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口腔機能向上加算とは?算定要件や2024年報酬改定の影響について解説

2024-04-23

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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口腔機能向上加算は、口腔機能向上サービスを提供する事業所が算定できる加算です。この加算を算定するためには、算定対象者や人員配置などの細かい算定要件を理解しておく必要があります。

口腔機能向上加算を算定するため、詳細な算定要件を知りたい介護事業所経営者も多いのではないでしょうか。この記事では、算定要件や注意点について詳しく解説します。また、この記事を読むことで、2024年の介護報酬改定による影響も把握できます。

口腔機能向上加算とは

口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している、又は口腔機能が低下するおそれがある利用者に対して、口腔機能の改善に向けた取り組みを実施した事業所を評価する加算です。

2021年の介護報酬改定で、全国の介護施設でLIFE(科学的介護情報システム)の運用が開始されました。LIFEの運用開始と同時に創設された加算が、口腔機能向上加算(Ⅱ)です。

この介護報酬改定以降は、口腔機能向上加算(Ⅰ)と口腔機能向上加算(Ⅱ)の2種類になり、それぞれ異なる算定要件と単位数が決められています。

口腔機能向上加算の対象者や対象サービスとは?

口腔機能向上加算は、利用者の評価を実施して、特定の項目に該当した方に算定できる加算です。そのため、算定するためには、対象者の条件を正しく理解しておく必要があります。ここでは、口腔機能向上加算の対象者と対象サービスについて詳しく解説します。

口腔機能向上加算の対象者

口腔機能向上加算は、厚生労働省が提示している認定調査票や基本チェックリストにおいて、特定の項目に該当する方が算定対象となります。口腔機能向上加算の対象者となる条件は以下の通りです。

  1. 認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清潔の3項目のいずれかの項目において「1」に該当する者
  2. 基本チェックリストの口腔機能に関連する(13)、(14)、(15)の3項目のうち、2項目以上が「1」に該当する者
  3. その他口腔機能の低下している者又はそのおそれがある者

引用:東京都健康長寿医療センター「口腔機能向上加算導入の手引き」

認定調査票や基本チェックリストは、介護保険サービスを利用する際に必ず実施される評価です。それらの内容を踏まえて、口腔機能向上加算の対象者となるか判断する必要があります。

一方、歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定している方や、他の事業所で口腔機能向上加算を算定している場合は自事業所で算定できないため注意しましょう。

口腔機能向上加算の対象サービス

口腔機能向上加算を算定できる介護サービスは以下の5つです。

  • 通所介護
  • (介護予防)通所リハビリテーション
  • 地域密着型通所介護
  • (介護予防)認知症対応型通所介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

上記のとおり、主に在宅生活を支援する事業所が、口腔機能向上加算の算定対象施設となります。

口腔機能向上加算の単位数や算定要件とは?

口腔機能向上加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)で算定要件や単位数が異なります。特に、口腔機能向上加算(Ⅱ)の場合は、LIFEに提出するデータの内容や頻度についても把握する必要があるため注意しましょう。ここでは、口腔機能向上加算の算定要件や単位数について解説します。

口腔機能向上加算(Ⅰ)

口腔機能向上加算(Ⅰ)を算定するには、人員配置基準や計画書の作成などの条件を満たす必要があります。算定要件や単位数については以下をご参照ください。

単位数

口腔機能向上加算(Ⅰ)の単位数は1回の算定につき150単位です。3月以内の期間に限り、1月に2回を限度として算定できます。

算定要件

厚生労働省の資料「厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日)」では、通所介護における口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件について以下のように記載されています。

次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

  1. 言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員を一名以上配置していること
  2. 利用者の口腔機能を利用開始時に把握し、言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画を作成していること
  3. 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画に従い言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が口腔機能向上サービスを行っているとともに、利用者の口腔機能を定期的に記録していること
  4. 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画の進捗状況を定期的に評価していること
  5. 通所介護費等算定方法第一号に規定する基準のいずれにも該当しないこと


口腔機能向上加算(Ⅰ)を算定するためには、言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員を配置し、口腔機能改善管理指導計画書を作成しなければいけません。また、定期的に利用者の口腔機能を評価し、記録に残していくことも求められます。

口腔機能向上加算(Ⅱ)

口腔機能向上加算(Ⅱ)は、口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件を満たした上で、必要なデータをLIFE(科学的介護情報システム)へ提出することで算定できる加算です。そのため、LIFEに提出するデータの内容や頻度についても正しく理解しておく必要があります。単位数や算定要件、LIFEについては、以下をご参照ください。

単位数

口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定単位数は1回の算定につき160単位です。口腔機能向上加算(Ⅰ)と同様に、3月以内の期間に限り1月に2回を限度として算定できます。

算定要件

厚生労働省の資料「厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日)」では、通所介護における口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定要件について以下のように記載されています。

次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

  1. 口腔機能向上加算(Ⅰ)の1から5までに掲げる基準のいずれにも適合すること
  2. 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の内容等の情報を厚生労働省に提出し、口 腔機能向上サービスの実施に当たって、当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること

口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件を満たしつつ、適切な情報を定期的にLIFEに提出することで口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定できます。

LIFEに提出するデータ内容・頻度

LIFEに提出するデータに関しては、基本情報と合わせて厚生労働省が提示する「口腔機能向上サービスに関する計画書」を参考に、必要なデータを提出する必要があります。

また、LIFEへデータを提出する頻度については、以下の1〜3までに定める月の翌月10日までに提出しなければいけません。

  1. 新規に口腔機能改善管理計画の作成を行った日の属する月
  2. 口腔機能改善管理計画の変更を行った日の属する月
  3. 1又は2のほか、少なくとも3月に1回

上記の期日内に必要なデータを提出できていない場合、口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定できなくなるため注意しましょう。

口腔機能向上加算が関わる、2024年介護報酬改定対象の加算とは?

2024年の介護報酬改定では、口腔機能向上加算の直接的な内容変更はありませんでした。しかし、口腔機能向上加算に関連する加算について、注意しておくべき変更点があります。ここでは、2024年介護報酬改定における口腔機能向上加算関連の変更点について解説します。

リハビリテーションマネジメント加算(ハ)の新設

2024年の介護報酬改定により、新たにリハビリテーションマネジメント加算(ハ)が新設されました。

リハビリテーションマネジメント加算(ハ)とは、口腔アセスメント及び栄養アセスメントを一体的に実施し、機能訓練と口腔、栄養の情報を関係職種間で共有することによって算定できる加算です。

リハビリテーションマネジメント加算(ハ)で共有された情報を活用して、栄養改善加算や口腔連携強化加算(Ⅱ)を算定できます。この変更によって、通所リハビリテーション施設等で、リハビリテーションに関する加算を一体的に取得しやすくなりました。

介護予防通所リハビリテーションにおける、一体的サービス提供加算の新設

2024年介護報酬改定で、介護予防通所リハビリテーションにおける運動器機能向上加算が廃止され、基本報酬へ統合されました。また、選択的サービス複数実施加算も廃止されます。

この変更に合わせて、新設される加算が一体的サービス提供加算です。一体的サービス提供加算とは、栄養改善サービス及び口腔機能向上サービスを実施することで算定できる加算です。

この加算を算定するためには、栄養改善サービス又は口腔機能向上サービスのうちいずれかのサービスを行う日を1月につき2回以上設けている必要があります。

口腔機能向上加算に関するQ&A

厚生労働省では、口腔機能向上加算に関するQ&Aを公開しています。今後、口腔機能向上加算の算定を検討している場合、必ず理解しておくべき内容が含まれているため確認しておきましょう。

口腔機能向上加算は、通所介護と通所リハの各事業所でそれぞれ算定できる?

複数事業所での口腔機能向上加算算定について、厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)」では、以下のように回答が記載されています。

ケアマネジメントの過程で適切に判断されるものとして認識しているが、①算定要件として、それぞれの加算に係る実施内容等の勘案の上、1事業所における請求回数に限度を設けていること、②2事業所において算定した場合の利用者負担等も勘案すべことから、それぞれの事業所で栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定することは基本的には想定されない。

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)」

厚生労働省としては、算定限度を設けていることや利用者の負担が増加することから、複数事業所における口腔機能向上加算の算定は想定していません。そのため、関係施設が算定している場合、自事業所での算定について慎重に検討するとよいでしょう。

口腔機能向上加算において、LIFEへデータを提出する際の様式指定はある?

口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定する場合のLIFEへ提出する様式指定について、厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)(令和3年4月9日)」では、以下のように記載しています。

ただし、同通知はあくまでもLIFEへの提出項目をお示ししたものであり、利用者又は入所者の評価等において各加算における様式と同一の者を用いることを求めるものではない。

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)(令和3年4月9日)」

口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定において、LIFEへ提出する資料に指定の様式はありません。しかし、LIFEを通じて提出すべき項目と同様の情報を提出しなければ算定できないため、書類に記載する情報には注意しましょう。

口腔機能向上加算において配置が必要な職員は、業務委託でも算定できる?

口腔機能向上加算算定において配置すべき職員の雇用条件について、厚生労働省の資料「平成18年4月改定関係Q&A(Vol.1)」では、以下のように記載しています。

口腔機能向上サービスを適切に実施する観点から、介護予防通所介護・通所リハビリテーション事業者に雇用された言語聴覚士、歯科衛生士又は介護職員(労働派遣法に基づく紹介予定派遣により派遣されたこれらの職種の者を含む)が行う者であり、ご指摘のこれらの職種の者の業務を委託することは認められない。

引用:厚生労働省「平成18年4月改定関係Q&A(Vol.1)」

紹介予定派遣とは、派遣期間終了後に雇用することを前提として派遣された方のことです。雇用契約を結ばず、派遣期間だけ業務を行う一般的な派遣社員とは異なります。

この厚生労働省の資料によると、将来的に雇用関係を結ばない派遣や業務委託として勤務する職員を配置しても、口腔機能向上加算の算定要件は満たせません。人員配置を確認する際には、従業員の雇用形態にも注意しましょう。

歯科医療を受診している場合でも、口腔機能向上加算を算定できる?

厚生労働省では、口腔機能向上加算を算定できる利用者の条件として、以下のように記載しています。

歯科医療を受診している場合であって、次のイ又はロのいずれかに該当する場合にあっては、加算は算定できない。
イ 医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定している場合
ロ 医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定していない場合であって、介護保険の口腔機能向上サービスとして「摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施」を行っていない場合。

引用:厚生労働省「介護報酬改定に関する通知の改正案(原案)」

歯科医療を受けている場合でも、上記のイ又はロに該当していなければ口腔機能向上加算を算定できます。歯科治療をしている利用者に対して口腔機能向上加算を算定する際には、事前に治療内容を確認するとよいでしょう。

まとめ:他加算との連携も視野に入れて口腔機能向上加算算定を目指す

口腔機能向上加算は、介護サービス事業所で口腔機能向上サービスを実施した場合に算定できる加算です。

LIFEが導入された2021年介護報酬改定で、口腔機能向上加算(Ⅱ)が新設されました。口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定する際には、LIFEへ提出するデータの内容や提出頻度に注意しましょう。

2024年介護報酬改定では口腔機能向上加算の直接的な内容変更はありませんでしたが、リハビリテーションマネジメント加算や一体的サービス提供加算など、口腔機能向上加算と関係する加算について内容変更がありました。

この報酬改定によって関連加算と合わせて算定しやすくなったため、関連加算との連携も視野に入れて口腔機能向上加算の算定を検討するとよいでしょう。

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