平成22年3月31日に、厚生労働省が、「介護保険施設等実地指導マニュアル(改訂版)」を発行しました。
このマニュアルには、実地指導に関する内容が網羅されているものの810ページと非常に長いため、全様の把握が容易ではありません。
そこで、本記事では、
「介護保険施設等実地指導マニュアル(改訂版)」
の中で特定事業所加算取得において重要な部分を抜粋してお伝えします。
目次
行政が行う指導には主に3つの『指導』が存在します。
指定申請の先となる管轄行政が実施するもので、介護事業所を1か所に集めて開催します。
介護保険制度に関する指導のほか、実地指導で把握された注意喚起が必要な事項や好事例等の紹介を行い、法律の改正時等はその内容も指導に入ります。
※集団指導を実施しない自治体も存在します。
指定申請の先となる管轄行政及び、ご利用者の保険者が実施するもので、行政担当者が書類を指定して介護事業所に提出を求め、添削を行う形で実施されます。
行政の取り組み実績が過少であること等から、平成18年度からの指導・監査指針で廃止されていますが、現在も実施している自治体があります。
指定申請の先となる管轄行政及び、ご利用者の保険者が行うもので、行政担当者が介護事業所を訪問して実施されます。
不適切な報酬請求防止のため、報酬請求上において、特に加算・減算について重点的に指導が行われます。
※著しい運営基準違反が認められ、利用者の生命等に危険がある場合や、報酬請求指導の際に不正が確認され、それが著しく悪質な請求と認められる場合等は監査に切り替わることがありますので注意が必要です。
指導や監査が実施された後は、行政がその『結果』を介護事業所に書面で通知します。
この結果は『指導』『処分』の2つに分類され、これを受けた介護事業所はそれに従わなければいけません。
〇口頭指導
実地指導当日等に口頭で受ける指導です。
『もっとこうしたら良くなる』『違反ではないがこのようにするのが望ましい』等、助言に近い形のものを言います。
〇文書指導
実地指導等の結果、文書をもって受ける指導です。
基準に沿っていない、加算要件を満たしていない場合等に受ける指導であり、速やかに改善し、改善が完了した旨を指定された期日までに報告しなければいけないものを指します。
〇改善勧告
実地指導や監査の結果、文書を持って受ける指導です。
文書指導と似ていますが、文書指導以上に強い指導として扱われ、処分に近い形で改善を求められることとなります。
文書指導と同じく、速やかに改善し、改善が完了した旨を指定された期日までに報告しなければいけません。
〇改善命令
監査後や、実地指導後に介護事業所が改善勧告に従わなかった場合(正当な理由なく)、改善が行われなかった場合等は、『命令』という形で改善が指示され、この処分が下った場合は公示されることとなります。
〇指定の効力の全部又は一部停止
監査後や、実地指導後に改善命令に従わない等、悪質だと認められた場合に以下の処分が下されます。
一部停止:新規利用者・入所者へのサービス提供に対する指定の効力の停止
(新規の利用者を一定期間受け入れることが出来なくなる)
全部停止:代替サービスを確保した上での一定期間に限った指定の効力の停止(一定期間介護事業の運営ができなくなる)
〇指定の取消し
監査後や、改善勧告・改善命令や指定の効力の停止の措置を行っても改善や是正がされ ない場合で、引き続き指定をすることが出来ないと判断された場合にこの処分が下されます。
※ 不正な手段により指定を受けたときや悪質な不正請求等の場合は、改善勧告、改善命令を経ずに、指定の効力の停止や指定取消処分が下されることもあるため、不正は絶対におこなってはいけません。
実地指導により、実際に返還することになった事例もありますので、
加算取得をご検討されている方は是非チェックすべき項目を把握しておくことをお勧めします。
平成18年に改定された「介護保険施設等指導指針」「介護保険施設等監査指針」に、監査と指導の目的が明記されています。
〇実地指導の目的
『制度管理の適正化とよりよいケアの実現のため』
〇監査の目的
『不正請求や指定基準違反に対する機動的な実施のため』
これより、実地指導は『介護事業所の支援や育成』を目的に実施され
一方の監査は『不正や違反に対する処分』を目的としていると読み解くことができます。
実地指導で指摘を受けると、場合によっては数百万〜数千万円の返還を請求されます。
事業者様は、決して実地指導を軽視しないよう、最新の注意を払いましょう。