認知症は、高齢化社会を迎える日本において、注目される課題の1つです。また今後も高齢者人口の増加とともに、認知症患者数も年々増加すると予測されていることからも、社会全体での対応が重要です。
今後も認知症患者数も年々増加するという背景からも、2024年の介護報酬改定では、認知症の方々への質の高いケアを提供することを目的とした「認知症加算」の重要性が、さらに強調されています。
この記事では、2024年の介護報酬改定に対応して、認知症加算とは何か、算定要件や報酬改定のポイントまでを詳しく紹介します。今回の記事を読むことで、認知症加算を取得する重要性がより理解できるはずです。ぜひ最後までお読みください。
目次
認知症に関する研修を修了した職員を配置し、認知症の症状の進行の緩和につながるケアを提供することを評価する加算が認知症加算です。
日本国内は65歳以上の高齢者の人数は増加していますが、それとともに認知症患者数も同じように増加しています。実際に2012年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人の割合でしたが、2025年には約700万人と5人に1人は認知症になると予測されています。このような予測から、2024年度の介護報酬改定でも認知症の方への対応は重点項目の1つです。
実際、2024年度の介護報酬改定は下記の4つのポイントで構成されました。
この4つの項目で、「1.地域包括ケアシステムの深化・推進」が認知症に関係する項目です。項目の詳細は「認知症の方や単身高齢者、医療ニーズが高い中重度の高齢者を含め、質の高いケアマネジメントや必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組を推進」となっており、その内容の1つとして「認知症の対応力向上」が明記されています。
このことからも、認知症の方へのケアは今後も重要な項目の1つであることがわかるはずです。
認知症加算の対象サービス種別と単位数は下記です。
介護サービス | 単位数 |
通所介護 | 60単位/日 |
地域密着型通所介護 | 60単位/日 |
小規模多機能型居宅介護 | 加算(Ⅰ) 920単位/月 加算(Ⅱ) 890単位/月 加算(Ⅲ) 760単位/月 加算(Ⅳ) 460単位/月 |
看護小規模多機能型居宅介護 | 加算(Ⅰ) 920単位/月 加算(Ⅱ) 890単位/月 加算(Ⅲ) 760単位/月 加算(Ⅳ) 460単位/月 |
認知症加算の算定要件は、通所介護・地域密着型通所介護、(看護)小規模多機能型居宅介護によって下記のように異なります。
通所介護・地域密着型通所介護の算定要件は厚生労働省から下記のように発表されています。
- 看護職員又は介護職員を人員基準に規定する員数に加え、常勤換算方法で2以上確保していること
- 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の20以上
- 認知症介護指導者養成研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修の修了者を指定通所介護を行う時間帯を通じて1名以上配置していること
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第232回)(認知症への対応力強化(改定の方向性))」
*¹:常勤換算は、介護事業所で働いている平均職員数を表します。実際の算定方法は、歴月ごとの看護職員・介護職員の勤務延時間数を、常勤職員が勤務すべき時間数で除して算定します。注意点としては、勤務延時間数は、サービス提供時間前後の延長加算を算定する際に配置する看護職員・介護職員の勤務時間は含めません
*²:利用者の割合の算定方法は、前年度(3月を除く)または届出日の属する月の前3ヵ月の1ヵ月あたりの実績の平均で判定します。実績は「利用実人員数」または「利用延人員数」を用いて算定し、要支援者は含めません。
(看護)小規模多機能型居宅介護の算定要件は、認知症加算(Ⅰ)~(Ⅳ)まで分類され、それぞれの算定要件は厚生労働省から下記のように発表されています。
- 認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20人未満の場合は1以上、20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置
- 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
- 当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
- 認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
- 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定
- 認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20人未満の場合は1以上、20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置
- 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
- 当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
- 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、(看護)小規模多機能型居宅介護を行った場合
- 要介護状態区分が要介護2である者であって、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱに該当する者に対して、(看護)小規模多機能型居宅介護行った場合
ここでは、主な認知症加算のQ&Aについて紹介します。
地域密着型通所介護における認知症加、(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件について、「認知症介護に係る専門的な研修」や「認知症介護の指導に係る専門的な研修」は下記のような内容です。
また、認知症看護に係る適切な研修は下記です。
中重度者ケア体制加算の算定対象となる看護職員は他の職務と兼務することはできない。このため、認知症加算を併算定する場合は、認知症介護に係る研修を修了している者を別に配置する必要がある。
参考:厚生労働省「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(平成27年4月1日) 問26」
事業所として、指定居宅サービス等基準第 93 条に規定する看護職員又は介護職員に加え、看護職員又は介護職員を常勤換算方法で2以上確保していれば、認知症加算及び他加算中重度者ケア体制加算における「指定基準に規定する看護職員又は介護職員の員数に加え、看護職員又は介護職員を常勤換算方法で2以上確保する」という要件をそれぞれの加算で満たすことになる。
参考:厚生労働省「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(平成27年4月1日) 問28」
日ごと又は1日の時間帯によって人員が変わっても、加算の要件の一つである「指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら当該指定通所の提供に当たる看護職員(認知症介護実践者研修等の修了者)を1名以上配置していること」を満たすこととなる。
参考:厚生労働省「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(平成27年4月1日) 問30」
共生型通所介護を提供している場合、認知症加算の算定はできません。
通所介護において、若年性認知症利用者受入加算と併算定はできません。
認知症加算は、認知症の方々に対する質の高いケアの提供を評価するための制度です。この加算は、事業所が認知症に関する研修を修了した職員を配置し、認知症の症状の進行の緩和につながるケアを提供することを前提としています。2024年度の介護報酬改定においても、認知症の方への適切な対応は、改定の重点項目の1つとして位置付けられています。
認知症加算を取得することは、利用者やその家族からの信頼と満足度を高めるだけでなく、事業所としての認知症ケアに対する専門性と質の高さを示すことができるはずです。
今後も認知症の人数は増加すると予測されています。そのため、認知症加算の取得を目指すことで、認知症ケアの質を高め、認知症でも安心して利用できるサービスを提供できるようになるため、今回の介護報酬改定をきっかけに加算の取得を検討しましょう。