令和3年4月に介護報酬の見直しが行われ、居宅介護支援における特定事業所加算の単位数が引き上げられるとともに、特定事業所加算(A)が新設されました。
特定事業所加算(A)の新設によって、従来の基準より比較的小規模の事業所でも、特定事業所加算の算定が可能になったことは注目すべきポイントです。
今回の記事では特定事業所加算(A)とは何か、算定要件、特定事業所加算(A)新設を受けて事業所がするべきことについて解説します。
目次
特定事業所加算とは、質の高いケアマネジメントを行う居宅介護支援事業所に手当が支給される制度です。
ケアマネジャーの配置や、介護度が高く支援が困難な利用者への対応、職員の研修実施状況などが評価されます。
特定事業所加算は(Ⅰ)~(Ⅳ)の区分がありましたが、令和3年度の介護報酬改定により(Ⅳ)の区分は特定事業所加算から切り離され、特定事業所医療介護連携加算へと変更されました。
さらに(Ⅰ)~(Ⅲ)の単位数が増加し、特定事業所加算(A)の区分が新たに創設されました。
加算の対象となるためには、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。
特定事業加算(A)とは、令和3年度の介護報酬改定で新設された制度です。
小規模の居宅介護支援事業所であっても、他の事業所と連携して利用者の対応を行う体制を整えるなど、一定の要件を満たしている場合に100単位/月が算定できます。
特定事業所加算(A)の新設により、複数ある小規模事業者同士が協力することで、質の高いケアマネジメントの実施につながることが期待されています。
特定事業所加算(A)の算定要件を、以下にまとめました。
1.常勤専従の主任ケアマネジャーを1名以上配置する
2.常勤専従のケアマネジャーを1名以上配置する
3.常勤換算で1名以上のケアマネジャーを配置する
4.利用者の情報やサービス提供時の注意事項などを共有するために、定期的な会議を実施する
5.利用者からの相談に適切な対応ができるように、24時間連絡が取れる体制を確保している
6.ケアマネジャーを対象とする研修を計画し、実施する
7.地域包括支援センターと連携し、支援が困難な事例にも対応できる
8.地域包括支援センターなどが実施する事例検討会に参加する
9.運営基準を満たしていない場合に対象となる運営基準減算が適用されていない
10.同一の事業者によるサービス提供の偏りを防ぐための特定事業所集中減算が適用されていない
11.ケアマネジャー1人あたりの利用者数が40名未満(居宅介護支援費(Ⅱ)を算定している場合は45名未満)である
12.介護支援専門員実務研修の実習などに協力できる体制を確保している
13.他の法人運営の事業所と共同で事例検討会や研究会を実施する
14.必要に応じて、インフォーマルサービスを含む多様な生活支援サービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成している
参考:厚生労働省
3の常勤換算で1名以上のケアマネジャーは、特定事業所加算(A)を算定するために連携している事業所との兼務が認められています。
5、6、12、13の算定要件に関しては、他の事業所との連携で満たすことも可能です。
特定事業所加算(A)には、以下の特徴があります。
・小規模な事業所でも算定が可能
・事業所間の連携を促進する
それぞれ詳しく解説していきます。
特定事業所加算(A)が新設されるまでは、一定以上の規模の事業所でないと加算の取得は困難でした。
特定事業所加算(A)の新設によって、小規模事業所でも算定しやすくなりました。
従来の特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅲ)と、新設された特定事業所加算(A)の算定に必要なケアマネジャーの配置人数を以下にまとめました。
特定事業所加算の区分 | 常勤専従主任ケアマネジャー | 常勤専従ケアマネジャー | 非常勤ケアマネジャー |
特定事業所加算(Ⅰ) | 2名以上 | 3名以上 | 規定なし |
特定事業所加算(Ⅱ) | 1名以上 | 3名以上 | |
特定事業所加算(Ⅲ) | 1名以上 | 2名以上 | |
特定事業所加算(A) | 1名以上 | 1名以上 | 常勤換算で1名以上 |
特定事業所加算(Ⅰ)の算定には、常勤専従の主任ケアマネジャーと常勤専従のケアマネジャーを合わせて、少なくとも5名配置する必要があります。
一方で特定事業所加算(A)の算定には、常勤専従の主任ケアマネジャーと常勤専従のケアマネジャー、非常勤のケアマネジャーを合わせて、少なくとも3名配置すれば算定要件を満たせます。
従来の基準よりも小規模な事業所でも算定が可能になったことは、大きな特徴の1つです。
特定事業所加算(A)の算定要件の一部は、他の事業所との連携で満たすことができます。
他の事業所との連携が認められている算定要件は、以下の通りです。
・24時間の連絡体制を確保し、利用者の相談に対応する
・ケアマネジャーを対象とした研修を計画し、実施する
・介護支援専門員実務研修の実習に協力する
・他の法人が運営する事業所と共同で事例検討会や研修会を実施する
小規模の事業所であっても事業所間の連携を促進することで、より質の高いケアマネジメントを目指せます。
特定事業所加算(A)の新設を受けて、事業所がするべきことは以下の4つです。
・研修などを通じてケアマネジメントの質を高める
・定期的な会議を行い、事業所内部の連携を強化する
・同地域の他の事業所との連携を強化する
・特定事業所加算(Ⅲ)の取得を目指す
それぞれ詳しく解説します。
特定事業所加算の算定要件を満たすには、ケアマネジャーを対象にした研修や事例検討会の実施が必要です。
より多くの事業所が特定事業所加算(A)の算定を目指して活動することで、専門知識を深める機会が増え、全体的なケアマネジメントの質の向上につながります。
多くの事業所がケアマネジメントの質を高め、地域に貢献していくことが期待されています。
現在、多くの居宅介護支援事業所内で、ケアマネジャー同士の連携の少なさが課題となっています。
同じ事業所内に所属していても、それぞれのケアマネジャーが個々で業務を進めているため業務内容に偏りが生じたり、業務のスムーズな引き継ぎが困難な状況が発生しやすくなっています。
特定事業所加算の算定要件を満たすには、定期的な会議の実施など事業所が1つの組織として活動することが求められます。
特定事業所加算(A)の算定により、事業所内での連携強化のきっかけとなることが期待されています。
特定事業所加算(A)の大きな特徴は、特定の算定要件を満たすために他の事業所との連携が認められている点です。
規模の小さい事業所でも算定が目指せるとともに、同職種間の連携が強化されるというメリットもあります。
同職種間の連携強化が多職種間の連携を促進し、質の高い介護サービスの提供につながります。
そのため、より多くの事業所が算定を目指し、積極的に連携を深めていくことが必要です。
特定事業所加算の設立で期待されているのは、事業所に配置する主任ケアマネジャーやケアマネジャーの人数を増やし、事業所の規模を拡大していくことです。
さらに、算定を目指して活動する事業所が増えることで、地域社会に貢献できる質の高いケアマネジメントの実施につながります。
特定事業所加算(A)が算定できた事業所は、次の段階として特定事業所加算(Ⅲ)の算定を目指してみましょう。
特定事業所加算(Ⅲ)の算定要件は、以下の通りです。
1.常勤専従の主任ケアマネジャーを1名以上配置する
2.常勤専従のケアマネジャーを2名以上配置する
3.利用者の情報やサービス提供時の注意事項などを共有するために、週1回以上の定期的な会議を実施する
4.利用者からの相談に適切な対応ができるように、24時間連絡が取れる体制を確保している
5.ケアマネジャーを対象とする研修を計画し、実施する
6.地域包括支援センターと連携し、支援が困難な事例にも対応できる
7.地域包括支援センターなどが実施する事例検討会に参加する
8.運営基準を満たしていない場合に対象となる運営基準減算が適用されていない
9.同一の事業者によるサービス提供の偏りを防ぐための特定事業所集中減算が適用されていない
10.ケアマネジャー1人あたりの利用者数が40名未満(居宅介護支援費(Ⅱ)を算定している場合は45名未満)である
11.介護支援専門員実務研修の実習などに協力できる体制を確保している
12.他の法人運営の事業所と共同で事例検討会や研究会を実施する
13.必要に応じて、インフォーマルサービスを含む多様な生活支援サービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成している
参考:厚生労働省
特定事業所加算(A)と比較すると、配置が必要なケアマネジャーの人数が増えています。
また、特定事業所加算(A)では4、5、11、12の要件を満たすために、他の事業所と連携することが認められていましたが、特定事業所加算(Ⅲ)では連携が認められていません。
高齢化が進むにつれ、介護サービスの需要は今後も増加すると予想されています。
利用者一人ひとりのニーズに合わせた介護サービスを提供するためには、質の高いケアマネジメントを行う居宅支援事業所の増加が期待されています。
そのためにも、まずは特定事業所加算(A)の算定を目指しましょう。