなえるよう、業務の見直しを含め、組織として事故防止に取り組むことで継続的に安全対策を強化していくことができます。

安全対策体制未実施減算を算定していない施設は減算されるの?

安全対策体制加算が新設されるのと同時に、安全管理体制未実施減算という減算が生まれました。このふたつは混同しやすいため、加算・減算の関係についても説明します。

安全管理体制未実施減算は、安全対策体制加算の算定の有無にかかわらず、もともと介護施設が遵守しなければならない運営基準を満たせない場合に受ける減算です。

介護施設の運営基準には以下の内容が記載されています。

イ)事故発生防止のための指針の整備
ロ)事故が発生した場合等における報告と、その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制の整備
ハ)事故発生防止のための委員会及び従業者に対する研修の定期的な実施
ニ)イからハの措置を適切に実施するための担当者設置

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について

この4項目は安全対策体制加算を算定しない施設でも、最低限遵守しなければいけない項目です。この4項目を満たしていない施設は、安全管理体制未実施減算として5単位/日の減算を受けます。

この減算は1日単位で減算されるので、全利用者で毎日減算を受けると、かなり大きな金額になります。

安全対策体制加算についてのQ&A

安全対策体制加算についてのよくある質問に、厚生労働省のQ&Aをもとに回答します。

安全対策担当者が安全対策に係る外部における研修とは、どのような研修なの?

  • 本加算は、安全対策担当者が、施設における安全対策についての専門知識等を外部における研修において身につけ、自施設での事故防止検討委員会等で共有を行い、施設における安全管理体制をより一層高める場合に評価することとしている。
  • 外部の研修としては、介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むものであり、関係団体(公益社団法人全国老人福祉施設協議会、公益社団法人全国老人保健施設協会、一般社団法人日本慢性期医療協会等)等が開催する研修を想定している

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A (Vol.2)(令和3年3月 23 日)

研修の主催団体として具体的な名称が挙げられています。

  • 公益社団法人全国老人福祉施設協議会
  • 公益社団法人全国老人保健施設協会
  • 一般社団法人日本慢性期医療協会等

例えば、全国老人福祉施設協議会であれば、特別養護老人ホーム等の介護施設を運営する法人を会員とし、研修や経営支援などをおこなう全国組織です。同様に、全国老人保健施設協会は介護老人保健施設運営法人を会員とした全国組織です。
それぞれの関連団体が主催する安全対策の研修を受講するように求めています。

加算を取得するという目的を達成することはもちろん大事です。ただ、それだけでなく、施設における安全対策をより強化するためにも、選任された担当者が確実に受講できるようにしましょう。

施設が算定要件を満たすに至った後に、既に入所している入所者に算定することは可能?

安全対策体制加算の算定要件を満たしている状態で新たに入所者を受け入れる場合に、入所時に限り算定するものであるため、算定要件を満たした後に新規で受け入れた入所者に対してのみ算定可能である。

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A (Vol.2)(令和3年3月 23 日)

既存の入所者に対しては算定ができず、新規に受け入れた入所者のみ算定できるものとしています。

要件を満たしたからといって、入所者全員を対象に安全対策体制加算を算定することはできません。この加算を取りこぼすことがないように、できるだけ早く要件を満たし、新規入所者を対象に算定できるように準備を整えておきましょう。

まとめ

介護施設における安全管理の重要性はますます高まっています。事故防止のためにリスクを削減し、安全な業務ができる環境を整える必要があります。ただ、職員配置が慢性的にギリギリな状態にある施設も少なくないため、十分な安全体制を整えることは難しい場合もあります。

施設運営者は要件を理解し、安全対策担当者を中心に事故を未然に防ぐ体制づくりを進めていく必要があります。

安全対策体制加算による介護報酬の収入増は、決して大きくありません。しかし、リスクマネジメントによるケアの品質向上や地域からの信頼は施設にとって大きな財産となります。算定できていない施設では、確実に加算算定ができるよう準備を進めていきましょう。

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについて、わかりやすくまとめました。
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