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介護報酬の減算とは?訪問介護と通所介護の減算についてそれぞれ解説!

介護サービスにおいて、不備や不足があった場合に、基本報酬から一定の金額を差し引く「減算」ですが、基準や規定が細かく定められています。

今回の記事では、介護報酬における「減算」について、算定方法や減算の種類や減算を算定しないとどうなるかなどについて解説します。

介護報酬の算定

介護報酬は以下の公式で算定されます。

「介護報酬=基本報酬+加算-減算」

以上の公式からわかるように、介護報酬の構造は、「①基本報酬」と「②加算・減算」の二つに大きく分けることができます。

ここでは、基本報酬と加算・減算それぞれの詳細を解説します。

①基本報酬

「基本報酬」は、介護サービスの種類や内容、地域によって決定されます。

サービスの質に関係なく、ケアプランに定められたサービスを提供することで、必ず請求できる報酬です。

基本報酬は以下の計算式で求められます。

「基本報酬=単位数×単価」

②加算・減算

「加算・減算」は、サービスの質に対して決定されます。

専門職や有資格者の配置、サービスの専門性、基準より多い職員を配置するなどといった、質の高いサービスに対して加算されます。

これに対して減算は、提供しているサービスがケアプランの基準を満たしていない場合に差し引かれる値です。

減算は次の章で詳しく解説します。

介護報酬の減算とは

介護報酬における減算とは、提供しているサービスが運用基準・人員基準等に定められる事項を満たせていない場合に、基本報酬からマイナスするために設けられている介護報酬の項目です。

減算の程度は基本報酬同様に規定によって定められています。

減算の算定方法

ここでは減算の詳しい算定方法について説明します。

減算の算定公式は以下の式で表されます。

「(基本報酬単位数×減算規定率)-減算単位数」

基本報酬単位数は提供するサービス全ての所定単位数の合計です。

そこから、減算の規定に定められた率を乗じ、小数点以下を四捨五入します。
(※複数の率を乗じる場合は、1つ乗じるごとに四捨五入してください。)

最後に規定に定められた減算単位数を引きます。

減算の計算例

ここで減算の計算例を1つ紹介します。

例)要介護1のAさんが、通所介護(通常規模型)を定員超過、人員欠如の状態で8時間利用し、送迎は往復で行いませんでした。この時のAさんの介護報酬は?

【基本報酬】
655単位

【減算】
定員超過利用減算:70%、人員基準欠如減算:70%、送迎減算:94単位

【計算式】
(定員超過利用減算)655単位×0.70=458.5単位≒459単位
(人員基準欠如減算)459単位×0.70=321.3単位≒321単位
(送迎減算)321単位ー94単位=227単位

したがって、Aさんの介護報酬は227単位です。

詳しい計算方法や減算に関する規定は厚生労働省が出している、以下の資料を参考にしてください。

参考:厚生労働省

訪問介護の減算

訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を直接訪問して身体介護や生活補助を行うサービスです。

ここからは、訪問介護の減算について解説します。

同一建物等減算

同一建物等減算は、事業所と同一の建物または、利用者が20人以上居住する建物の利用者に対する効率的なサービスの提供を勘案した減算です。

同一建物の定義

同一建物の定義は以下の2つです。

・事務所と構造上または外形が一体的な建物
・同一敷地内・隣接する敷地にある建築物のうち、効率的なサービス提供が可能な建物

同一建物減算の定義

同一建物等減算の算出については以下のように定められています。

・同一敷地内建物の居住者や同一建物の利用者が20人以上いる場合:基本報酬の90%を算定
・同一敷地内建物の居住者や同一建物の利用者が50人以上いる場合:基本報酬の85%を算定

同一建物減算についてはこちらの記事で詳しく解説います。
訪問介護の同一建物減算とは?単位数や減算要件について徹底解説!

サービス提供責任者に減算要件はある?

2019年の4月から初任者研修修了者(ヘルパー2級)がサービス提供責任者に従事することによる減算が廃止されたため、現在は減算要件はありません。

サービス提供責任者の減算要件が廃止されたことについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
サービス提供責任者に減算要件はある?配置基準について解説!

通所介護の減算

通所介護は、デイサービスと呼ばれる介護保険サービスです。

通所介護の減算として下記の5つが挙げられます。

①定員超過利用減算
②人員基準欠如減算
③共生型通所介護を行う場合の減算
④同一建物等減算
⑤送迎減算

それぞれ解説していきます。

①定員超過利用減算

定員超過利用減算は、運用規定に定められた定員を超えた状態での介護保険サービス提供を勘案した減算です。

定員超過利用減算では、基本報酬の70%を算定します。

定員超過利用減算に該当する利用者数は、1日あたりの利用実績と過去3ヶ月間の利用実績の2通りを考慮します。

1日あたりの利用実績に対する定員超過利用減算

1日の利用者が定員の1.5倍を超える場合に適用されます。

減算対象は、その日の利用者全員です。

過去3ヶ月間の利用実績に対する定員超過利用減算

直近3ヶ月間の総利用者数が以下の式に該当する場合に適用されます。

(定員×3ヶ月間の会所日数)×1.25  < 3ヶ月間の総利用者数

減算対象は、 3ヶ月の期間中に事務所を利用した利用者全員です。

②人員基準欠如減算

人員基準欠如減算は、看護職員、介護職員が人員基準に満たない状況下での介護保険サービス提供を勘案した減算です。

人員基準欠如減算では、基本報酬の70%を算定します。

職員の人員基準の比較方法は、看護職員と介護職員の場合で異なります。

【看護職員】
毎月の開所日数あたりの平均職員数で比較。平均職員数が基準に満たない場合を人員欠如とみなす。

【介護職員】
利用者とサービス総提供時間に対する職員の総勤務時間で比較。総勤務時間が基準に満たない場合を人員欠如とみなす。

人員基準欠如減算の適用期間

人員基準欠如減算の適用期間は、人員基準を下回った月の翌月から解消するにあたった月までです。

ただし、人員基準に対しての欠如が1割に満たない場合の減算適用期間は、その翌々月から解消するにあたった月までです。

人員基準欠如減算の減算対象

人員基準欠如減算の減算対象は、上記の期間中に事務所を利用した利用者全員です。

著しい人員基準欠如の継続は、減算期間が長いだけでなく都道府県知事から事業の休止を命じられる場合もあります。

事務所の継続的な運営の観点からも注意しなくてはいけない減算と言えるでしょう。

③共生型通所介護を行う場合の減算

共生型通所介護を提供する場合にも減算は行われます。

共生型通所介護における減算は、介護保険サービスを行う職員の資格やステータスによって異なります。

・指定居宅介護事業所の障害者居宅介護従業者、基礎研修課程修了者等:基本報酬の70%を算定

・指定居宅介護事業所の重度訪問介護従業者、養成研修修了者:基本報酬の93%を算定

・指定重度訪問介護事務所の従業者:基本報酬の93%を算定

④同一建物等減算

通所介護でも、同一建物等減算は行われます。

通所介護の同一建物等減算では、1日あたり94単位減算されます。

同一建物減算の減算対象

通所介護における建物等減算の対象者は以下の通りです。

・事業所と同一建物に居住する利用者
・事務所と同一建物から通う利用者

同一建物等減算は、利用者に対して送迎を行わない場合のみ適用されます。

傷病やその他の事情によって一時的な送迎が必要な利用者に対して送迎を行った場合は、適用されません。

同一建物減算についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
訪問介護の同一建物減算とは?単位数や減算要件について徹底解説!

⑤送迎減算

送迎減算は、利用者に対しての送迎の有無を勘案した減算です。

利用者に対して送迎を行わない場合に減算されます。

片道の送迎を行わない場合は47単位、往復での送迎を行わない場合は94単位の減算が行われます。

この減算において重要なことは、事務所の送迎の有無です。

ご家族等が送迎をした場合にも減算対象になります。

【注意】減算を算定しないとどうなるか

減算や加算の条件に該当する場合、適切に介護報酬を算定する必要があります。

加算の算定を行わないことは、事務所の利益の損失に繋がります。

しかし、減算の算定を行わないことは、加算以上の問題が生じます。

ここでは、減算の算定を行わないと生じる

①行政処分
②事務的問題
③信頼の損失

の3つについて解説します。

①行政処分

提供していないサービスに対して介護報酬を請求することは不正請求にあたり、介護保険法で行政処分対象とされています。

本来減算される金額を利用者から受け取ることも、立派な不正請求に該当するため介護保険法での行政処分対象です。

行政処分の内容は、不正請求の故意性や継続性によって判断されます。

改善勧告や改善命令で済めばよろしいですが、最悪の場合は効力の停止・指定取消しになる場合があります。

こういった状況を避けるためにも、適切に減算を行いましょう。

②事務的問題

減算の算定を行わずに介護報酬を受け取った場合、あらゆる手続きや事務作業が必要になります。

まず、受け取った介護報酬を返金し、適切な減算を行なった上で正しい金額を再請求する必要があります。

また、利用者負担の金額が変更になるため、事情の説明、領収書の再発行、差額の調整などの追加業務も発生し、利用者とのトラブルに繋がりかねません。

特に手間がかかるのが、定員基準超過や人員基準欠如の手違いです。

該当する期間の利用者全員に対しての手続きが必要になります。お金の移動も増えるため、資金繰りの面でも問題が起きます。

このように適切な減算を行わないことによって、本来やらなくてもよい業務をしなくてはいけません。

生産性の面でも非常に非効率なため、減算は適切に行いましょう。

③信頼の損失

減算を正しく行わないと、利用者からの信頼を失います。

原因がうっかりミスだとしても、事務所の評判は下がりかねません。

今後も安心して事務所を利用してもらうためにも適切に減算を行ましょう。

また、間違いを減らすためだけでなく、減算について利用者に正しい説明ができるように、減算規定や条件については正しく理解する必要があります。

定員超過・人員欠如は至急対応するべき

減算において、特に注意を払う必要があるのは、定員基準超過減算人員基準欠如減算です。

これらの問題は、人員基準や運営基準に定められている最低限のことが守られていないことになります。

したがって、「減算を算定しているから良い」というわけではなく、基準を守れていないこと自体が事務所にとって問題といえます。

これらの基準を満たしていない状態が反復・継続することは、人員基準違反と運営基準違反に該当するため、行政処分の対象になります。

行政処分を受けることで、適切にサービスを提供できなくなる恐れがあります。

まとめ

今回は、介護報酬における減算についてまとめました。

介護報酬は「介護報酬=基本報酬+加算-減算」の式で算出されることを覚えておきましょう。

減算の算定を適切に行わないと、行政処分、事務的問題、信頼の損失減算につながりかねません。

問題やトラブルを回避するためにも、減算の仕組みや規定については正しく理解する必要があります。