「運営指導(旧実地指導)に引っかかることが不安」「実地指導から運営指導に名前が変わったけど、内容も変わったの?」
このような不安や疑問を抱えている事業者の方は多いのではないでしょうか?
今回の記事では、運営指導(旧実地指導)とは何か、運営指導(旧実地指導)で引っかかるとどうなるのか、運営指導(旧実地指導)と監査の違いなどについて解説します。
この記事を読めば、運営指導(旧実地指導)について理解が深まり、不安や疑問を解消できるので、ぜひ最後までお読みください。
目次
これまで実地指導と呼ばれていた行政指導が、令和4年度から『運営指導』に名称変更されました。
理由としては、オンラインでも指導を行うことが出来るようになり、必ずしも”実地”で指導を行う必要がなくなったからです。
また、介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬請求の内容、過去の指導事例等に基づく指導内容について、年に1回以上、一定の場所に集めて講習等を行う『集団指導』が追加されました。
運営指導(旧実地指導)とは、下記の3つについて、原則、実地にて行われる行政指導です。
1.介護サービスの実施状況指導
施設・設備や、利用者へのサービスなど介護サービスの質に関する指導です。
2.最低基準等運営体制指導(オンライン可)
人員基準など、運営体制に関する指導です。
3.報酬請求指導(オンライン可)
加算等の介護報酬を正しく請求しているかに関する指導です。
運営指導(旧実地指導)は毎年度、自治体ごとにどのような意図を持ち、何を重点的に、何件、どこに指導に入るか等を計画として定めたうえで実施されます。
参考:厚生労働省
運営指導(旧実地指導)の実施頻度は、提供している介護サービスによって違います。
下記のサービスは、3年に1回以上指導が行われます。
・居宅サービス(居住系サービスに限る)
・地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る)
・又は施設サービス事業所
上記以外の介護サービスに関しては、6年に1回以上指導が行われます。
原則、1か月前までに、下記の事項について文書にて指導通知が届きます。
1.運営指導の根拠規定及び目的
2.運営指導の日時及び場所
3.指導担当者
4.介護保険施設等の出席者(役職名等で可)
5.準備すべき書類等
6.当日の進め方、流れ等(実施する運営指導の形態、スケジュール等)
運営指導(旧実地指導)で確認される具体的な書類については、厚生労働省の資料で介護サービスごとにまとめられています。
また、運営指導(旧実地指導)で確認する書類について下記の通り定められています。
1.原則前年度から直近の実績に係る期間
2.自治体が既に保有している申請書類等の文書の印刷は求めない
3.PCで管理されている場合は、画面上で確認する
4.利用者ファイルの確認対象は原則3名以内(居宅介護支援事業は、介護支援専門員1人あたり 1 名~2名の利用者についてその記録等を確認)
集団指導は、実地指導から名称変更された運営指導に加えて追加された行政指導です。
集団指導はこれまで、講習会のような形で事業所が一同に集まり実施されて来ました。
新型コロナウイルスの流行を受け、1部行政ではオンライン上で集団指導が行われていましたが、令和4年度からはこれが公に認められることになりました。
引用:厚生労働省
指導対象:許可、指定を持つすべての事業所
実施頻度:年1回以上
実施通知:都道府県知事及び市町村が、原則2カ月以上前に集団指導の日時、場所、出席者、指導内容等を文書により通知する。
指導方法:介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬請求の内容、制度改正内容及び高齢者虐待事案をはじめとした過去の指導事例等に基づく指導内容について、一定の場所に集めて講習等の方法により行う。
又はオンライン等(オンライン会議システム、ホームページ等。以下同じ。)の活用による動画の配信等による実施も可能。
参考:厚生労働省
事業所が注意すべき点は、『オンラインになっても出席したことを報告すること』です。
講習会形式の集団指導では必ず出欠席がとられ、欠席した場合は優先的に実地指導事業所として選定されるという特徴がありました。
オンラインに変更後も、このルールを変わらず運用している自治体が多く存在しており、これまでと変わらずオンラインで行われる集団指導に出席していない場合は『優先的に運営指導に入る』ということに注意が必要です。
また、オンラインで集団指導が実施される場合、多くの自治体で視聴しただけでは『出席』とみなされず、『レポート用紙』『参加報告書』『運営状況点検書』等、資料を提出することを義務付けているという点に注意が必要です。
運営指導(旧実地指導)において、不備がある場合は指導をしたり、改善を求め後日に改善報告が求められます。
違反と見なされた場合や勧告を無視した場合は改善命令が出され、さらに改善が見られない場合は介護事業が停止されることがあります。
介護事業は介護保険法・健康保険法に基づくものであるからこそ、悪質な事業者を排除するために、指導や監査が徹底されています。
運営指導で引っかかるとどうなるのか、解説していきます。
運営指導(旧実地指導)で疑問点があるときや、事前提出書類に不備がある場合、その場で口頭指導を行います。
指導は、自治体が事業所のサービスの向上を目的に行っているので、そこまで身構える必要はありません。
運営指導(旧実地指導)を行った結果、介護保険法や人員・設備・運営の基準に違反または、満たせていない場合は、改善勧告が交付されます。
各自治体で期限は異なりますので、改善勧告を受けた際は内容をしっかり確認し期限内に改善し、提出をしましょう。
事業所が改善勧告を受けてから期限内に改善する措置をしなかった場合には、該当する介護事業者に改善命令が出されます。
改善命令は改善勧告と異なり、各都道府県のHPに事業所名と代表者名、なぜ改善命令を出したのかの内容が公示されます。
上記の改善勧告、改善命令にも従わず運営をした場合には、最も重い指定の効力の停止という措置が取られます。
指定の効力の停止は都道府県知事からの指定が受けられなくなり、介護事業を営むことができなくなることを意味します。
再度介護事業を始めたいといった場合は都道府県知事に対して指定をしてもらえるよう申請する必要があります。
介護報酬算定を誤って請求したり、不正に水増しして介護報酬を受け取っていた場合は、介護報酬の返還を求められます。
返還が求められた場合、2年間の介護保険に関係する書類を確認される場合があります。
ほとんどの自治体が条例で5年間の保管を義務付けているので、介護保険給付費請求書等は少なくとも5年間は保存しましょう。
運営指導の結果下記のように、基準に従っていなかったり、悪質な不正や虐待を行っている場合は、監査に切り替わります。
1.人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合
又はその疑いがある場合
2.介護報酬請求について不正又は不正の疑いがある場合
3.不正の手段による指定等又はその疑いがある場合
4.高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合
参考:厚生労働省
運営指導(旧実地指導)から監査に切り替わることもありますが、利用者からの苦情等でいきなり監査対象となる場合もあります。
引用:厚生労働省
実地指導から、運営指導に変わり、そして集団指導が追加されて変わった点は下記の3つです。
①頻度について
②文書削減について
③監査と指導のメリハリ
それぞれについて解説していきます。
コロナ禍において、実地指導の延期や中止となるケースが多発しました。
それを改善すべく、下記のように変更されました。
・3年に1回または6年に1回は委託業者を使用してでも実施する
・コロナが終息しなくても、オンライン上で画面を繋いで実施する
コロナ禍でオンライン化が進み、行政指導においても文書を削減するため、下記のように変更されました。
・指導の際はPC上での確認がメインになる
・集団指導は動画がメインになり、資料は自分たちで用意する
これまで指導なのか、監査なのかわかりにくい点がありました。
それを改善するため、指導中に疑いがある場合は、すみやかに監査へ切り替えることが推奨されました。
変更を受けて事業所がやるべきことは下記の三つです。
1.これまで以上に抜け、漏れがない様に書類を整備していくこと
2.適正な時期での書類更新が確認できること
※更新履歴も、ログも使用しているシステムでは分かるようになります
3.これまで対面時に『書面』で示していた書類も、『PC』で確認出来るようにする
今回の変更では、『文書削減』も大きなテーマとなっています。
例えば運営規程や体制届等は変更届等の提出を通して行政に提出しており、改めて指導の場で準備して提出をする必要はありません。
運営指導がPCでも行われることを前提に、書類の管理体制を整える必要があります。
令和4年度現在、全国的に運営指導(実地指導)の数が前年度に比べて増加しています。
コロナ禍においても、前年までのように中止や、延期となっていない点にも注意が必要です。
この章では、弊社がご相談頂いている事例をもとに、よりリアルな運営指導(旧実地指導)の実情について解説していきます。
※日数をはじめ、自治体ごとに大きく異なることにご注意ください
運営指導対象事業所の選定については、下記の6つに該当する事業所が優先されます。
①新規開設1年未満・指定更新(6年)に1回(居住系は3年に1回)
②前年度の運営指導で特に指摘事項の多かった事業所
③前年度の集団指導不参加の事業所
④高齢者向け住宅併設
⑤老人福祉法施設併設
⑥虐待等の通報があった事業所等
運営指導マニュアルの通り、多くの自治体で1カ月以上前に通知が届きます。
現在弊社にご相談頂いている中では、事前提出資料の提出までの最短では14日、最長では56日と自治体により大きな差があるので注意が必要です。
平均で2.57時間で、午前または午後のどちらかで実施される場合が多いです。
1日かけて実施される場合は、併設事業所を午前、午後に分けて確認に入る場合が多くなっています。
令和3年度の改定事項に対する進捗確認が多く、運営体制の確認や、法令に関する指導周知を目的としている印象です。
また、介護報酬算定について疑義があれば詳細の確認が入り、従来通り算定誤りであれば返還を求めらます。
年1回実施が定められている運営状況点検書(書式は自治体任意)をもとに、基準を守れているか根拠を示す書類の提示が求められます。
多くは従来通りあらかじめ印刷準備した書類を確認されますが、2割程度パソコン上での確認が入るというのが現状です。
今後はパソコン上での確認が増えていくでしょう。
今回の記事では、運営指導(旧実地指導)について解説しました。
実地指導が運営指導へと変更されたことで、下記の2点に注意が必要です。
・コロナ禍でも中止や延期ではなく、オンラインを使って実施される
・文書削減のためにPCでの確認が増えたので、それに対応できる管理体制を整える
介護事業者にとって、運営指導(旧実地指導)に対する理解は必要不可欠です。
今回の記事を繰り返し読んで、理解を深めましょう。