在宅介護には大きなストレスや疲労が伴う場合があります。短期入所生活介護(ショートステイ)は身体的・精神的な負担から介護者を解放し、在宅介護を継続するために重要なサービスです。しかし、ショートステイを利用することが容易ではない利用者もいます。特に大きな問題になるのが、医療的ケアが必要な方です。特別養護老人ホームや有料老人ホームなどで提供されるショートステイでは、医療職の配置が少なく、頻回・重度な医療的ケアが必要な利用者の受け入れができない場合があります。
また緊急的に治療が必要な利用者を受け入れることは非常に困難です。このような医療的ケアが必要な利用者のショートステイ受け入れ先を増やすために、総合医学管理加算が生まれました。
今回は、ショートステイの総合医学管理加算について詳しく解説します。
目次
総合医学管理加算とは、介護老人保健施設が提供する短期入所療養介護を対象とした加算です。介護老人保健施設が医療的ニーズの高い利用者の受け入れを促進できるよう、2021年の介護報酬改定で生まれました。短期入所療養介護で、医師の診療計画に基づき、必要な診療や検査等をおこなう場合に算定できる加算となります。
緊急的な医療管理が必要な利用者や、医療ニーズの高い利用者の受け皿を増やすために生まれたのが介護老人保健施設の総合医学管理加算です。
総合医学管理加算の単位数と算定要件について解説します。
総合医学管理加算の単位数は275単位/日です。
治療行為や、医学的管理が必要な利用者を受け入れるため、職員の負担なども大きく、その分単位数も大きな加算となっています。
算定要件は下記の通りです。
- 治療方針を定め、治療管理として投薬、検査、注射、処置等をおこなうこと
- 診療方針、診断、診断をおこなった日、実施した投薬、検査、注射、処置等を診療録に記載すること
- かかりつけ医に対し、利用者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて情報の提供をおこなうこと
治療目的の利用に限定されているため、通常のショートステイでは算定できません。またおこなった治療内容を記録することとかかりつけ医に情報提供をおこなうのが基準となります。
総合医学管理加算は2024年の制度改定を機に下記の通り2つの要件が緩和されました。
- 計画外の利用について
これまではケアプランに位置づけられた計画的なショートステイの場合は総合医学管理加算の対象外とされていました。しかし、加算算定の実績が増えなかったことなどを踏まえ、この要件の見直しがおこなわれ、計画に位置付けられたショートステイも対象となりました。- 7日を限度とする要件について
治療目的で介護老人保健施設での短期入所療養介護を利用したものの、入所から7日以上の治療をおこなった利用者が10%以上いることが報告され、要件の見直しがおこなわれました。
2024年の制度改定により、10日を限度に加算を算定できるようになりました。
総合医学管理加算の算定上の注意点を解説します。
総合医学管理加算にて短期入所療養介護を利用中に、医療機関に入院した場合は、入院した日を除いて総合医学管理加算を算定することができます。ただし、その場合は入院先の医療機関に診療情報などを文書で情報提供をすることが必要です。情報提供をおこなった場合は、入院をした当日は加算を算定できませんので、その点は注意しましょう。
緊急時施設療養費は、緊急またはやむを得ず体調悪化等の入所者に対して、施設が医療行為等を実施することを評価するために設けられています。緊急時施設療養費を算定した日は、総合医学管理加算を併用して算定はできないため注意しましょう。
算定可能である。
引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和3年3月 23 日)」
短期入所利用中の体調不良で治療が必要になった場合も、総合医学管理加算の算定は可能としています。ただし、加算算定は10日が限度であることは変わりありませんので、延長期間が長くなる場合は注意しましょう。
総合医学管理加算は、2021年に制定されましたが、現状で算定数や認知度も低い加算です。しかし、2024年の制度改定によって、要件が大幅に緩和されました。医療ニーズの高い利用者の入所なども、在宅療養をサポートする役割が求められています。定期的な治療管理ができることで、医療のサポートが必要な利用者も、住み慣れた自宅で自分らしく生活することができるようになるでしょう。
医療ニーズの高い利用者の治療管理を通して、医療と介護の連携を深め、地域からの信頼を集めることができます。積極的に総合医学管理加算を活用していきましょう。